【感想・ネタバレ】新しい哲学の教科書 現代実在論入門のレビュー

あらすじ

今、哲学は「人間」から離れて「実在」に向かっている。21世紀を迎えてすでに20年、哲学の世界では大きな変動が起きています。そこで問われているのは、「人間以後」の世界をいかに考えるか、というものです。「ポスト・ヒューマニティーズ」とも呼ばれるこの動向は、思弁的実在論、オブジェクト指向存在論、多元的実在論、加速主義、アクターネットワーク理論、新しい実在論など、狭い意味での「哲学」をはるかに越えた多様な領域に広がりつつあります。本書は、こうした動向の明快な見取り図を与え、自分の問題として考える手がかりを示すために気鋭の著者が書き下ろした渾身の1冊です。本書で取り上げられるのは、2016年に『有限性の後で──偶然性の必然性についての試論』の日本語訳が出版されて話題になったカンタン・メイヤスー(1967年生まれ)、2017年に『四方対象──オブジェクト指向存在論入門』の日本語訳が刊行されたグレアム・ハーマン(1968年生まれ)、そして2018年に日本語版『なぜ世界は存在しないのか』(講談社選書メチエ)がベストセラーとなって広く名前を知られるようになったマルクス・ガブリエル(1980年生まれ)ら、最先端の哲学者たちです。「人間以後」の世界を考えることとは、「人間が消滅したあとの世界」という、ますますリアリティを帯びつつある世界を考えることだけではありません。それは同時に「人間の思考が届かない場所」を考えることでもある、と著者は言います。それはもちろん矛盾していますが、「実在論」への注目は、そこに現在の人間が希求するものがあることを示唆しているでしょう。それは、別の言葉で言えば、「実在論(realism)」とは「実存論(existentialism)」でもある、ということです。1987年生まれの著者は、「今」に生きることのリアリティを手放すことなく、哲学の問題とは「生きること」の問題にほかならないことを分かりやすく示しています。新しい哲学のムーブメントをただの流行で終わらせないために。未来のスタンダードが、ここにあります。[本書の内容]プロローグ 「何をしたいわけでもないが、何もしたくないわけでもない」 第I章 偶然性に抵抗する──カンタン・メイヤスー 第II章 人間からオブジェクトへ──グレアム・ハーマン 第III章 普遍性を奪還する──チャールズ・テイラーとヒューバート・ドレイファス 第IV章 新しい実在論=現実主義──マルクス・ガブリエルエピローグ メランコリストの冒険

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Posted by ブクログ

本書は間違いなく、私にとっての「座右の書」になった。

「高さ」と「広さ」は今の自分にとって、切実な問題だった。この世に、至高性と普遍性はない、と嘆く自分に嫌気がさしていた。

今を生き、今を嘆く自分。まだ嘆きがあるだけいいのだろう。いま、ここではない、どこかを望めるだけ「まし」なのだろう。

しかし、「まし」だという感覚だけでは生きていけない。絶対なものを持たない人生。また、共有は一時的な現象。そのような感慨は、憂鬱しかもたらさない。

エピローグで「エモさ」について、深めた論考が秀逸。
哲学は不可能性の論証から、新たな可能性の道を切り拓く。
素晴らしい「哲学」である。

タイトルからはうかがい知れないほどの可能性に満ちた本だった。

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2020年07月12日

Posted by ブクログ

メランコリー、メランコリストという枠組を提示され、さも自分を言い当てられてるかのようだった。

メイヤスー、ハーマン、テイラードレイファス、ガブリエル…彼らの思想が現代の若者にどれだけ強力な武器になるのか。

著者には今後さらに期待が持てる。

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2020年07月03日

Posted by ブクログ

ポストモダン以降の悪しき相対主義/独断主義を問い直すことから始まる現代実在論について、普遍性と超越性をキーワードに紹介、論考した一冊。そこで描かれている世界像が量子論やリトルピープル論とパラレルに見えるのも、きっと偶然ではないのでしょうね。

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2020年02月23日

Posted by ブクログ

著者の処女作。現代の哲学の状況をこの1冊でわかりやすくまとめつつ、「メランコリスト」という概念を提唱して現代人の「心のあり様」を表現し、最新の哲学の成果を踏まえた私たちの行く末を提案してくれる著作。個人的にフィットする内容が多く、特にエピローグに関しては感動的な体験でした。

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2019年11月29日

Posted by ブクログ

●感想要約:
近年の「実在論への転回」を手がかりに,メイヤスーやハーマン,ガブリエルらの議論を紹介しながら,哲学を「生きることの問題」として捉え直そうとする入門書だと感じました.「存在はどうやって証明できるのか」という昔からの疑問を持つ自分にとって,特に印象に残ったのは,マルクス・ガブリエルの「世界は存在しない」という考え方でした.宇宙は物理で定義できるが,無数の文化から成る世界は無限で定義できない.だから「存在しない」という説明には腑に落ちるものがあった.また,ある文化を別の文化で理解し尽くそうとすることが全体主義につながる,という指摘は,世界を物理ですべて説明できると思いがちな理系研究者への警告にも思えた.映画『マトリックス』以来抱いてきた「自分は本当に実在しているのか」という問いを,改めて考えさせられる一冊だった.

●科学博士の書評指数:
楽しみ度:★★☆☆☆
共感度 :★★★☆☆
学び度 :★★★★☆
話題度 :★★★☆☆
お薦め度:★★★★☆

●概要:
近年の「実在論(リアリズム)」への転回を軸に,メイヤスー,ハーマン,テイラー/ドレイファス,ガブリエルらの議論を整理しながら、「生きること」の問題として哲学を捉え直す入門書であります. 形而上学を「人間中心」から解放し,偶然性やニヒリズムにどう向き合うかを問いつつ,オブジェクト指向存在論や新しい実在論の枠組みを通じて,「世界は存在しない」「意味の場」といった現代的テーマを平易に解説しています. メランコリーや閉塞感を抱える読者が,自らの経験を手がかりに実在と実存を結びつけて考えられるよう,最新の議論を「未来のスタンダード」として提示しようと試みています.

●感想:
・「現代実在論」という言葉に惹かれて読み始めました.
昔から,「存在」をどうやって証明するのだろう❓という疑問を持っています.そのため,実在論という言葉に興味を覚えました.

・一番の収穫は、マルクスガブリエル の「世界は存在しない」という意味が少し理解できたように思えることです.

・「世界と宇宙はどちらが大きいか❓」という問いが印象に残りました.

・宇宙は物理で定義できます.
しかし,世界は無数の文化によって構成されているので,世界の方が宇宙より大きいとガブリエルさんは主張していると理解しました.さらに,世界は「無数」の文化で構成されていると考えると,それは数学的に「無限大∞」となり,∞ + ∞ = 2∞ でなく,∞ + ∞ = ∞ なので,「無限大∞」は数学的に定義できていません.つまり,無限大である世界→定義できない→存在しない,という事になるのだと,自分は理解しました.

・興味深かったのは、「ある一つの文化」は「他の文化」からは理解できない,むしろ,「理解しようとしてはいけない」とガブリエルさんは主張していると.自分は理解しました.つまり,ある文化を他の文化で理解できるのなら,極論,ある一つの文化が,すべての文化を理解できて,それは,全体主義につながると言っているのだと,自分は理解しました.

・これは,理系の研究者にとっては,教訓的で,世界のあらゆる現象を物理で理解できると考えるのは間違っているとガブリエルさんは主張していると,自分は理解しました.

・そもそも、「実在」というキーワードに興味を持ったのは,映画「マトリックス」を見たときからです.仮に,今,自分がマトリックスの中にいたとするならば,自分の実在はマトリックスの自分でなく,エネルギー工場の自分で有ることを,どうやって証明できるのだろう❓という問いを持ったからです.その解はまだ得られていません.自分という存在は一体本当なのか❓,いったい何なのか❓とか考えてしまいます.

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2025年12月13日

Posted by ブクログ

高校の倫理の教科書は実存主義までしか扱いませんが、その後出てきた「新しい哲学」の教科書です。カント以後の観念論をどのように破るかという横糸(実在論)と、「何をしたいわけでもないが、何もしたくないわけでもない」現代人(メランコリスト)がどのように高さ(超越性)と広さ(普遍性)を手にできるかという縦糸(実存論)とを上手く織り上げています。特に実存論と相対主義をどのように乗り越えるかという問題意識は、とても共感できました。

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2021年03月07日

Posted by ブクログ

思弁的実在論の提唱者であるカンタン・メイヤスー、オブジェクト指向存在論を構築したグレアム・ハーマン、『なぜ世界は存在しないのか』の著書で知られるマルクス・ガブリエルに加えて、文化相対主義に抗して普遍性を擁護する試みをおこなったテイラーとドレイファスの思想を、わかりやすく解説している本です。

著者は、これらの思想家たちによって提唱された実在論の意義を、「高さ」(超越性)と「広さ」(普遍性)という二つの側面に注目することで考察しています。メイヤスーは、われわれが思考と存在の相関関係にのみアクセスできるというカント以降の「相関主義」を批判し、実在にかんする理説を復興させる試みをおこないました。著者は、こうしたメイヤスーの企図を全面的に肯定することはできないとしながらも、とくに「高さ」について積極的に語ろうとする彼の試みには汲むべき内容が秘められていると評価しています。そのさいに著者は、「大きな物語」に対する懐疑を積極的に展開する「ニヒリズム」と、そうした発想が蔓延する時代にあって実存的な根拠をうしなった「メランコリー」を区別し、「メランコリー」の時代にもう一度「高さ」を求めようとする精神史的状況において、メイヤスーの展開する議論が重要な示唆をあたえてくれるのではないかと論じています。

またガブリエルの「世界は存在しない」という主張には、独断的世界像、とりわけ自然主義が一種の形而上学となってしまった時代に対する批判的意義が認められるとしたうえで、彼の存在論的多元主義の立場がどのようにして新実存主義の主張へとつながっているのかということを解説しています。

現代の精神史的状況のなかで新しい実在論の意義を見定めようとする著者の試みは、やや通俗的な議論になっている印象もありますが、新しい実在論について概観することができるという意味では、入門書の役割をしっかり果たしているように思います。

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2021年02月22日

Posted by ブクログ

マルクス・ガブリエルの「新しい実在論」って、なにが新しいのかわからんな〜と思いつつ、読んでみた。

「実在論的転回」は、ガブリエルだけではないとは聞いていたけど、違いがよくわからなかったんだけど、メイヤスとか、ハーマンとか、いるわけですね。そして、それぞれの主張の概要もわかった。

ポストモダーンの哲学がもたらした相対主義、「正しさ」はないという袋小路を乗り越えたいという動機はすごくわかる。

でも、それは単純に実在論にもどればいいというほど単純なものでゃない。ポストモダーンでは批判されてきた「実在」をもちだしても、それはポスト・ポストモダーンな議論にしかならないな〜。

なんだか、ポストモダーンよりもさらに屁理屈ぽくなっているような気もする。

多分、100年後の人たちが読むと、スコラ哲学での普遍論争とか、いわゆる神学論争にみえるだろうな〜。つまり、同じ穴のムジナだな〜、というのが印象。

そういうなかで、マルクス・ガブリエルの議論はちょっと突き抜けている感じはしたかな?

と言っても、ガブリエルの議論が新しいものにも思えなくて、これって、ポストモダーンな相対主義だよね、と思うんだよね。

ポストモダーンが、「社会的な構築だ」と言っていたのを「実在する」と言葉を変えているだけに思える。

でも、同じことをいっていても、「構築だよね」というより、「実在だよね」というほうが元気がでるわけで、そこが面白い。

自分は、もしかすると、ガブリエルと近いことを考えているのもかもしれない。

自分と同じようなことを考えている人にであうと、すごく盛り上がっちゃうこともある一方、ガブリエルにあんまり盛り上がらないのは、たんにそんなもんだと思っているからかな〜。

「新しい実在論」、もうちょっと付き合ってみるかな?

世界に統一的な意味をあたえる「世界」は存在しないと腹をくくること。だけど、私たちの周りには、いろいろな「意味」が満ち溢れていて、それを楽しみながら生きていけばいいじゃん、みたいな。

「現代実在論」の議論のわかりやすい解説はとても刺激をうけたけど、プロローグとエピローグの著者自身の考えの部分は、なるほどと思いつつも、「現在実在論」の解説部分とややニュアンスが違う感じもある。その辺のところは、別の本に切り分けて論じたほうがいいかなとか思った。

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2020年08月15日

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