あらすじ
ソクラテス、プラトン、ベンサム、キルケゴール、ニーチェ、ロールズ、フーコーetc.人類誕生から続く「正義」を巡る論争の決着とは? 私立高校の生徒会を舞台に、異なる「正義」を持つ3人の女子高生の掛け合いから、「正義」の正体があぶり出される。ストーリーだからわかる!つい人に言いたくなる「哲学家の思想」
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Posted by ブクログ
名著。
作中や帯にも言及が見られるので,執筆の下地や背景にマイケル・サンデルの『これからの正義の話をしよう』があるのは,ほぼ間違いないと思われる。
しかし,それなりに難解なサンデルの正義論を,小説,しかも"学園ものハーレムラブコメディ"テイストのライトノベルの皮を被った,物凄く取っ付きやすさを感じる教養本にしてしまった,作者の発想力と実行力,その頭の良さには驚嘆するし,畏敬の念を抱いてしまう。
さて,本書のテーマをひと言で簡潔に表すとするならば,「正義とはなにか?」である。
もちろん,作中でも繰り返し述べられているように,このテーマは人間にとって2500年以上に及ぶ歴史の歩みにおいて,延々と考えられ続けてきたうえに,今なお答えを出しきれていない永久不変のものだ。
簡単に万人が納得のいく答えを提示することなどできようはずがない。
本書においても,作者が想定している「正義とはなにか?」が一応の形としては示されることにはなるが,むしろ「大事なのは"正義"を規定しないことである」という,本書自体の存在意義どころか,倫理学・哲学のいとなみ自体を否定しているところにこそ,本質的な価値を感じさせるものになっている。
そのような意味においては,「正義とはなにか?」を知りたくて,その答えを求めて本書に縋った人にとっては,ともすれば結果的に,メビウスの輪に閉じ込められてしまったような感覚を覚えることになるのかもしれない。
だが,実際に現実世界を生きること自体もそうであるのと同様に,すっきりと決まりきった絶対的な答えなど,無いことの方が多いのだ。
むしろ,だからこそ絶えずその時,その場,その状況ごとに応じて,常に人間は考え続けていく必要があるし,迷い続けながら生きていく。
その根底に願いとしてある,よりよい人生を目指して。
簡潔に総括した感想としては,以上であるが,以下は個人的な考えや,本書から学ばせていただいたこと,あるいは好みの部分について言及していきたい。
私としては「正しいこと」があらかじめ規定,あるいは見出されていなければ,人間が集団として,社会的に他者と関わりあいながら生きていくことは,事実上不可能だと思うので,たとえ本当にそれが正義なのかどうか?は証明できなかったとしても,広く普遍的に善いことだとされていたり,考えられたり,肌で感じることができるものを,「正義」と信奉すること自体は,やむを得ないのではないかと思う。
その点からすれば,立場的には直観主義者に近い。
本当のところを言えば理由は存在しないし,証明することも不可能なのではあるが,それを正義だと言うことが,たとえ嘘を突き続けることになるのだとしても,前提として規定できる善や正義がなければ,全てが空中崩壊して,無に帰してしまうからだ。
だから絶対主義やプラトンのイデア論に全く意味が無いとは思えない。
大昔の偉大なる賢人が,考えて考えて考え抜いた末に,必要だと思ったからこそ規定せざるを得なかったもので,重要であることには違いないと思うのだ。
一方で,身も蓋もない構造主義の考え方にも一理あるよなと唸らされるところはある。
この広い宇宙の中に,地球という惑星があって,時間という概念に基づきながら,我々人類が思考する生物として存在している。
さすがにこの前提にある事実を疑うのは難しいところまで,長い歴史を通じて人類は歩んでこられたのではないかと思う。
そうなると,宇宙という枠組みがあること,地球という星の中で生息していることなど,構造(システム・枠組み)的に人間の意思とは関係無く,人類誕生の瞬間からすでに規定されてしまっていたことは,間違いなく存在したと考える方が妥当になるだろう。
そしてそれらの構造からは影響を受けざるを得ないというか,影響を受けないなんてことはあり得ないし,無理だというのは,極めて納得度が高い考え方だと思うのだ。
逆に言えば,ポスト構造主義が,構造主義を乗り越えようとした挙句,皮肉にも構造主義が"正しい"ことを証明する結果ばかりになってしまったことからもうかがえるように,我々が,時代や,場所や,その時々の人々の価値観や考え方を乗り越えよう,抜け出そうとする,その考え自体が,「すでに"構造"に支配されてしまっている」とも言えるわけで,さながら一度とらわれてしまったが最後,抜け出せない,アリ地獄のようなものに感じる。
作中でもラストシーンにおいて,主人公である正義が,その時・その場・その状況に応じた中で,「自分が善いと思ったこと」を選択して,実行に移すことになるが,その一連の思考から行動に至るまでのプロセス全てが,構造に支配されてしまっているからこそ,鳥籠を抜け出して羽ばたいて自由になるために,あえて常識の枠から外れた愚行を冒さざるを得ないということが,構造からの脱却の困難さを象徴的に示しているように感じられた。
だが,構造に支配され,その構造から抜け出そうとすることすら,すでに構造に支配されているのだとしても,それでもなお,われわれ人間はよりよく,より幸せになれる人生を求めて,生き続けていってしまう生き物である。
だからこそ,著者は無理を承知の上で,その無理を押し通してでも,その時・その場・その状況という構造に支配されながらも,自分が「善い」と感じるものを信じ抜くしかないと,そんなもの本当はないのだと分かってはいるけれども,「確立された自己」や「自由意思」,それに準じるような"何か"を信じ抜くことでしか,人は自分の振る舞いに「正義」を見出せないし,生きていくことはできないのではないかと,問うているのだと思う。
さながら,善を求め,善を問い続けることで,人々から疎まれ,善や正義に殉じて死へと追い込まれることになってしまった師・ソクラテスの姿に,意義を見出すためには,イデア論を提唱するよりほかなかった,プラトンと同じように。
さて,本書には人間が規定する「正義」を,究極的にまで突き詰めて考えると浮かび上がる,3種類の正義が登場する。
1.平等の正義である功利主義
2.自由の正義である自由主義
3.宗教の正義である直観主義
である。
最後に,私個人がこの3つの「正義」から学んだことと,その問題点について対処しておきたいなと感じるあり方を記して,長く拙いこの文章を終えようと思う。
功利主義はスタートはみんな違っていて多様だけど,同じ幸せというゴールは目指せるよねという考え方だと思う。
だからこそ"同じ幸せ"を前提とし,それを実現するために強要してしまうところに問題がある。
そもそも人はみな同じゴールを目指しているのか?ということにも疑問が生じる。
個人的には,みんな一緒に幸せになりたい,みんなを幸せにしたいという,根本にある理念自体はすごく素敵だと思うし,好感が持てる考え方だ。
作中のエピローグで語られる主人公・正義のベンサム評は,正直この作品の中で1番心にグッと迫ってきたし,感動を覚えて目頭が熱くなるくらいだった。
正義も言っているが,誰よりも優しすぎたからこそ,みんなで一緒に幸せになるためには無理を押し通すしかなかったというのは,痛いくらいに理解できるし,共感してしまう。
けれども,やはり人はみなそれぞれ,生き方も価値観も何もかもが違う生き物であるのは間違いなく前提としてあるから,一律の基準によって幸せを規定してもよいとは思えない。
以上のことから功利主義は,理念の部分の素晴らしさを,生き方や考え方のベースとして,ほんのり心に抱いたり掲げておくくらいが,ちょうど良い塩梅なのかなと感じた。
困っている人がいたら余裕ある分を分け与えて助けるとか,公平性が求められる場面や事柄において,用いていきたいなと思う。
ちなみに,個人的には千幸ちゃんが今作における最萌えキャラです……。
どんな作品においても一貫して,健気で優しい女の子が好きなので,自分が「善い」と感じる,「正義」として規定している要素として,他者に対する「優しさ」や「思いやり」とか,弱者が困難にもめげずに一所懸命に努力する様や,立派に振る舞う姿,諦めずに自分の信念を貫こうとする姿勢みたいなところは大きいのだなーと,改めて気付かされた。
自由主義は逆に,どのような事情や状況であれ,みな同じ人間であることには違いないのだから,それぞれ個人で責任を負って生きるべきだし,それこそが自由へとつながっていくという考え方だ。
まず,そもそも自分が元から自由主義が嫌いだということは,ハッキリと前置きしておく(笑)
が,その理由や原因が,持って生まれた時点でのハンディキャップを考慮していないところにあるということを,本書を読むことで理解が進んだように思う。
単純な障がいの有無に限らず,生まれた家の貧富の差ももちろんだし,それこそ構造主義が唱えるところでもある,あらゆる状況や条件などの構造が,人それぞれで異なっていることなど,火を見るよりも明らかだ。
にもかかわらず,その事実を無視して,「いやいや,人間なんだから,みんな条件は平等で同じでしょ?」とでも言い出しかねない自由主義は,どう考えても受け容れがたい。
確かに「人は他人の自由を阻害することさえしなければ,何をしても自由だ」というシンプルな論理は,シンプルだからこその強み,付け入る隙の無さを感じさせるものではある。
さらに言うならば,先にも述べたように,人の手によって規定されてきた「正義」や「善」に,根拠があるのかといえば,少なくとも証明することができないのは紛れもない事実だ。
だからこそ,「本来,人間は何物にも縛られず,自由な存在である」という前提から始まっている自由主義は,その点からすれば"正しさ"に最も近いとも言えるし,なおのこと,だから1つだけ,「他人の自由を奪うことだけしてはならない」という最低限の自由を阻害する縛りしか設けないというのも,論理の筋道として一貫している。
ある意味では,大多数の人にとっては優しく思いやりがあるとすらも言えてしまう。
だが,やはりシンプルすぎるがゆえ,「正しさ」の規定が最小限・最低限であるがゆえの,アンコントローラブルさ,言い換えれば作中でも挙げられているように,愚行権に代表される悪用のされやすさは,欠点になってしまうなとは思う。
個人的に自由主義は,自分の主義として掲げるためのものというよりかは,他者と共存して生きていく上で,他者に対する思いやりを示すために,用いていくのがよいと思う考え方だ。
たとえ自分と違う価値観や信念や考え方をしている相手であっても,「人間は根本的には自由である」という考え方を前提として持っておくことで,他者と自分とのよい境界を築くことにつながったり,不要な衝突を避けて,違うからこそ相手を知ることが面白いと感じ,共存しあえる道へと繋がっていくのではないだろうか。
そのためにも,自由主義の根本にある考え方は必要だし,誰もが備えておいた方がよいものだろうと感じた。
もちろん,誰かが愚行権を行使しようとしているならば,止めた方が好ましいだろうと私は感じるから,そこは相手の状況なども踏まえつつ,時には自由を阻害する柔軟さを持ち合わせておきたいなとは思うが。
最後に直観主義についてだが,前述通り,私自身は直観主義の立場に最も近い。
だからこそ,直観主義の悪い面として挙げられていた,「独り善がりで押し付けがましい」という指摘には,真摯に耳を傾けて,反省すべきだと思う。
私自身は他者に対して自分の考えを押し付けるようなケースはあまり多くないと思うし,できればこれまでの人生において,それほど押し付けずにきたとは信じたいがw
自分にとって好ましく,善いと感じる価値観や信念は,当たり前ではあるけれども,他人にとってはそうではないことだってあるし,むしろその方が多いのだということは,キチンと受け止めながら,これから先も生きていきたいと思う。
主人公の正義も作中で述べていたように,「正義」は,あらかじめこうだと規定しておいて,それを振りかざすためにあるものではなくて,その時,その場,その状況ごとに応じて,悩み苦しみ,もがいて葛藤しながらも,考えて考えて考え抜いた先に,選びとるものであって,選んだ後もなお,「本当にこれでよかったのか?」と問い続けていくものなのだと思うから。
そしてこの考え自体も,他人に影響されて,構造の中で自分が「選ばされてしまった」だけのものに過ぎなかったとしても,それでもなお,自分がその時「善い」と感じたものを信じて,歩んでいきたいと思う。
風邪というか,おそらくは新型コロナウイルス感染症に罹ってしまったため,だいぶ途中で間が空いて,読み終わるまでに時間が掛かってしまいましたが,素晴らしい一冊でした。
本当にありがとうございました。
これからも迷った時,思い悩んだ時,折に触れて立ち返って読み直したいし,学びを深めていきたいなと思います。
Posted by ブクログ
飲茶さんの本は、どれも面白いですねー。
この本は、功利主義、自由主義、直観主義を通じて「正義とは何か」を考察していくという内容でしたが、めちゃめちゃ考えさせられて、面白い本でした❗️
Posted by ブクログ
どうして自分の正義は他人の正義と違うんだろうという疑問にわかりやすくヒントをくれる哲学と倫理学の本。
多数派、少数派、差別だとかなんとかファーストだとか。今の社会、自分の立場で好き嫌いをすぐ白黒つけがちだけど。
よくよく考えて冷静に、俯瞰して見ないと。周りの目や流行りばかり気にしてネットやSNSに簡単に意見をひっくり返されて騙されてしまう。
「30人の子供と自分の娘どちらを助けるか?」
本の中で迫られる選択。
絶対に正しいとか善い行動なんてものはなくて、その人が必死に考えて決めたことならそれでいいんじゃないか。考えないこと、決断しないこと、行動しないこと、諦めることのほうが問題だと思う。
意見や価値観、見えてる世界は人それぞれ。
わからないことばかりだけど、無知を自覚してわかる努力をしなきゃいけない。
Posted by ブクログ
正義 とは何なのか、何をもって正義と捉えるのかについて考えたことなかったから面白かった。答えのない問いについて追求する面白さを知ることが出来た1冊。物語形式になってて読みやすかった。オチも最高。
Posted by ブクログ
正義について、3つの正義(平等・自由・宗教)を学びながら、自分なりの正義とは何だろう?と考える事が出来ました。
魅力的な登場人物に難しい哲学の考え方を、その登場人物の置かれた立場の言葉で語らせている点もとても良かったと思います。
正義とは?と考える事は人間にとっての土台のようなものを考える事だと思います。
人間はこれからも平等と自由と宗教を頂点した三角形の中で、何が正義かを求めてあがき続けるのだと思います。
何が三角形の頂点に来るか?その時その時の置かれた状況で、最も善いと思う行動を取れるようになりたいです。
Posted by ブクログ
正義とはなんなのか答えろと言われても言葉につまる。
あまりに漠然としていて、考えれば考えるほど、迷走していく。
本書のおかげでその正義というもののぼんやりとしていた輪郭が、なんとなく掴めるようになってきた気がする。
物語としても楽しめる、優しい哲学の入門書。
1人の娘の命か、数十人の子どもの命か、重々しい決断に迫られる場面から始まり、引き込まれた。
自分だったらどうするのか考えながら読んだ。
胸を張ってこれが正義だと言えるものなんてないけど、だからといって敬遠せず、話し合って行くことが大事だと感じた。
Posted by ブクログ
あわわわ。。。最後はすごいオチになっていた!!!
超越オチ。
語りを通して、正義を伝えるのは、うまくいかないのでは?と思い、読み進めていたが、今作は大成功だ。「正義」を伝えるための物語という手法は成功だ。「正義」をネタとした物語は成功だ。
*メモ
・正義の基準は、平等(=功利主義)、自由、宗教。
・ロールズの正義論。無知のヴェール。自由原理と格差原理がでてくる。
・宗教。相対主義と絶対主義。
・『監獄の誕生』フーコー
Posted by ブクログ
自由、平等(功利主義)、宗教の三つの価値観を主人公と3人の登場人物が議論を交わす形で話を展開していくので、わかりやすくてめちゃ面白い。
功利主義には、幸福度を客観的に計算できるのかという問題、身体的な快楽が本当に幸福だと言えるのかという問題、強権的になりがちになるパターナリズムの問題がある。
自由主義には、富の再分配の停止による格差の拡大や弱者が排除される問題、自己責任や個人主義の横行によるモラルの低下という問題、当人同士の合意による非道徳的行為の増加の問題がある。
人類の歴史を遡れば道徳、つまり善や正義といった理想を持っている人間の方が悪人よりも大勢人間を殺している。 ニーチェは、神や善や道徳を普遍的なものではなく、支配者が人間に都合よく大人しくさせるための抑圧の道具に過ぎないと主張し、現実の存在に目を向けた生き方をせよと訴えた(実存主義)。これ以降の哲学史において、超越的な存在を肯定する哲学は全く出てこなくなった。
ロールズは、無知のヴェールによる思考実験を行うことにより、差別をせず、自由を保障するという自由の原理と、社会的・経済的不平等が最も不遇な人にとって最大の利益になるような形で存在するのであれば認めるという格差原理の二つが、万人共通の正しさとして浮かび上がってくるだろうと結論付けた。
構造主義は、人間は何らかの社会構造に支配されており、決して自由に物事を判断しているわけではないと考える。ミシェル・フーコーは「監獄の誕生」の中で、刑務所というシステムが歴史的にどのように誕生し、それが人間にどのような影響を与えたかについて分析し、刑務所は悪人の生活を監視して正常な人間に矯正する装置であると考えた。街を歩く人のほとんどがスマートフォンなどの情報機器を持っている現在は、監視カメラを持ち歩いて互いを監視しあっている状態と言える。
内容的には学生向けなんだろうけど、今まで読んだ本のベスト10に入りそう。
Posted by ブクログ
正義を平等・自由・宗教という3つの点からアプローチし、良い点と悪い点を分かりやすく解説してくれている本。哲学という答えがないものをテーマとしていますが、ストーリー仕立てになってるので内容が頭に入ってきやすいです。
ラストシーンはなるほど、と思いましたが笑ってしまいました。笑撃のラストというやつです。
Posted by ブクログ
難解な言葉があまり出てこないしわかりやすいし、とても読みやすかった。ストーリーとしても面白かった。課題のために読まないといけなかったから読んだが、本当に面白かったと思う。
Posted by ブクログ
哲学と倫理の繋がりを知り、難しいのに面白い本だった。
倫理は善く生きるための学問で、大きく「平等、自由、宗教」が根幹にある。
平等は功利主義といい、最大多数の最大幸福を目指す。
自由は自由主義といい、個人の自由を重んじる。
宗教は直観主義といい、イデア、あるかないか分からないが信じるものがある。
どれも欠点がある。
功利主義は幸福を言及できないし測れないこと。
自由主義は弱者が生まれること。
直観主義は説明がつかないこと。
そして生まれた構造主義。思考も事象も枠の中でしかないこと。
刑務所の中では囚人は囚人らしく、看守は看守らしく演じるように、社会でも同じように社会の中のその特定の環境下の存在として振る舞う。
そこから抜け出すことはできない。
だから、それらを加味した上で自分の善を進めればいいのではないか?という結論。
すごく分かった。し、それぞれに共感した。
まず、善を3つにわけて、それらの主義、主張を知れたのが大きくて、それの反論も論理的で分かりやすかった。
構造主義に対してと、ポスト構造主義に対しても説明があり、とてもとても分かりやすかった。
あと、「原典をあたる」のを伝えていたのにも共感した。
読みながら、自分は自由主義であり直観主義だと思ったけど、功利主義も構造主義も理解したつもりだった。それに自分がそこまで「主張していない存在かも」と思って、つまり「〜〜主義だ」って言わないことで、どっちつかずの自分だったと思った。そして、そこについて考えが及んでいないことも感じた。
フーコーの研究についてを読んで、追究の目線と姿勢に感銘を受けた。
どっちつかずの人間になってきているんかな?
AIが発展したり、新たな生物と関わる瞬間に、決断が起こるだろうし、そのために今のうちに詰められるところは詰めとかないとと思う。
それと思考するってやっぱり大事なことだと思った。
考えないと言葉にならないし、言葉がないと主張できないし、主張できないと決まらないし、決まらないと進まない。
一人でも考えることが増えて質が上がれば最善が尽くされるだろう。
Posted by ブクログ
PSYCHO-PASSというアニメが好きで、それを機に「正義」について考えるようになりこの本を読んでみました。面白くてページをめくるのが止まらなかった。
Posted by ブクログ
「正義」に因む哲学の歴史とポイントをざっくりと物語仕立てで教えてくれる快書。
自分としては「正義かどうかは条件により異なる」ものだと思った。どんな条件でも成り立つ自然法則が無いように、どんな条件でも成り立つ正義(社会の法則)はないと思う。
Posted by ブクログ
倫理学についての初歩的な内容を小説仕立てにしている本。
倫理学を以下の三つの考え方から説明していて非常に理解しやすい。
・功利主義(最大多数の最大幸福を優先)
・自由主義(個人の幸福を優先)
・直感主義(宗教的な価値観)
これまで哲学書や文学などに接しても晴れなかったモヤモヤが見事に言語化されていて驚いた。自分の中の迷いの原因を突き止められた気がする。
悩める人に必読の書。
<アンダーライン>
★★★「宗教的である」とは、「物質または理性を超えたところにある何かを信じていること」
★★★直感主義者は噓つきにならざるを得ない。だって、わかるはずがないものをわかる、と言い張らないといけないからだ。
★★★★★
正義は答えをだしたらいけないんだ!
これこそが正義だと答えられてしまったら、それはもう正義じゃなくなる
★★★★★
これは正義じゃないと思うことがひとつある。それは、事前に正義を決めつけることだ。
★★★★★
人間は完全な正義を理解できないし、知りようもない。それはどうしようもない現実だ。でも、そんな何が正しいかわからない世界の中でも、それでも「正しくありたい」と願い、自分の正しさに不安を覚えながらも「善いこと」を目指して生きていくことはできる。きっと僕たちにはそれで十分で、むしろ、それこそが人間にとって唯一可能な主義なんじゃないだろうか。
★★★
構造主義=システム主義
★★★
矯正したければ、「他者の視線」を意識するように刷り込む
Posted by ブクログ
飲茶氏の著作の中でも、ストーリー性が高く、ライトノベルのようなノリで読める。
かつて正義のヒーローを信じていた少年、正義(まさよし)だが、高校生となった今では、正義とは何かがわからなくなっていた。学校の倫理の授業では、「平等の正義」、「自由の正義」、「宗教の正義」という3つの考え方があるという。その、それぞれの主義を支持する3人の女子高生たちに翻弄されながら、正義(まさよし)は自分なりの答えを見つけ出していく。そして、最後には衝撃の結末が…。
善い
たまたまネットの記事で目にして面白くて買った
正義とは何かって考え出したらキリ無いものに1つ提案してくれる本だった。
本をあまり読み慣れてないいない僕でも分かりやすく読むことができた。
簡単には哲学に触れてみたい人にオススメします。
是非最後まで読んでほしいです。
哲学 生き方の本
内容としては三つの正義に分類して小説仕立てで進行、解説をして話を展開していきます
内容は哲学のここがコアだ!って感じで要点をたやすく理解できます
ただ一般的な哲学入門書のように一人ひとりの哲学者を網羅的に説明しているわけではないので、そこは注意してください
でも何を隠そうが取りあえず呼んでて楽しすぎます!ためにもなります!
読めばわかる!
Posted by ブクログ
正義とは何かというテーマに高校生たちが議論を重ねていく内容なのですが、「あした死ぬ幸福の王子」同様、物語調で進んでいくため楽しく読むことができました。
正義とは何かと問われると、個人的には「それぞれの価値観」という結論にいたります。育ってきた環境、生まれた国の文化、今まで学んできたor見てきたもの、皆それぞれ違う道を歩んできたのですから価値観もバラバラでしょう。ですから、その人が持つ価値観を大切にしていきたいなと思いますし、自分も大切にしたいなと思います。
ただ、その価値観を持ちつつも、他人から「それは良くないよ」と言われたことに対する柔軟さは持っていたいなとも思います。自分の持つ価値観によって人を人を傷つけてしまったり、嫌な思いをさせてしまうこともあるからです。結構、人に言われて気が付くことって多いですから。
なんか矛盾したことをいってみたいですが、多様性が叫ばれる今、自分の価値観・正義という芯のようなものは持っていたいと思います。
Posted by ブクログ
誰もが、それぞれ自分の正義を持っている。
そして私にも当然、私の正義があった。しかし正義って一体何?改めて問われると明確な言葉に困る。
国家間、宗教、果ては隣人とのトラブル。どこにでもある諍いに、個々の正義がある。もう、頭の中が混乱してしまう状況に陥る読書であった。
全て読み終えて、良い読書であったのは間違いなかった。
Posted by ブクログ
とても面白く、難しい哲学の思考がポップに書かれており、読みやすい本でした。読みながら、自分は誰派?という考えを真剣に考えたし、これまでの自分の考え方についても客観的に問い直すことができました。
ラストも意外性があって面白かったです。
Posted by ブクログ
いい本には間違いないし、「正義の判断基準は平等・自由・正義の3つ」など覚えておきたい部分がたくさんあるものの......
めんどくせぇ問いを考える人しかいなさすぎてお近づきになりたくねぇという感想しかない。
ラストは好き。
Posted by ブクログ
倫理ちゃんと正義くん他、学園ドラマのラノベ風の仕立てもそれなりに抑揚のあるストーリーで楽しめた。その娯楽性のある初心者向け目線で、哲学を学べるという内容。例えば、学校をパノプティコンのように監視できるようにした方が良いか、などのテーマをベンサムの功利主義的視点で考えてみようというような。
ー ソ連以外の共産主義国家もそうですが、共産主義、つまり、平等の正義を旨とし全体の幸福度の最大化を目指す国家は、だいたい強権的で抑圧的な政治体制になる傾向があります。これはなにも、共産主義者が悪い人だからという短絡的な話ではなく、「平等の正義』を実現するには、どうしても強権と抑圧が必要になってしまうからなのです。彼ら共産主義者は主張します。人間なんて自由に活動させていたら、必ず勝ち組と負け組が生まれ、富裕層と貧困層が生まれ、他方が一方を奴隷にするような不平等な状況が生まれてしまう。
ー 功利主義が、その性質上、つまり恵まれた人の権利を抑圧して最大多数の最大幸福を達成するという目的を持っている以上は、強い権力を持つ必要があり、共産主義国家と同様、パターナリズムの問題が生じることは避けがたい。
ー ミルが「危害原理』を導き出した論理はこうです。
(1) 民主主義は、多数派の好みで法律が決まるため、少数派の好みが制限されがちである。これを『多数派の暴虐』と呼ぶ。
(2)『多数派の暴虐』が行われると、個人が自由に自分の好み(幸福)を追求できない社会になってしまう。そこで、『危害原理』を提唱する。
(3)『危害原理』とは、「他人に危害をくわえないかぎり、好きにせよ』または「他人に危害をくわえていないのに、人の自由を制限するような法律を作るのは不当だ』という国家運営の原理原則のことである」
ー 絶対的に正しい、絶対的に善い、といったものが、ちゃんとこの世には存在するんだよ」という考え方のことである。この主義を唱えたのが、かの有名なソクラテスだ。
ー とにかく、イデア論は「人間が存在するよりも前に、善という概念が宇宙に存在していた』という立場だということ。賛否はともかく、プラトンは、そう主張をしたということだ。
ー 「さて、今の話で見過ごさないでほしい大事なポイントは、ポスト構造主義が『構造主義から抜け出せなかった』という部分である。つまり、人間が構造(システム)に支配されているという部分については、ポスト構造主義も変わらず同意なのだ」え、そうなんだ。構造主義の身も蓋もない人間観は、次の時代で否定されてるわけじゃなく、現在も継続中なんだ。「では、ポスト構造主義は、構造主義と何が違うのか。それは、『構造主義がわずかに持っていた希望を打ち砕いたこと』だと言ってもいいかもしれない」構造主義が持っていた希望?「構造主義は一見すると、人間の主体的な意志を軽視した非人間的な思想に思えるかもしれないが、実は、こんな希望を見出すことができる。『自分たちが生きている社会の構造をきちんと把握しよう。そして、その構造上の欠陥を見つけ出し、それを修復してもっと豊かで幸せな未来を作り出そう。
上記は抜粋だが、こんな感じで勉強になるし、考えさせられもする。やはり気になるのは、構造主義であった。
Posted by ブクログ
大好きな飲茶先生、個人的6冊目。これまで読んできた作品と異なり小説テイストで進む、正義とは何かについての講義。漠然としていた"正義"という言葉が自分の中で鮮明になった気がします。ストーリーの方もラストはまさかの展開すぎて驚いた一方、それまで語られてきた内容に矛盾のないオチだったので納得したし爽快でした。
メモ…平等の正義(功利主義)、自由の正義(自由>平等、愚行権)、宗教の正義(直感主義、イデア)
Posted by ブクログ
3つの正義についてそれぞれの登場人物の主張、考え方が分かりやすく面白い。何より最後の展開はあまりにも衝撃かつ想定外で、この本が何を伝えたかったのかがよく分かった。自分の考え方を前向きにしてくれる一冊。
Posted by ブクログ
哲学について噛み砕いた説明でわかりやすかったです。特に3人の女の子たちのバックグラウンドから、それぞれの正義については考えさせられる点などがあり、明確な答えは出ないけど、それぞれの思う正義を目指して社会を生きていく必要があるんだなぁーと。
しかし、、、最後については衝撃的すぎました。これも私の偏った価値観からなのでしょうか?なんとも考えさせられます。。。
Posted by ブクログ
自分の考えを考えさせられる本だった。倫理という、答えのない問いに対して、どのように考えるかを教えてもらえた。正義とは、何か。そして、それを紀元前から考えられ、そして次第の変遷と共に変化して今もなお答えのない問いを考えている。けど、答えはシンプル。これは、手元に置いておきたい一冊だった。そして、最後の落ちはいただけなかったので星4。
Posted by ブクログ
「考えても仕方のないこと」「正解がないこと」と思考停止していたことに気づき、考える道筋を与えてくれる本。久々に深く考えさせられた。時間をおいて何度も読みたい本。
Posted by ブクログ
功利主義、自由主義、直観主義(宗教)、構造主義ら辺を学園ものの物語演出で解説
今回も難しいことを大胆に非常にわかりやすくまとめている
個人的にはこの演出は逆に読みづらいけど、このカタチでまとめるのも凄いと感じた
Posted by ブクログ
正義の3つの体系
平等=功利主義 自由=自由主義 宗教=直観主義
【功利主義】:ベンサム ミル 最大多数の最大幸福
【自由主義】:幸福よりも自由優先
●やってはいけない愚行=総ては自由でなく、将来の自分を縛ってしまう現在における行動
●無知のヴェール=ジョン・ロールズ「正義論」、自分の全ての特質を忘れ真っ白な状態でどのような世界を作るか、という思考実験 その結果「自由原理」「格差原理」が万人共通の正しさと浮かび上がるだろう←功利主義と自由主義の二つが浮き彫りになってくる
【直観主義】:
●ヒュームのギロチン=「である」論をいくら展開しても「べき」論は導出されない よって「直観主義」により、「絶対」、「宗教」、「正義」等を認める
●哲学の歴史
○絶対主義(ソクラテス 絶対的に正しい、善いと言えるものは存在する)
対
○相対主義(すべて相対的なものに過ぎない)
○イデア論(プラトン 絶対的で完璧な善の概念が世界に存在している)
対
○原子論(世界なんて小さな粒(原子)の集まりに過ぎない)
○実在論(絶対的で普遍的な善は世界に実在している)
対
○唯名論(社会にとって都合が良い行為に「善」という名前を付けただけ)
○合理主義(デカルト 合理的に考えれば絶対的な善の存在が証明できる)
対
○経験主義(善なんて経験から作られた人それぞれのものに過ぎない)
以降は下側のみ(ニーチェが終止符を打った 「善」などは民衆を大人しくするために作られた概念)
○実存主義(ニーチェ キルケゴール ‥‥)
○構造主義
○ポスト構造主義