【感想・ネタバレ】おそれミミズク あるいは彼岸の渡し綱のレビュー

あらすじ

「ひさしや、ミミズク」今日も座敷牢の暗がりでツナは微笑む。山中の屋敷に住まう下半身不随の女の子が、ぼくの秘密の友達だ。彼女と会うには奇妙な条件があった。「怖い話」を聞かせるというその求めに応じるため、ぼくはもう十年、怪談蒐集に励んでいるのだが……。ツナとぼく(ミミズク)、夢と現(うつつ)、彼岸と此岸が恐怖によって繋がるとき、驚天動地のビジョンが"せかい"を変容させる――。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

例の『鬼談百景』と同じく、いつの間にか机の上に置いてあった本。
というか、この表紙にはぶっ飛びました。「な、なんじゃこりゃ!?」ってw
中身は異界が出てくる話なんですけど、この表紙の世界観はそれなんかはるかに凌駕する異界さだったもんで(泣)

もう読み始めから「こりゃ(ある意味)異界だわw」だったわけですけど、後半の展開が本当に(まさに)異界になるとは思いませんでした。
ものすごく乱暴な解釈するならば、『牡丹灯篭』の新三郎とお露を碇シンジと綾波レイ(エヴァンゲリオンの)に置き換えて。
本家の新三郎とお露の性愛で結ばれた関係を、碇シンジと綾波レイのほのかな恋愛の混じる友愛の関係(清い関係とでも言ったらいい?)に変え、さらにそれらの底にある世界観(異界)を加えた……、みたいな感じ?w
いや、わかりませんよ。
そもそも『エヴァンゲリオン』も『牡丹灯籠』もテレビで放送していた映画を見たくらいですから。

ただ、読んでいると「縁」という言葉が出てくるように。既存の色々な物語の世界観をつなぎ合わせ、(言い方は悪いですけど)もっともらしい「一つの物語世界」を構築しているという意味で、当たらずともいえども遠からずなんじゃないかなーと(笑)
ただ、後半(まさに)異界だった展開が、最後の最後、(ある意味)異界な展開に戻るとは思いませんでしたよ。

とはいうものの。確かに『牡丹灯籠』的な甘美な悲劇は今の時代、まずウケないでしょうからね。
ちょっと生温さのある日常という現実に戻る――というよりはこの主人公たちの場合は“たどり着く”――ハッピーエンドで締めないと今はダメなんでしょう。
ていうか、私も「甘美な悲劇」よりは、「ちょっと生温い日常」の方が絶対いいんですけど(笑)

あくまで特定の世代に向けて書かれている小説なので面白かったとは言い難いですが、こういう物語の書き方もあるんだなーと、そこは面白かったし。また、感心しました。

気になったのは、作者の文章。
実は出だし、舞台となる土地の風景を描写した、寄せては返すような反復のリズムの心地よさに「やけに上手い文章を書く人だなー」と感心して読んでいたんです。
ところが、ストーリーに入ったら、妙に普通の文章なんですよね。
それどころか、「そこでその言葉(単語)なの?」と感じる、微妙にズレた(ように感じる)言葉を使う文章が多々あったんですけど、あれは何なんだろう?
作者のプロフィールを見ると、ゲームプランナーやシナリオライターとあるので、あの舞台となる土地の描写力は、ゲームでその世界観を構築してきた賜物ということなんでしょうか?
作家のインタビュー本とかを読むの結構好きなんですけど、ゲームを作る人のインタビュー本も読んでみたいなーと思いました(あるのかな?)。

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2018年12月23日

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