あらすじ
キャリア60年超のレジェンドによる
夢をもって立ち向かうための役者論
新劇の俳優が外画の吹き替えを担当することからはじまったとされる声優ブーム。それから約半世紀、若者の人気「職業」にまでなった声優。業界のかたちが整い、より大きくなったものの、華やかさの影には厳しい現実も待ち受けています。「うまくやろうとするな」「売れるのが唯一の価値観か」など、成功法則のない業界だからこそ必要なスキルと心構えを、「ばいきんまん」「フリーザ」でおなじみのレジェンドが語り尽くします!
【目次】
1章 声優の現場
声優という仕事
アニメ業界の収録日
オーディションが基本
「ウェイト」が大切
事務所に所属するには
キャスティングボートを握るのは
アフレコの現場
マイクワークという連携
ギャラと待遇
現場には直行直帰
声優の立ち位置
「フグの毒」と「役者の看板」
2章 役者として 1
5歳でデビュー
仕事ばかりしていた小・中学生時代
声の仕事はやりたくない
役者は生活するための職業ではない
新宿二丁目に店を開く
芝居のチケットが売れるはずがない
フォー・イン・ワン結成
あんた、なにがやりたいの?
81プロデュース
3章 声の演技
人に教えるなんてまっぴら
教えることで自分の芝居がわかる
うまくやろうとするな
「ふつう」を見つける技術
「役づくり=声をつくる」という誤解
いい声じゃなきゃダメ?
演出を見よ
演技は「呼吸」で決まる
4章 役者として 2
食えるようになる
ラジオが面白かった
歌手・中尾隆聖
ばいきんまん登場
復活のフリーザ
キャラクターが育っていく
洋画の吹き替え
ドラマティック・カンパニー
なぜ芝居をやるのか
最後のワンピース
声優はいつ引退するのか
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「ばいきんまん」やドラゴンボールの「フリーザ」
の声で知られる著者の仕事論です。
「声優」という職業さえも確立されていなかった
時代から、どのように自分の中で折り合いをつけ
て仕事に向き合ったのか。
今でも名作として語り継がれる作品に対して、
それぞれの役にどのように向き合ってきたのか。
プロフェッショナル魂を学べる一冊です。
Posted by ブクログ
自身の生い立ちをあっさりとした文章でサラッと書いてますがなかなか波乱万丈です
5歳で「フクちゃん」にて声優としてデビュー
母親が5〜7回結婚
中三で一人暮らし
18歳で新宿二丁目に店を持つ
弾き語りで稼ぎながらも演技を続け結婚
ドラマ化して欲しいくらいの内容です
声優は役者の下、講師は役者をリタイヤした現役では無い人がやる物という思いを抱いていた若い頃の事も描かれています
バイキンマンの印象が強いので変わり種の声を出される方位のイメージだったのですが物凄く真摯に演技に取り組んでいるのが伝わって来ました
「何も悪くないよ、たまたまだよ」
「性格悪いから役者やってるんだよ」
オーディションに落ちたり性格に難有りの若手への言葉がとても良いです
Posted by ブクログ
ライターがいい仕事をする人だなと思った。声優という仕事の要点がきちんと伝わるようにまとめられている。それだけでなく母親が結婚離婚を繰り返した奔放な人で祖父母に可愛がられて育った、若いころパトロンの出資で二丁目で店を経営していたが円満に卒業して役者仲間が集まるようになったら潰れた、なんてエピソードは声優と関係なくても中尾氏の人となりが伝わる重要なエピソードだ。
「演技」「普通」の捉え方、息を最初に考えるということは朗読・音訳活動者にも役立つ。
P15 洋画吹き替えやゲームなどでは「抜く」ということはあります。いわゆるそのキャストだけ別取りすることです。声をあてるのが声優ではない場合、どうしてもスケジュールが合わなければ別録りということになります。【中略】「マイクワーク」というのが、声優以外では難しく、かえって一緒にできない理由でもあります。
P21 私、いつも言っているんです。「オーディションは落ちて当たり前」 とても頑張っている、私もいいなと思う人たちに対してです。それでもオーディションは落ちるんですから。なぜって、実力がある人が上から順番に格付けされていてそのとおりにキャスティングされるのならオーディションの必要なんてないんです。一つの作品は様々な要素が組み合わさって一つの世界観を作ります。そこに必要な人が必要なだけ参加するんです。だからいちいち落ち込むことはないし、必要以上に自信を失うこともありません。【中略】「自分の何が悪かったんですかね」「何も悪くないよ」「じゃあなんでダメだったんですかね」「たまたまだよ」そういうことだと思っています。
P114 演技においての「普通」とは、実生活の「日常」を指しません。勉強中の若い子はそこで勘違いしてしまうことが結構あって、本当に普段通りにしゃべってしまう人が多くいます。普通にしゃべっているように聞かせるためには技術を身に着けなくてはいけないということがなかなか伝わりづらい。
違和感のない、作品やキャラクターに合わせた声の出し方、口調は毎回探さなくてはいけません。私は「匂いを探す」という言い方をすることもありますが、演技におけるナチュラルは全部異なります。
P116 表現に関わる人はわりと「自分は特別」という自意識があって、言ってしまえば性格が曲がっている人たち、はみ出し者…言い過ぎですかね、ともかくそういう人が昔は多かった。今の人たちは一定の型にはまろうとしている節があります。
P136 実際の俳優の粋を盗む、そのうえでそれを再現できれば、英語から日本語に置き換えてもきちんとしたセリフになります。いつもレッスンでは息を合わせることをやっています。合わせることができれば逆に外すこともできる。
P138 陥りがちなのは「言葉ありき」「セリフありき」でやってしまうこと。言葉やセリフを細かく見ていくと、息を吸って、吐いて、声帯をふるわせて、音になり、それがつながってはじめて言葉になる。でもそれをはしょって言葉のことばかりかんがえていると、呼吸がおろそかになってしまいます。【中略】最近のアニメの作画には極めて質が高く「絵の演技」が相当にレベルが高く、受け取る情報が多いものもありますが、それはごく一部で、やはり現実の身体とは異なります。それこそ「命のないものに息を吹き込む」ということだと思います。作品の世界観を理解すること、キャラクターの人物像を理解すること、そして、演出をきっちり見ること。そのうえで「息」を作る。
Posted by ブクログ
中尾さんのトークショーを聞きに行ったので
読んでみようと思いました。
声優界のレジェンドでありながら
謙虚で気さくな人柄が伝わる本でした。
またバイキンマンやフリーザなど誰もが知ってるキャラクターをやるまでの裏話などとても興味深く面白かったです。
ご苦労もあったことと思いますが
本当に演じることが大好きで
楽しんでおられるんだなと思いました。
私は声優を目指しているわけではないけれど
生きていくうえでその生き方や取り組み方には
学ぶべき所が多々あります。私も人生を楽しみたい!
個性的で魅力ある中尾さんにはこれからもずっと活躍していただきたいです!
Posted by ブクログ
ベテランながらも丁寧に話すような書きっぷりに好印象(ただし、脳内では、ばいきんまん、あるいはフリーザの声で再生)。後半にオールナイトニッポンをよく聴いていたという話が出てきて、私自身も若い頃聴いていたなと思いだした。調べたら今でも続いてるんだなあと感慨深かった。
Posted by ブクログ
声優という職種業界を目指す人は多い。毎年養成所から多くの新人が輩出される。さて、本著では声優業界の大御所である中尾氏の目線で語られる声優という仕事と、声優を目指さない人に向けても書かれた良書である。
本著では、声優に成功法則はないと説く。有名無名問わず、皆オーディションは受け、安定しないと中尾氏は主張する。そして、オーディションに落ちても気にしないことも説く。自分の演技や表現を日々磨き独力し行動し前のめりで掴む姿勢が必要である。
声優という職業は生涯修行し安定はなく正しい努力と行動と運が必要である。多くの声優を目指す人の傾向としては、既存声優のものまねをしようとする人も少なからずいる。それらは悪手であり、声優という業界はあなたの唯一無二の声での表現を望んでいることを知らなければならない。
声優はなったから成功ではなく、声優(舞台付随するもの全て)として仕事がなければ廃業である。成ることも続けることも厳しい世界ではある。が、挑戦する価値のある魅力的な世界である。多くの演者、関係者、作者、作品、舞台などを通して表現の幅を広げることも出来る刺激的な世界である。
華やかな世界に見える一方で、厳しい世界でもある。それは、どの業界業種であろうが同じである。声優に興味がある、やってみたいという気持ちがあるのであれば、積極的に挑戦することをすすめる。挑戦してみることで得られる経験値は大きい。
これから声優を目指す人、声優になっている人、関わっている人、社会人の人に向けて、挑戦とは何か、覚悟とは何か、続けることとは何か、他人軸では無く、自分軸で決断し行動することをすすめる良書であるといえよう。