【感想・ネタバレ】文庫 沈黙の少女のレビュー

あらすじ

このラスト、予測不能。
衝撃の展開、底なしの邪悪…、人は平静ではいられなくなる。
ドイツ推理作家協会賞受賞『謝罪代行社』の鬼才が贈る衝撃の罠に誰もがハマる!

冬。ベルリン。闇に消えた子どもたち。ただ一人生還した少女…。凍てつく魂の闇を往く父親の彷徨。今と数年前の「時制」、わたし・彼ら・きみの「人称」、これらの錯綜が読み手を舞台へと引き込んでいく。迷宮の果てに待ち受ける驚天動地の真相とは!

【あらすじ】
雪の夜、ベルリン。13歳のルチアとその弟が何者かに誘拐された。2週間後保護された彼女はそれから6年間、謎の沈黙を守りつづけることになる――。一方、教師のミカはパブで4人の男たちと接触を持ち、仲間として加わることに成功する。それはずっと温めてきた計画の第一歩――ミカを衝き動かすのは、父親としての妄執にも似た狂おしい想いだけだった。予想を超える展開の果てに待ち受ける驚愕の真相とは? 黒々とした衝撃が胸を貫き、腹を震わせる傑作ミステリー登場! (解説・酒井貞道)

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Posted by ブクログ

 読み終えた途端に、「彼ら」に関する叙述をすべて読み返した。これまで読んでいたものは自分の読んだと思っていたものと全く違っていたことを知る。それが終盤になってわかる。いわゆるどんでん返し。トリック。叙述と構成がもたらすストーリー・テリングの奇妙に捻じれた世界。

 饒舌な小説ではない。ある緊張感が全編を満たす。日常生活からアウトランドにはみ出した者たち。自由意志であろうと、強制された形であろうと、登場人物のほぼすべてがそのようにカテゴライズできる。

 非日常生活を象徴するのが、冬という季節、凍りついた湖と、その周囲に広がる森、そして古びた小屋。小屋には狭い地下蔵が用意されている。

 小説を緊張させる重要な要素は、誘拐される子供たち。彼らは地下蔵に収容され、一人一人が髪の毛をつかまれて持ち上げられてどこかへ消えてゆく。雪の森の中での異常な世界。何が起きているのか? 緊張感が高まるというより、全編子供とその父親の復讐をめぐる張り詰めた時間を物語が進む。そう、最初から最後まで。気が休まることのない張り詰めたプロットが。

 世界中で今、書かれ、また読まれているミステリのあまり珍しくなくなった素材としての小児性愛、小児虐待、を材料にした小説と見える全体を覆う重苦しさ。しかし「彼ら」も、本作全体も、実は見た目通りではなく、物語はもっと巨きな時の歯車に推されて動く、とても見えにくい暴力装置を描いたものである。その象徴とされるのが、凍りついた湖であり、閉ざされた冬という季節なのだ。

 狩人として森に散ってゆく大人たち、子どもたち。父親としての復讐に燃えた主人公は、単独で秘密のグループに潜入を開始する。読者は主として彼の叙述する「わたし」と生存した被害者少女の「きみ」の章につきあってゆくことになるのだが、登場人物たちには見えていない「彼ら」を含め、複数人称かつ複数時制によるトリッキーな仕掛けが小説全体を覆っていることが、本作の一番の読みどころとなる。

 張り詰めた品格のある文体に、ドイツらしい生活風景と、北ヨーロッパの冷たい冬。独特の音楽的味わい。極めて稀有で印象深いミステリー作品である。

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2019年07月20日

Posted by ブクログ

「きみ」「わたし」「彼ら」この3つのパートを繰り返し物語が進む。冒頭の「きみ」で何が起こったの???と引き込まれる。
「きみ」で語られる登場人物の謎が解き明かされる時、その状況に唖然とする。
原題は「STILL」。ぴったしだ。

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2023年08月04日

Posted by ブクログ

サスペンスなのに文章が格調高くて純文学のよう。ドイツの冬の厳しさが浮かぶようです。でも、そのために結末に来てもすっきりしない感があります。きみ、にとってはラストは良い結末なのでしょうね。

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2019年08月21日

Posted by ブクログ

「わたし」と「きみ」と「彼ら」の3つの視点を切り替えることで、「狩り」の話が進む。「狩るもの」と「狩られるもの」が幾重もの重なり、逆転する。
その構成の巧みさには、敬服する。
ただ、登場人物に思い入れするのは難しかった。

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2019年08月15日

Posted by ブクログ

一気に読んだのだからページターナーであるには違いないのだけれど、いやあもう年々暴力がつらくなってきてまして。。。

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2019年08月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2年ほど前に書評をみて、気になっていた本をようやく読んだが、後味が悪い。
ペドフィリアがまず受け入れられない、子供の誘拐も殺人ゲームも読んでいて辛かった。

パパの場面はたしかにショックだったけど、話題になったほど、自分には響かない本だった。
ラジオ、というのはひっかけだったのね。
ずっと犯人だと思っていた人たちがただの模倣犯だったというのも拍子抜け、、、。
主人公だけが何も知らない世界。

ペドフィリアのおじさんの一人が、自分も子供の頃に被害者だったというのは苦しい。

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2020年07月17日

Posted by ブクログ

実際にこんなカルト集団のような者が存在したらと想像するだけでも怖い.3つのパートで進行しながらだんだん真相に近づいていくところは格調高い文章の力もあって怖いもの見たさでワクワクするところもあったが,最後のきみであるルチアにとって希望のある幕切れとも言えるが,なんら邪悪で自分勝手な存在は失われていないのがなんとも後味の悪い読後感になった.

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2019年12月01日

Posted by ブクログ

 最後まで読むと、ある部分を読む返すことになるだろう。「わたし」、「きみ」、「彼ら」の三つの人称で語られる物語は、鬱展開で胸くそが悪くなる。でも、先を読みたくなる作品。裏表紙には、「黒々とした衝撃が胸を貫き、腹を震わせる」とある。そうとおり。

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2019年11月17日

Posted by ブクログ

両親が留守の雪の夜、何者かに誘拐されたルチアと弟。2週間後雪の夜道で保護されたルチアは沈黙を続ける。
同じように娘を誘拐されたミカは、謎の男たちに近づいていく。誘拐犯たちは子どもたちをどうしたのか?

ミカの立場からかかれる「わたし」の章と、ルチアを描く「きみ」の章、男たちを描く「彼ら」の章が交互にストーリーを進めていく。徐々に明かされる真相に驚く。そして、とにかく怖い。
いろいろな意味で衝撃のはしる小説だった。疲れた。

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2019年09月24日

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