【感想・ネタバレ】へろへろ ──雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年03月10日

制度があるからやるのではない。施設が作りたいからやるのではない。思いがあるからやるのではない。夢を実現したいからやるのではない。目の前になんとかしないとどうにもならないような人がいるからやるのだ。その必要に迫られたからやるのだ。それは理念ではない。行動のあり方だ。頭で考えるより前にとにかく身体を動か...続きを読むす。要するに「つべこべ言わずにちゃちゃっとやる!」のだ。
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介護に疲弊した家族が、涙を浮かべながら窮状を訴えるとき、施設はその存在意義と力量を問われる。専門職として、その専門性が試される。この仕事を生業とする者が、今、自分たちに何ができるのかを突きつけられる。
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自分が実際目にして、耳にして、鼻でにおいをかいで、そして心の奥で感じたもの。人と人とが顔を合わせ、たわいもない会話を交わしていく中で自然に育まれていく、情のようなもの——そういうものを大事に思う人たちがいる。

もらっていいお金と、もらってはいけないお金がある。意味のあるお金と、意味のないお金がある。自分たちの力と呼べる力と、自分たちの力とは呼べない力がある。間違っていることと、間違っていないことがある。その違いがわからなければ、僕が何を間違おうとしていたのかはわからない——。

臆病風に吹かれなければ、事は少しずつ動き出す。大切なことは、申し訳ないと思う気持ちを、ありがとうという気持ちに変えることだった。それができれば自然と腹は据わってくる。調子に乗ることもなければ、間違うこともなくなっていく。

思えば「自己責任」という言葉が「老い」という不可抗力の分野にまで及ぶようになって以降、人は怯えるようにしてアンチエイジングとぼけの予防に走り出した。のんびり自然に老いて、ゆっくりあの世へ行く。それを贅沢と呼ぶ時代が来てしまったのかもしれない。とにかく国は生存権に帰属する介護問題を、サービス産業に位置づけ、民間に託して解決を図る道を選んでしまった。(中略)サービスとはつまり、手間という手間をひたすら金で買い続けるしかない代行システムのことなのだ。

僕はとても個人的な人間だし、団体行動も苦手で、人の役に立とうと思ったことは特にない。今だってそうだ。僕が今も「よりあい」と付き合っているのは、そうした志があるからではない。単に下村恵美子や村瀬孝生、そして若い職員の人たちと仲良くなってしまったからだ。そういう友だちみたいな人に「ねぇ、ちょっとお願い!」と頼まれれば、僕は嫌とは言わない。それが友だちというものだからだ。

地位とか名声とか、そういうものが欲しくてやっているわけじゃない。やるべきことがそこにあるから、それをやることでしか前に進めないから、ただそのことだけを懸命にやっている。そのシンプルさが、なぜか人を魅力的な顔にしていった。

贅沢が言えるわけではないから、集まってくるのは年代もデザインもすべてバラバラのものたちだ。けれど不思議なことに、こうして集めてうまく組み合わせていくと、その雑多さが逆に落ち着いた雰囲気を醸し出し始める。人と一緒だ。同じような顔をした人たちしかいない世界は案外つまらない。それに居場所を無くしかけたものでも、集う場所がどこかにあれば、もう一度やり直すことができる。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年02月22日

あーよみおわった。読みやすい。いっきよみ。おもしろいし、テーマも強いし、でも印象強かったのは、この著者の「気持ちのいい家」とか、(なんかもうひとつくらいあったけど忘れた)形容詞がものすごいしびれるのがあって、とにかく始終しびれていた。

谷川俊太郎の詩にも、お金集めの信念の話にも、号泣する。お金がな...続きを読むいとき、その集め方でお金の価値も変わってくる。勇気をもらえた。

社会にとけこめないお年寄りを世話することからはじまった、ワケアリの人ばかりがあつまる老人ホームの話。介護や高齢化が問題化した、一昔前の事情や空気感が伝わりやすい。
しかし今の事態は、世の中の人たちがお金がないと何とも出来ないんだと思ってしまう、あるいは面倒なことはお金にさせると思ってしまう傾向が強くなってしまっているようにも思う。

施設がまわりにとけこむ、老人ホームに入らなくてもいいような老人ホーム。社会が隔離しようとする存在は、それ自体の問題というより社会の受け口が問われる問題なのだなと思う。しかし、普通に暮らしているとそのことをつい忘れてしまう。こんな施設が当たり前になったらいい。お金だけしか頼れるものがない世の中はさみしい、信頼できる人たちがいるかどうかが、安心して暮らすことにつながるのだなあと思う。
一点だけ、行政や政治にも、頭がかたいとか己の利益ばかり考えているとかいうのは、何かこれからどうにか出来ないものか、と感じた。私たちの国の組織なのに。

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Posted by ブクログ 2021年01月31日

一人のお年寄りに寄り添うところから始まった「宅老所」のお話。活動を継続し、新しい施設を設立するために奮闘する職員や世話人。いつの間にか筆者も「よりあい」の世話人のひとりとして巻き込まれていく。


『よりあい』の施設の開所式のシーンでは、思わず目頭が熱くなった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年09月29日

良い内容だと思うけど、文章が読み難くて時間がかかった。
介護の話を明るく面白く書いてるけど、ネタを活字で読ませるってしんどい。


村瀬先生のスピーチが1番心に響いた。

自然に老いて、ゆっくりあの世へいく事は贅沢になってしまった。介護はサービス産業になり、金で買わなければならない。

施設なんて建...続きを読むてても、高齢者の数は間に合わない。
働く人もいない。

時間をかけて作った縁は易々と切れないもの。
よりあいで友達ができたり、世話になったりしながら、あの人の為ならと、人の情で助け合いで介護が始まる。

ぼけても普通に暮らしたい。

老人を疎ましく思ったり、怒ったり、嘆いたり、隔離したり、そんな世界では私も暮らしたくない。

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