【感想・ネタバレ】企業不祥事を防ぐのレビュー

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Posted by ブクログ

弁護士として胸熱な1冊でした。
細かい法律知識ではなく弁護士としての感性(正義感・バランス感覚・スピリット)をきちんと仕事にしている。ひとつのロールモデルである。

ものがたり(ストーリー)のあるコンプライアンス
※楠木健『ストーリーとしての競争戦略-優れた戦略の条件』

「赤信号みんなで渡れば怖くない」

性善説/性悪説ではなく性弱説

安全の「制度的保障」
制度に抜け穴ができると,制度全体の信用性を失わせる。データの流用や偽装は安全を確保するための制度に対する信頼性を根本から突き崩す。

日本企業は属人的な摺り合わせ型の発想から脱却できず,客観的データによる「見える化」をベースにした品質保証に移行できなかった。

「盗む不正」と「ごまかしの不正」

ノー・トレランス

企業不祥事の本質はレピュテーション・リスク
「負のスパイラル」により企業価値が毀損した状態。
企業価値を創り出しているのは,株主・投資家・消費者・取引先・従業員・監督官庁・マスコミといったステークホルダーの企業に対するレピュテーションである。
レピュテーションは,「企業の行為やそれに言及する情報をもとに与えられる,あらゆるステークホルダーによる評価の集積」である。

「法令遵守」という発想でレピュテーション・リスク管理はできない。

コンダクトリスク
・明確な法令違反の事案は比較的少数だが「全体・集団」として見ると不当性が明らかになり,ステークホルダーの強い怒りを招く。
・「業界の常識」が「世間の非常識」となっている。
・顧客本位ではなく,会社本位である。
・行き過ぎた収益重視が背景にある。

ルールベースとプリンシプルベース

リスクベース・アプローチ

「厳密にやってまちがえるより,おおむね正しいほうがよい。」(マーヴィン・キング 元イングランド銀行総裁)

フォワードルッキングな想像力

3つの防衛線
①事業部門による自律的管理
②リスク管理部門による支援と牽制
③内部監査部門による検証

小さな不正には動かぬ証拠があるが,大きな不正には兆候しかない

インテグリティ
「経営管理者にとって決定的に重要なものは,教育やスキルではない。それは真摯さ(インテグリティ)である。」(ドラッカー『現代の経営 下』P.262)
「真摯さ(インテグリティ)に欠ける者は,いかに知識があり,才気があり,仕事ができようとも,組織を腐敗させる」(上Pp.218-219)

定義は難しいが,
①企業が急激に変化するビジネス環境に対応するための「羅針盤」となり,企業の持続的成長の基礎となるもので,
②「何のために企業はあるのか」「企業としてどうありたいのか」という「働く意味」と密接に関係し,
③「結果として」企業のコンプライアンス・リスク管理につながる。

寺師正俊「レピュテーションリスク(評判リスク)ー概念整理とマネジメントの方向性」SJRMリスクレビュー6

ガバナンスの基本はチェック&バランスによる規律

空気読まない力
社外役員の役割は,いざというときに社長に「ノー」を突きつけることにある。

Bad News First/Fast

危機管理の本質
①正確な状況把握
②明快な決断
③ブレることのない断固とした対応

今の時代,不祥事を隠し通すことは不可能だ。
「企業という組織の中で不祥事を「なかったこと」にするのは,「部屋の中にいるゾウを見るな」というに等しい。」

「報道を防されないこと」ではなく「報道を1回で終わらせ,連続報道を防ぐこと」

ステークホルダーは,「経営幹部が不都合な事実を認識していたにもかかわらず開示しなかった」という「不作為」を「隠蔽」と評価する。

ステークホルダーの信頼回復のために必要なこと
①不祥事の事実関係を明らかにし,
②不祥事をもたらした原因(root cause)を解明し,
③その原因を除去するための再発防止策を実行する
④①~③のプロセスをきちんと説明する

「ボヤで騒げ!」
ボヤでどんなに騒いでも大火事になることはない。

NGOが求めているのは,満点の答案ではない。対話とそれに基づく改善行動,つまり「対話をしながら考え,行動していく姿勢」と「PDAでの対応」というダイナミックなプロセスである。
「概ね正しい」ことを良しとする(百点主義ではない)七十点対応。

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2023年01月06日

Posted by ブクログ

最後の『企業不祥事を防ぐにはお仕着せの規則や制度ではなく、一人一人の働く意識しかない』という最後の言葉が印象的で、過去に実際に起きた不祥事や実例もとても面白かった。

コンプライアンスというと当然守らなければいけないものだが、形骸化したり「ごまかしの不正」のように明確な意思なくリスクを犯してしまうような事例が度々報道される。

日本独特の文化や空気感に流されたり、過度な規則や制度で形骸化してしまい、自分でも気が付かないうちにレピュテーション・リスクを犯してしまうことのないように、コンプライアンスに対する意識を変えていかなければいけないと感じた。

山一證券を題材にした「しんがり」は読んでみたいので、早速購入した。

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2022年09月17日

Posted by ブクログ

世の中のコンプライアンス論を一掃する「現実感」と「希望」
日頃聞く法律家の論とは全く違う、人間の血の通った法社会論 
さすが著名弁護士 ヒトの動機 ①正義 ②カネ
日本の組織は責任者不在 
同質性と空気(無責任の体系東大政治学者)
決断に基づく悪事より性質が悪い→反省なしヒトラーと太平洋戦争
コンプラ疲れ コンプラのためのコンプラ 
広く世のためヒトのための仕組み化
危機管理には「決断する胆力」70点でも決断を優先 不作為は✕
←ダメなのは①隠蔽②都合の良い情報③不決断

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2022年02月23日

Posted by ブクログ

日本において、先ずは同調圧力が無くならない限り、企業不祥事は無くならないのだろうなと本を読んで感じた。

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2021年03月21日

Posted by ブクログ

この本の最後に書かれていた「企業不祥事を防ぐには一人ひとりの働く意識しかない」という言葉が心に残った。企業は他種多様な外部のステークホルダーに囲まれた存在で、企業価値はレピュテーションの集積で形成されている。だからこそ、働く一人ひとりが倫理観を持ち、その総和として誠実な組織を創り上げることが大切なんだと思う。

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2021年06月26日

購入済み

品質不正だけではなく

品質不正についての本を探していたが、本書は前半だけで、どちらかというとコンプライアンス、企業のありかた、等を弁護士目線で説明されている内容でした。
著者の経歴を見るべきでした。
第三者委員会等の設置を考えている人にはお勧め鴨

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2021年12月11日

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