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Posted by ブクログ
京極堂シリーズ、中禅寺敦子と呉美由紀の冒険、第2段です。なんと今回は多々良先生も加わります。お久しぶりで相変わらずの人の話を聞かない感じ、好きですね。
今回のシリーズは3大妖怪とよばれる鬼、河童、天狗が題材なので、妖怪のうんちくが面白いです。わからないことも多いですが、面白いです笑
この厚さのページ数では河童の一部しか書かれていないのだと思いますが、多々良先生のおかげで京極さんがいるような蘊蓄が聞けて面白かったです。ただし、京極さんの語りより読みにくいのですが、多々良先生の語りは・・・
Posted by ブクログ
クイズ正解者の名前が作中で使われているなんて面白い企画。冒頭から女子高生が河童と尻の話をしているのはちょっとウケる。第五福竜丸、原子力の平和利用の話などがあり、ある程度現実世界と地続きなのだと実感した。磯部が指鉄砲で撃つ真似をして増田がそれを受けて打たれたふりをし、それを敦子が冷めた目で見ている場面はくすっときた。
Posted by ブクログ
3ヵ月連続刊行の『今昔百鬼拾遺』シリーズの第2弾。前作の「鬼」に続いて、今回は「河童」だという。「鬼」と同様に、「河童」も日本人には馴染みがあり、ステレオタイプのイメージが出来上がっているが…。
序盤から、呉美由紀と級友たちの河童談義が延々と続くが、どうやら覗き魔が出没しているらしい。男が男の尻を覗くのだという。その理由は読み進めばわかるが、本題に入るまでが長いなおい。一応、河童談義にも意味はあったわけだが。
一方、中禅寺敦子は、薔薇十字探偵社の益田から相談を受けるのだが、益田の話がとにかく要領を得ない。キーワードは、「宝石泥棒」と「尻」?ん?「尻」でさっきの話と繋がったのか?千葉県の川で、尻を出した男性の遺体が発見されたとか…。
河童の話なのか尻の話なのかどっちやねん。河童が尻小玉を取るという伝承は聞いたことがあるけども。美由紀が木更津に帰省中、従姉妹を訪ねると、そこになぜか多々良勝五郎先生が現れる。京極堂シリーズっぽくなってきたじゃない。
多々良先生は「稀譚月報」の取材で来ていたため、結局敦子も千葉へ出向き、そこで美由紀と会うことに。事件の発端は、戦後の混乱に乗じた悪巧みにあるようなのだが、尻を出した死体ばかりがどんどん増えていく。いや、笑っちゃいけないのだが。
すべての真相は、ある場所にあった。戦時という時代背景があるにしろ、現代にも置き換えられるテーマだろう。このような境遇にあって、彼の心の根底にあったのは…。偶然の産物とはいえ、これは肝が据わった悪党でも驚いただろうなあ。
今回の舞台装置は、京極堂シリーズ本編用にアレンジすることも可能だったのではないか。手ごろな文庫にまとめたのは、嬉しいような惜しいような。前作よりもシリーズの「らしさ」が増えている感があり、今後がますます楽しみになってきた。
それにしても、夷隅川って本当にものすごく蛇行しているな。
Posted by ブクログ
ひっさびさの京極夏彦先生
社会人の時に読むのが疲れて長いあいだ手にしてない
登場人物は新しい人主役であるものの、時代も関係性
も昔のまま、古本屋店主・薔薇十字探偵社をとりまく
世界ですんなり読める
事件はすんなりではない、登場人物の語りが右往左往
して本筋をわざと外し続けて嫌気がさしたと読んでい
ると、実は関係があったという陥穽まみれの作品
だって、京極夏彦だもん
この設定を考えた作家の力は凄い (´・ω・`)
Posted by ブクログ
百鬼夜行シリーズのスピンオフ。
「鬼」に続き、テーマの妖怪の知名度に比べ、事件の大きさと謎は本編と比べて控えめ。
田園風景が続く場面では、少し間延びしてしまった。
河童の正体と、犯人というか仕掛けの怪しさはさすが
Posted by ブクログ
今昔百鬼拾遺シリーズの2作目。「鬼」に続いて「河童」である。タイトル通り「河童」についての談議が冒頭で繰り広げられるが、女子学生が黄色い声で河童談義を長々と続けているのは、いかにもリアリティがない。戦後間もない頃、という時代設定であったにせよ、女子学生がそれぞれ己の出身地に伝わる河童像や逸話を披露しあうとは思えない。この部分がそれほど長くなく、物語への導入として簡潔に語られたのならまだよかったのかもしれないが、いかにも長く続く談義を読まされると違和感を覚えるのみである。
物語は、薔薇十字探偵社の探偵と中善寺敦子が邂逅し、それぞれが追いかけている事件の話をすることで、互いの事件は呼応し、さらにそこに河童が絡んでくるというものだ。これらの事件を追いかけるのは、一作目に続き中善寺敦子と主人公の一角を務める呉美由紀だ。妖怪研究家の多々良も加わり、ドタバタ劇の雰囲気をまとって物語は進んでゆく。
一作目の「鬼」はそれほど際立ったキャラクターはいなかったように思うが、今回は薔薇十字探偵社の探偵である益田にせよ、やたらと喚く妖怪研究家多々良にせよ、いずれも賑やかだ。特異なキャラクターを持つ彼らの登場は、京極夏彦の真骨頂である(と思っている)京極堂シリーズを髣髴とさせる。懐かしさを感じながら読み進めることができた。
明治維新以来、打ち続く戦争の集大成たる第二次大戦(物語の中では「先の戦争」と表現されている)で日本は破れ、国内は混沌と化した。敗戦、降伏、GHQ占領という混沌とした社会の中で、どさくさで発生した事件が端緒となり、河童になぞらえた水死体が揚がる。尻子玉を抜くという河童にちなんで、やたらと「尻」にこだわりながら、事件は端緒となった7年前の宝石にまつわる出来事と関連し、それらの因縁を解きほぐしながら大団円に向かう。京極作品のいわば定番化されたプロセスであり、読んでいて安定感はある。
本作では、物語に戦後の社会問題となった事件や時代背景が織り込まれている。これらは奇想天外とも思える物語にリアリティを与えることに寄与している。第五福竜丸、差別、女性の社会進出……いずれも河童と絡み合いながら、大団円を迎えるための重大なパーツとなっている。冒頭の河童にまつわるガールズトークにしても、日本各地に伝わる河童伝承をまとめたものと読めば、河童に関する百科事典としての読み方もできるかもしれない。
返すがえすも、なぜ河童伝承をガールズトークの形式で語らせたのだろう。しかも、物語の冒頭で。内容が奇想天外なのは京極作品の特徴だし、テーマである「河童」が物語の通奏低音となっていることも理解できる。だが、これが仮に明治時代の物語だったとしても、さすがに15歳、16歳くらいの女子学生が河童談義をし合い、長広舌を繰り広げるであろうか? 本来は、このトークは中善寺明彦の役回りのような気がしてならない。