【感想・ネタバレ】ベルリンで追われる男のレビュー

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Posted by ブクログ 2019年10月12日

極近年に発表された作品で、「最近の街の様子」を背景とした、題名にも在るようにベルリンが舞台のスリリングな物語だ。
ねぐらにしていたビルの一室から見えているアパートの部屋で、女が殴り殺されたかもしれないという様子を視てしまったガーナ出身で「不法滞在」の男、コージョ。犯行を犯したと見受けられる人物も偶々...続きを読む視たが、同時にコージョも近隣住民に姿を視られた。結果、「殺人の被疑者と見受けられる」という状況に陥り、「不法滞在」という現状の中で窮してしまうのだ。
コージョが友人達の協力を得て出くわした“真犯人”の正体を探ろうとする「探偵」のような活動をする部分と、色々な方面から各々の事由で「追われる」ということになって「逃走」ということになっている部分、そしてガーナからやって来て現在の境遇になってしまっている、何処となく哀感も漂う「人生譚」の要素や、ベルリンの街やドイツ国内での“少数派”ということになっている人達の様子を描くルポルタージュ的要素も交じる、「色々な意味で面白い」という作品になっている。
「追われる男」となってしまったコージョはどうする?どうなる?なかなかに面白い!!

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Posted by ブクログ 2019年10月30日

 ベルリンを舞台にしたランニング・アクション・ミステリー。全編よく走る主人公コージョは、ガーナ出身の不法滞在者。イリーガルな世界の住人が目撃してしまった殺人。

 まるでヒッチコックの裏窓のようなシチュエイション。アパートの窓に見てしまった殺人。殴り殺される女。見る側は空き家に棲みついた不法滞在者。...続きを読む入国許可証を持たぬ有色人種ゆえに、常に司法の眼から逃れ、ベルリンの地下で生息する若者。と言ったって三十に手が届く。家族を捨て、家族に捨てられる漂流物のような人生。ガーナに帰ることは考えられない。

 とにかく警察がわけもなく移民たちを追いまわす。移民たちは、ベルリンの影を走り回る。何らかの罪を背負いつつ、習性のように逃げ回る若き移民たち。逃げ切って、互いの絆を固めることでしか、逃れようのない生活の中で、活き活きと結ばれる友情、愛情、温もりの数々。

 アフリカ文化に深く造詣を持つ作者は、近年の難民受け入れ政策により三、四十万人にも及ぶと言われる中東や北アフリカ難民、そして彼らの受けている人種差別の現実に焦点を置いた小説・映画・記者としての活動に従事しているらしい。本書はドイツ本国を舞台にした現状に基づくノワールと言うべき作品である。

 ミステリと言うには少し弱い骨格だが、のっけから警官の包囲網をかいくぐるアクションに始まる本書は、逃げ切った主人公に『裏窓』のように殺人を目撃するという重圧を与える。殺人者はエスタブリッシュメントの側のサディストであるらしい。追われながら事件の真相に近づくことで、心に正義を抱えるイリーガルでマイノリティな存在は、小説設定としては珍しい。

 移民社会に対する強烈な圧力を逃走するシーンに込めながら、あくまで追いつめられ続ける主人公を描き、その軸に犯罪を暴くという正義の火種を仕込んだ、走る爆薬のような作品であり、従来の小説構想を突き破る。

 まるで1970年代のアメリカン・ニューシネマを見るかのようだ。理不尽で、無力で、呆気なく。現代の『イージーライダー』『バニシングポイント』は、ヒロイズムすら感じさせぬ、圧倒的な力に組み伏せられた弱者たちの叫びを聴く物語でもある。

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Posted by ブクログ 2023年09月12日

アフリカ出身でベルリンに住むコージョは、空きビルの窓から、向かいの部屋で男が金髪の娼婦を殺した瞬間を目撃した。彼は不法残留者で、強制送還を恐れて通報できない。気になって女のアパートに向かうが、住人に姿を見られてしまい容疑者として警察から追われる身に……。社会からはじき出された青年が、友人との絆だけを...続きを読む頼りに街を疾走し真犯人を探す。ドイツミステリ大賞受賞作家が抜群の緊迫感で贈るノンストップ追跡サスペンス!

予想外の展開でビックリ。

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