【感想・ネタバレ】告白 あるPKO隊員の死・23年目の真実のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

NHKの取材班が、PKO隊員の死の真相を解き明かし、その死の意味を国民に問うノンフィクション。
やっぱりこういう本は読むのに覚悟が要ります。
けれど、当時の関係者たちに話を聞きながら、冷静に過去を掘り起こす文章は、とても読みやすいものでした。
だから余計に、意識的に読むことを中断して、自分なりにいろいろと考えました。

世界中から日本の国際貢献が批判を受けていたこと(金だけ出せばいいのか論)、国連の常任理事国入りを狙っていたことなどから、PKOの名のもとに自衛隊と文民警察官(丸腰の景観)とボランティアがカンボジアに送られた。
国民の関心のほとんどが自衛隊の海外派遣に向けられ、安全をアピールするために自衛隊は強力な根回しの結果、ごくごく安全の地域に派遣されたが、文民警察官とボランティアにはそのような配慮はなかった。
結果、ボランティアの青年1名と警察官1名が亡くなることになる。

そもそも政府は「停戦合意しているので安全だから」ということで、民主的な選挙を支援するために警察官を派遣した。
つまり、送る側も贈られる側もほとんど危機意識を持ってはいなかった。
だから事前準備なんてほとんどしていなかったと言っていい。
そもそも現地での滞在費用として自腹で100円くらい用意しとけとか、マラリアのワクチン接種も自腹だとか、送り出す側の正気を疑ってしまう。

命令は次々下されるが、現地の要求・要望はほとんど無視された。
そんな中、現地の責任者であった山崎裕人が行ったこと。

”そこで山崎が派遣前に行った危機管理は、七五名の隊員を八人の各班長のもと、最低でも班員の半数が同じ血液型になるよう半分けしたことだった。万が一、輸血が必要な事態に遭遇した際、日本人の同僚がすぐに付き添い、命を助けることができるようにという配慮からであった。”
これが唯一のリスク管理!
後は祈るだけ。

電気もない、水もない、食料もない、マラリアにならないために必要な蚊帳さえなく、もちろん武器もない。
防弾チョッキすら、体の前面しか守らず、それも拳銃に対してのみ。
カンボジアで普通に使われている小銃には何の効力もないものだった。
他国は当然体の前後を守る防弾チョッキと、防弾用のヘルメットを支給し、軍警察か群で訓練を積んだ警官が、それでも命がけで任務を遂行しているというのに、日本だけは本当の丸腰。

ボランティアの青年が殺されたとき
”政府は、今回の事件は散発的なものだとして、日本のPKO協力法が定めた停戦合意の順守など五原則は全体としてなお満たされているという立場を取っています。”

この時にきちんと事件について調査していたら、その後の悲劇はなかったと思う。
その後警察官一人が襲撃されるが、「武器を持っていなかったから助かった」と考えた本人とは逆に、国連側では文民警察官の武器携行が検討され始める。

なので山崎は隊員たちに撤収についてメッセージを送る。
”臆病と周囲から笑われようと、罵られようと構いません。われわれは戦場で勇気を見せるためにこの国に来たのではありません。平和を造り、助けるために来たのであって、本人たちにその気がないならば、旗を降ろして帰るしか選択肢は残されていません。”

これがきっかけとなり、山崎は選挙支援のミッションから外されることになる。

国際間のパワーバランスを肌で知っている理想主義者の国連職員・明石康は徹底的にカンボジアの安全を主張し、日本の弱腰を

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2022年11月19日

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