【感想・ネタバレ】閻魔堂沙羅の推理奇譚のレビュー

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 第55回メフィスト賞受賞作。この賞の受賞作すべてをチェックしているわけではないが、自分が読んだ範囲で述べれば、とんがった作風が多いと認識している。完成度よりは将来性を買い、多くの若き才能を見出してきたのは、事実だろう。

 さて、本作である。文庫のレーベルである講談社タイガから刊行された本作は、デビュー作であることを考えれば、完成度はかなり高く、文体もこなれている。いかにもラノベっぽい装丁を見て、避けてしまうのはもったいない。

 殺された人間が気がつくと、目の前にいたのは閻魔大王の娘、沙羅だった。ルール上、情報は教えられないが、自ら犯人を推理するのは自由だという。見事犯人を推理すれば現世に蘇り、わからなければ地獄に落ちる。沙羅曰く、手持ちの情報だけで推理は可能だという。制限時間は、たったの10分間…。

 聞いたことがあるようなないような設定だが、固定フォーマットの4編を収録している。1編だけ例外を含むが、それについて詳しくは触れない。それぞれに不本意な最後を迎えた4人の、人間模様とこれまでの人生とは。

 いずれも長編ネタにできそうだが、あっさりすぎずくどすぎず、平易でも難解でもなく、各人物を描き出す手腕は、なるほど新人離れしている。クライマックスの沙羅との推理勝を読むと、情報が過不足なく与えられていることがわかる。

 推理の部分に無理や飛躍がないので、納得度も高い。納得できるミステリーというのは、意外と少ないものだ。言い換えれば、アクがなく、メフィスト賞らしくない気もする。その点で評価が割れる作品かもしれない。無理や飛躍は、むしろ魅力の一部になり得る。

 それでもやはり、うまさは認めなければならない。なかでもある1編は、個人的には強く訴えてきた。メフィスト賞でこんなのずるいじゃないか。最後に出てきた、元暴走族の義理堅い若者も捨てがたい。そういうやり方はあまり感心しないが…。

 このシリーズには、早くも続編が刊行されている。本作を読み終え、早速入手した。著者の看板シリーズになるかもしれない。既に優れた短編作家だが、この方なら長編でどんな作品を書くかも興味深い。要チェックな作家が、また1人増えた。

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2018年06月01日

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2021/7/29
ドラマの予告だけ見て存在を知り読んでみた。
面白かった。
閻魔様の娘はとてもかわいいな。
こんなに生き返らせて怒られない?
記憶なくなってもみんな人生が好転してて読んでる私も幸せ。
続編も読まないと。

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2021年07月29日

Posted by ブクログ

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ネタばれあり。感想が遅くなってしまった・・
メフィスト賞受賞作。本書は、何ともなくネットを見ていて、たまたま見つけたもの。正直に言って、表紙がかわいかったので購入。

閻魔大王の娘である沙羅が、死んだ人間に謎解きのゲームをもちかける。これで負けるということは、自分を殺した犯人や真相が分からないままにさらに地獄に行くということだから、辛いものがある。しかし推理することができれば、何と、死の寸前にさかのぼってよみがえることができる。確かに、(ほかに同様の話があるのかはわからないが)ありそうでなかった設定である。おなじみの天国と地獄のイメージに沿った世界観なので、舞台設定の説明にも理解にも時間がかからないと思った。

本書には4篇の短編が収められている。それぞれ、さまざまな年齢・性別・境遇の人物がさまざまな死因で亡くなる。「凍死」「老衰」など、いぶかしげなものもあるが、どれもストーリーは読みやすく、一読ですっと頭に入ってくる。

閻魔の娘たる沙羅は、勧善懲悪・因果応報の理などは本来、人間の世界にはない、無関係のものであると言っているし、確かに彼女自身は推理ゲームをしたそれぞれの人間に特段の思い入れもないのだろうが、しかしその言葉とは裏腹に、各短編において、それぞれの人間たちは彼らなりにひたむきに生きてきたことが報いられるかのような結末を迎える。
この点、個人的には、推理小説の読後に少しでもいやな気分になるのはあまり好むところではないから、とてもよかった。2話目などは、がんばってもどうしても仕事ができない会社員の話だったが、身につまされる箇所が多く、あやうく泣きそうになった。沙羅も、一見冷徹で人間ごときの運命に全く興味がないように描かれているにも関わらず、なぜか、どこか人間味もあり、温情的にも受け取れる。

ただ、死後、もし本書のように、あらゆる人間の行動が何者かによってすべて記録されていて、評価・判断されるというのなら、そんなに楽なことはない。正しいことをしていても、努力をしていても、うまくいかないし悲惨な目にあう可能性もある。その意味で、やや、ご都合主義的なストーリーのように感じられてしまう向きもあるだろう。また、伏線がわかりやすく、展開が読みやすいと感じることもあった。

それでも、本作のストーリーは人を惹きつけるものがあるし、このアイデア1つで、まだ色んなバリエーションの話を創出できるのではないかと思う。また、お気に入りのシリーズが1つ増えたので、嬉しかった。

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2021年06月20日

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黒髪のショートカットに虹彩の強い瞳。
不似合いに大きな赤いマントを羽織った沙羅が口を開く。
「敗者復活・謎解き推理ゲーム。正解できたら生還、できなかったら地獄行き。」

父親と喧嘩して行くあてもなく、学校の部室にいた智子。後ろから首を絞めたのは誰?
仕事で失敗続きの浜本。焦って冷凍庫から出荷荷物を取ろうとした途端、棚が崩れ落ちてきて。誰の罠?
天寿をまっとうした聡子の最後の願いは。
子供のころからの乱暴者、でも曲がった事の嫌いな世志輝。兄の電話で向かった先でチンピラ達に囲まれて。誰の差金?

それぞれが人生の岐路に立ち、沙羅の挑戦を受けて立つ。
彼、彼女たちの、その強い意志に沙羅がちょびっとサービスしてくれてる気がする。
何事も本人次第なのよって。
犯人はあっさりわかってしまうけど、読後が爽やか。

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2020年12月10日

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全部で4篇併録されている。
どの章から読んでも楽しめるし、推理小説だが、物理トリックなど、専門的な知識は一切必要としない。本文を読み解いていけば、解答は得られる。
ミステリィを幅広く読まれている方には物足りないかもしれないが、普段、読書をされない方や、ミステリィを読んでみたいと思う方は、本書を読んでみるといいかなと感じる。

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2019年01月17日

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「生き返るために自分を殺した犯人を推理する」というシチュエーションの短編4話で構成されたお話。
話自体には繋がりはないが、同じシチュエーションに対して、軸となる登場人物の考えや周囲の人々の想いが交わってくるため、同じ展開にはならない面白さがある。
しいて物足りなさを挙げるとするなら、どの話もきれいにまとまっている分、意外性がなかったところか。
また、どうしてもテーマからして説教くさくなる部分が強く感じられるのも気になるところ。ただ、これは作品の味でもあるので面白い点でもある。

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2018年06月09日

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死後人間の魂は閻魔様と対峙し、天国行きか地獄行きの審判が下される。
今は閻魔大王の娘・沙羅が代行している。

今回の4人の死者は日頃の行いで天国に行くことが決定していたが、死ぬ前にどうしても知りたい真実があった。
沙羅は「死者復活・謎解き推理ゲーム」を提案。
制限時間10分で、自身の推理で真実を解き明かせば生き返るが、失敗したら地獄行き。
そんな4人の短編エピソード(つながり一切ナシ)


「緒方智子17歳女子高生 死因・絞殺」
夜の部室で隠しカメラを発見し絞殺されるが、犯人を当てて生き返る。
犯人は部活顧問の先生で、動機は盗撮がバレたから。

「浜本尚太27歳会社員 死因・凍死」
会社の冷凍倉庫の荷物が崩れ意識を失い凍死するが、犯人を当てて生き返る。
犯人は同僚で、荷物が崩れるように細工した。

「門井聡子82歳無職 死因・老衰」
音信不通の息子を想い老衰で死ぬが、息子の消息を推理して当てる。
老衰のため1時間だけ生き返り、孫から息子の足跡を聞いて永眠する。

「君嶋世志輝20歳フリーター 死因・撲殺」
元暴走族がヤクザにタコ殴りにあって殺されるが、殺された理由を推理して生き返る。
幼馴染の友人が自殺したのを調査してたら実はヤクザが絡んでいた。

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2018年12月28日

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