あらすじ
古典の名著を現代語訳し、ハウツー本では解けない課題を自ら解く力を身につける「Contemporary Classics 今こそ名著」シリーズの一冊。
能の大成者・世阿弥が著した日本最古の能楽論『風姿花伝』を取り上げ、伝統を守りながらも日々新しく創造・革新するイノベーションになぞらえた、まさに現代において必読の一冊です。体系立った理論に加え、「珍しきが花」「初心忘るべからず」「離見の見」「秘すれば花」といった美しく含蓄のある言葉や名文で構成される世界も稀な芸術家自身による汎芸術論を、原文の香気を残しつつ、注釈と解説で工夫を凝らし、スラスラと読める自然な現代語でまとめました。
第1部では、世阿弥の生涯から能の歴史的変遷、さらには私たちが生きる現代に息づく文化、芸術などに展開された『風姿花伝』の世界を、わかりやすい解説で紐解きます。
また第3部では、世阿弥が残した数々の名言をもとに、現代に生きる私たちの心にも響くことばとして、アンソロジー的にまとめました。このことば集を読むだけでも、世阿弥が『風姿花伝』で伝えたかった本質を読み解くことができます。
【目次】
第1部 名著『風姿花伝』とは
1.今読みなおされるべき名著
2.世阿弥の生涯
3.現代に息づく『風姿花伝』の世界
第2部 現代日本語訳で読む『風姿花伝』
序─能を極めるにはどんな心得が必要か
第一─年来稽古条々
第二─物学条々
第三─問答条々
第四─神儀に云わく
第五─奥義に云わく
第六─花修に云わく
第七─別紙口伝
第3部 『風姿花伝』に学ぶ創造とイノベーションとは
1.やがて花咲く日のために
2.日々新しい自分になる
3.思い通りにいかない時に
4.負けられない場面で
5.道のため、家のために
6.ひと回り大きな花へ
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
『風姿花伝』は、本書の冒頭にも書かれているように、「いかにして美しい芸の花を咲かせ続けるかを語った本」です。
会議の際の話の花、プレゼンの説明ポイントの花、酒宴の際の会話の花など至る所で花を咲かせている人がいる。
本書はそんな花を、自分で咲かせてみようというのがテーマになっています。
また、本書には沢山の名言があります。
自身の心に響く名言に出逢える楽しさもあるかと思います。
そもそも『風姿花伝』は、能芸で有名な世阿弥が、たった一人の跡継ぎのために書いた秘伝書です。
それが、今や世界最古のビジネス書と言われているそうです。
本書は序の章とそれに続く7つの巻から構成されています。
具体的にはこんな感じです。
序:斯道を極めるための心得について
第一:年齢に応じた学び
第ニ:模倣と創造
第三:勝負の心得
第四:原点を問い直す
第五:ターゲットを明確にする
第六:強味を持つ
第七:まとめ(信条や志を記したまとめ)
特に私が感銘を受けたのは、「能の命は“花”にこそある」という言葉であり、その解説でした。
年季の入った名人と言われる役者でも、近頃出てきた若い役者との立ち合い勝負に負けることがある。
これを「時分の花」というそうです。
年季の入った役者は、新鮮味がない。そこへ真新しい花が挑戦する。すると若い役者が勝ってしまうことがある。
本当の目利きの観客ならば見抜けるがそうはならないのが世の中。
「どんな銘木であろうとも、人は花が咲いていない時の木など見はしない」
また、沢山の花を持っているつもりでも、それを観客にとって花に見える工夫をしなければ、誰にも見られることなく、無駄に咲き誇っているだけになってしまうと著者は述べています。
だから、「能の命は“花”にこそある」なんですね。
これはまさにビジネスの世界でも同じことが言える。
今の自分の置かれている状態と合致している。そう感じたと共に明日からの活力を与えてくれた一冊でした。
ちなみに第三部は、世阿弥の名言集になっているので、お時間ない方はそちらを読むだけでも一読の価値ありだと思います。