あらすじ
「好きです、夫にします」
斎藤綾乃十八歳。許嫁と名乗る人からの手紙で高校を中退し、東京から遠く離れた田舎のとある村に移住しました。
私は貴方の許嫁です――母を亡くしたばかりの綾乃のもとに届いた一通の手紙。部屋の退去勧告を受け進退窮まっていた綾乃は、迷わず差出人・冬晟の元へ向かう。予想より若く、柔和な若隠居といった風情の冬晟は、村の揉め事を調停する大事な役割を担っていた。許嫁らしい決め事もなく、家事を引き受け慎ましく暮らす綾乃だが、調停を手伝い村人たちと関わることで、結婚の約束には深い理由があると知ることに…。
わみず・装画
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Posted by ブクログ
村の揉め事をあくまで現実的な理論で解決へ導く綾乃。
母のことがあったとは言え、その観察眼恐るべし。
その理論も、各調停後のご当主と当事者の会話で非日常へとひっくり返るのは驚きつつも面白かったです。
人間の世界から、話が進むごとにじわりじわりと妖たちの世界へと誘われる、その匙加減が絶妙でした。
桜の話が特に素敵で泣けました。
ご当主家と綾乃の母との因縁が分かりそうで分からない、ラストでようやくその点の謎も明かされてすっきり。
そして、更なる暴露話でご当主の謎(本人にしてみれば綾乃にだけは明かされたくなかったであろう事実)も明らかになり、読者側にしてみれば何たる嬉しいサービスもあり、大団円で終わって本当によかったです。
これまで自分のことは二の次だった綾乃が、自分の幸せを第一にご当主と生きていってくれたらなと願っております。