あらすじ
『認識問題』、『シンボル形式の哲学』などの大著を完成したエルンスト・カッシーラー(1874-1945年)が、ナチスが台頭し、第2次世界大戦に向かっていく状況の中、最晩年に至ってついに手がけた記念碑的著作。国家という神話は、どのようにして成立し、機能するようになるのか。独自の象徴(シンボル)理論に基づき、古代ギリシアから中世を経て現代にまで及ぶ壮大なスケールで描き出される唯一無二の思想的ドラマ!
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
質量ともにヘビーで読み応え十分だった。
『シンボル形式の哲学』のカッシーラーが、主に西洋の各段階における「神話」思考や「国家」概念を読み解いていく。もちろん網羅的ではないが通史的な思想史のようにもなっている。
特にマキャヴェリについては、何章にもわたって詳細に検討されており、ここだけでもマキャヴェリ論として成り立つような精細な論述だ。自分もマキャヴェリ『君主論』をどう受容するべきかためらっていたので、これは参考になった。
英雄崇拝のカーライル、人種主義のゴビノー、至高性としての国家論のヘーゲルを経て、いよいよ全体主義国家が出現する。
1941年に書き始められた本書は、カッシーラー没後翌年の1946年に出版された。つまりナチスの時代を見つめつつ書かれたことは明らかであり、それならどうして「ナチスの現在」について「あとがき」だけででも言及しなかったのか、不思議な感じもする。
もっとも、「神話」の思考が、ふたたび「国家」のもとでゾンビのように復活しようとしているという、その危機感・絶望の気分で本書が綴じられているのは印象的だった。
そしてそのゾンビは、20世紀末頃から21世紀の現在に至っても、またもや復活しているのであり、該博な本書による分析を今、再読して考え直すことに、大きな意味があると思う。