あらすじ
終末は永遠の滅びか、永遠の救いか――? 新約聖書の最後で世界の終わりを暗示する「ヨハネの黙示録」。歴とした正典ながら謎のメッセージとして不吉なイメージを背負う問題の書。「七つの○○」「666」「大いなるバビロン」……その強烈な個性は絶えず異端視する声を喚び、独特なカタルシスを生む。ギリシア語原典からの全訳に加え、訳者と図像学者による解説をそれぞれ収録。(原本:岩波書店刊、1996年)
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Posted by ブクログ
新約聖書正典の最後の書にして、キリスト教黙示文学の代表格である『ヨハネの黙示録』の邦訳。数々の幻視を通して示されるこの世の終焉と新生の預言を、詳細な注記と解説、多数の図版と共に収録する。
本書は、1996年に岩波書店から刊行された単行本(新訳聖書翻訳委員会『ヨハネの黙示録』)の文庫版である。『ヨハネの黙示録』の日本語全訳を注記と解説、そして黙示録の光景を描いた歴史的な図像を付けて収録するほか、キリスト教図像学者の石原綱成氏による解説『「ヨハネの黙示録」の図像学』を収めている。
紀元1世紀後半――ローマ帝国による迫害の時代に著されたと目される『ヨハネの黙示録』。艱難の中で衰微と棄教の危機にある信徒達に対する応答として編まれた本文書は、今日でも様々な場所でモチーフとして援用される印象的な幻視(イメージ)を描き出している。天の玉座とその袂に立つ異形の子羊、七つの封印と地上を襲う諸々の災い、赤き竜とその僕たる二匹の獣、そして最後の審判――。それらが示すのは悪(「大いなるバビロン」=ローマ)の滅びと新世界(新しきエルサレム)の到来という希望、救い(信仰)か破滅(棄教)かの二者択一、歴史を支配する神の恵みの摂理である。本文庫では(「歴史的・批判的釈義の観点から、原文の意味に最も合致する」という視点から)各々の幻視が何を意味しているのか、その背景にあるものは何なのかを平易に注解しており、難解な黙示録の世界を分かりやすく紹介している。文庫という形式も相まって、黙示録の世界に触れるのに最適の書と言えるだろう。