【感想・ネタバレ】赤目姫の潮解 LADY SCARLET EYES AND HER DELIQUESCENCEのレビュー

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ネタバレ

見上げた夜空を、宇宙をおそろしいと思う理由が、少しだけつかめたような気がして涙が出た。

夢の中で《私》やそこにいた人、あるいは場面が次々切り替わるように、展開していく物語。
この体へ収まった、今日いまこの瞬間に認識している《私》だけが、《私》である必要はない。
どれだけ自由に振る舞っているつもりでも、それは誰かに操られているだけなのかもしれない。
《私》が存在していなけれぱ、他のすべてにも意味はない。けれど《私》と私以外は違うもの。

「わかった?/わかったから、もういい?」という問いかけが、第11章に何度か出てくる。
一度納得したつもりになっても、またすぐわからなくなる。生きている限り、「もういい」とはどうしても思えないのかもしれない。

哲学的で、意味があるようでないようで、心地のいい小説でした。

とりあえず登場人物は書き出して頭の中整理したくなるけど、曖昧なままでいい感じもする。

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2019年07月14日

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ネタバレ


「弾性って、英語だと?」
「エラスティック」
「そうか、なんとも偉そうな響きじゃないか」
第3章 より

無となることなど絶対にない。むしろ無を恐れるが故に、無用なデータまで貪欲に取り込み、概念をむやみに構築し続け、それらの破壊をまた極度に恐れるといった悪循環に陥る。この作用によって新たな理解を拒絶するメカニズムが完成する。
第4章 より

人間の心を持っていたら、人を襲ったりしないかもしれないし、いえ、持っているからこそ、人間に戻りたいという一心で人を襲うのかもしれないし

そうなの。どこまでの話かっていうのが、いつも一番難しくて大切なの。どこまでが認めなくてはいけない現実で、どこからは想像、それとも仮定の話なのか。
第6章 より

だから、すべてを仮想空間にしてしまったとたんに、もう自然なのか人工なのか、偶然なのか意図なのか、その境界どころか、違和感さえ消えてしまうんだ
第9章 より


シリーズ最終作は遥かナナメ上。最初は人称の形式を破壊しようとしているのかと思えるくらい歪なシークエンスと不確かな「私」。登場人物表はもちろんなし。何かで見ましたが(もしかしたら変わっているかもしれませんが)著者が一番気に入っている作品だそうです。
刊行は2013年。ZOKUでも思いましたが、以前はあえて使っていなかった固有名詞の引用も多かったように思えます。
想起したのは、HBOの『Westworld』の自我を持ち始めたAI。それから『攻殻機動隊』シリーズの電脳化、義体化が当たり前になったあの世界観。そういえば映画の1作目は人形使いが出てきましたし、脳や記憶をジャックする描写もありました。
いつかは機械が(人形が?)人間になる。はるか未来を予見するかのような設定は非常に新鮮でした。葛藤の向こう側を当然のように描かれている点に痺れます。

解説でも述べられていましたが、以前と同じキャラクターが登場するようなシリーズの続編ではなく、舞台設定や世界観を踏襲した過去編という位置付けだと思いました。
またぶつ切りに移り変わっていく思考は時間に縛られていないような印象を持ちました。人の持つ肉体、身体から解き放たれることは時間を超越することも示唆しているのかもしれません。

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2021年09月10日

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1,2作目は、主人公と喋るロボットがふしぎな国を訪れて、住人を観察したり事件に巻き込まれる話(キノの旅みたい)。おもしろくて一気読み。3作目もわくわくして読み始めたら、読者を突き放すストーリーでぽかんとしてしまった。とはいえ、前作にも見え隠れしてた“精神と肉体”、“生きているって?”というテーマが前面に出ていて、作者が本当に書きたかったのはこれなのだなと納得した。前作あるいは今までのすべての本がこの3作目のための装置みたいだと思った。
2人の旅をもっとみたかった気持ちもあるし、作者の哲学により深く触れられた実験的な3作目もよくよく考えれば素晴らしいし、悩んで星4つに。

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2020年09月10日

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ネタバレ

視点がめちゃくちゃ飛ぶし観念的で哲学的で「何これわかりづらい、オエェ」って感じだったけど、飛ぶのはそういう能力(視点を他者に移せる、操れる)というネタバラシでお陰でなるほど、とは思えた。
「存在する」とはどういう事か?をずっと投げかけられ続ける凄く不思議で理系視点な小説。

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2019年06月23日

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非常に難解。視点が飛躍し、場面も目まぐるしく移り変わるのでストーリーの説明、要約が不可能。

百年シリーズだが、どうやらミチルは登場せず、ロイディは犬となっている。意味がわからない。青目黒髪の登場人物は真賀田四季だろうが、他は?
マガタが作ったバーチャル世界なのだろうか?ウォーカロンの普及具合から見ても少なくともWシリーズよりも前の時間軸だと思われる。

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2021年03月02日

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ネタバレ

一気に話が飛んだ気がして、ミチルとロイデイは…?一応犬の名前でロイデイが出てきたけれど…
謎が多かった。
百年シリーズはこれで終わりなんだよな…

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2021年01月11日

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百年シリーズ3弾。が、時代も含め直接的なつながりが不明瞭なふわっとした感じの小説。時代医者篠芝、小説家鮭川、喋れない謎めいた美女赤目姫、マタイ、緑目王子、その父、シンディなど次々と意識が同調し追体験していく。人間とは的な話。人間は端末であり思考は信号、そんな解釈も。「貴方は誰ですか?」「そうね、私は、貴女以外の者です。でも、それも正確ではない。私は、貴女でもあるかもしれない。私は、この世界かもしれない」。。「人形劇は、まだ続いている」

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2020年08月23日

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百年シリーズ完結編。視点がぐるぐると入れ替わり、空間を飛び、時空を渡る。寿命や人間と人形の違いに言及しつつも、存在について考えることになる。自分がここにいると言えるのは何故か。何をもって自分とするのか、個人の特定とは。難しい。誰もが誰でもあり、誰でもない。
そんな世界の中で、瞳の色だけが当人たらしめる様な描写が面白い。

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2017年08月10日

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ネタバレ

解説者冬木糸一氏の『何がなんだかわからないが、すげえ』に激しく同意。

この人のサイト、気になる。。


前作、前々作のミチルが登場しないのだが、
人の意識がその個体にある=私たちのような状態 ではなく
別の意識によって体が動いたり、 他の人の体に自分の意識が入っていたり、、、 というあたり、前作の女王の実験によるものだろうか。。。
そこでかろうじて同じ世界観、という事は分かるのだが。。

本作、コミカライズされるそうである。
という事は咀嚼しきれたのか、作画担当者。。凄い。。

ミチルの短い単語の羅列も難解だったが、理論詰で説明されても難しい。作者、凄いなぁ。。

冬木氏曰く、『折にふれて読み返しているうちに、意味が分るとはとても言えないが、その内容が実に馴染むようになってきた。端的に言えば、とても心地よい作品だ。』との事。『凡人の身としては、振り落とされないように必死にしがみついていく』そうで、
再読する機会があれば、積極的にいこうと思う。。

Wシリーズも読んでみようか。。。

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2016年12月01日

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