あらすじ
信州の丘の上にたつ小さな美術館「無言館」。太平洋戦争で亡くなった画学生たちの作品や遺品を展示している小さな小さな、美術館です。このいっぷう変わった美術館を作るために、遺族を探しあて、全国を旅して遺品を集め、金策にも走りまわった窪島誠一郎さんが、熱い思いを秘め、やさしく語りかける感動のノンフィクション。
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Posted by ブクログ
父の故郷の長野県上田市にあるので、一度行ってみたいと思っていた。設立者の窪島誠一郎氏にも興味があった。しかし、自分は何のためにここに行くのだろうか。絵に特別な興味のない自分が。
第一に、絵を描きたいという思いを持ちながら、戦争によって妨げられた学生たちがいたことを知るため。そして、自分が当時よりは恵まれた現代に生きていることを感謝し、日々を一生懸命生きるため。
第二に、戦争の愚かさ・悲惨さを忘れないため。窪島氏にとっては、戦争による両親の苦労を忘れないためでもあった。氏は戦時中は幼なかったため戦争の苦労は覚えておらず、五十過ぎまで戦争のことやそれによる両親の苦労を考えてこなかったことに後ろめたさを感じていた。
第三に、今も世界で行われている戦争で苦しむ人のために何かできることはないかを考えるため。彼らが生きる喜び(画学生にとっての絵を描くことのような)を持って生きられるように。
無言館の建設は戦争責任のある国が行うべきという意見。そうではなく民間でやることに意義があるという意見。窪島氏はそういう意見に振り回されず、自分のための仕事としてやることを決意する。
無言館完成の日に窪島氏の心に響いてきた戦没画学生の歌は感動的。