あらすじ
ランチワゴンは疾走する、危険な中学生アイドルを乗せて。
バツイチ、アラサーの移動デリ経営者・夏都、人生最高で最悪の二週間。
街をワゴンで巡り、料理を売って生計を立てる女性・夏都(なつ)。
バツイチ・アラサーの身で借金を返しながら海外赴任中の姉の息子を預かる生活は楽じゃない。
ある日、緑色の髪をした中学生アイドル・カグヤのファンたちに車ごとさらわれた夏都は、芸能界を揺るがすスキャンダルに巻き込まれることに。
スキャンダルの流出を防ぐため、ある女性の携帯電話に残されたメールを削除せよ。
カグヤと協力してミッションに挑む夏都だったが――。
解説・間室道子
※この電子書籍は2016年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
初めから読み返して伏線を回収していきたいと思う作品。
登場人物同志の細かい心理描写が過去の出来事、体験に対する直感的な共感であることが多かった。
飛躍してしまうようだが、
「他人の過去の出来事に触れる時、似た体験をしていて心情がわかる事と、その人自身に寄り添うことのどちらが大切なのか」
と読書中に考えてしまった。実際に、夏都は最後まで智弥の気持ちを菅沼先生の体験に投影することで理解していたようだが納得はしていない様子で、人との間の愛情をただ信じることでしか寄り添うことができていなかった。
だが、分からなくたって愛していたいと思うのではないか。分からないからこそそばにいて、いつか過去に触れてしまう時を待ってしまうのではないか。
Posted by ブクログ
移動デリを経営する女性とその甥っ子、塾の先生、タレント中学生とその親衛隊
奇天烈なメンバーがゴタゴタに巻き込まれていく話
一つの目的に向かっているように見せかけて、全員がそれぞれの別の目的のためにひた走る
やばそうな相手に対して手の内を明かしまくってしまうところとか、作戦の詰めの甘さが子どもらしく、危なっかしい
お金と名声を持ってる大人にはもっと慎重に当たった方が良い、本当に怖い人じゃなくてよかった
どんなに冷静で物分かりが良いように見えても、子どもは親(親代わり)がそばに居て自分に関心を寄せ続けてくれることを求めてるのかも
"毒親"という言葉が病気のように流行ってしまう現代においても、親を求める純な子どもの気持ちに触れられた
おいしそうなお弁当の名前が定期的に出てきて、お腹のすく本だった
Posted by ブクログ
他人の人生を変えてしまえる関わりを作り上げることができてしまう。その、浅はかな考えに、意図せず協力してしまうところが悲しかったです。他人の苦しみはわからないものだけれど、おざなりにしてしまうことで、悲しい結末を進めてしまうことになる怖さがありました。
Posted by ブクログ
4.1点
複数の作品を組み合わせたような不思議な小説
序盤で日常を描きつつ、その中で起こるちょっとしたイベントを飽きさせず読ませてくれる。
そうかと思えば急に誘拐されるという一捻りから、なぜか誘拐犯たちを手助けするところで主軸が進んでいく。
よく考えれば分かるレベルの無理のない伏線を回収していきつつストーリーは進行し(智弥の有能っぷりは都合良すぎる気もするが)想像したものと全く違うラストに着地する。
ラストを伝える為にそこまでのストーリーを紡いだとすると、酷く回りくどい書き方をしている。しかしだからこそ最大級のインパクトを読者に残す。どうなったかを描かないからこそ良いのだろうが、どうなるのか気になる不思議な感覚。
初の道尾秀介作品で強烈な印象が残った。