【感想・ネタバレ】浄土のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

どの短編も意味不明の言葉はない。想像できないような非現実世界もない。質実、洗練された感じ。「きれぎれ」とは隔世の感がある。悲しみとか自嘲とかアイロニーが心の深いところに響いた。しっかり届いた。
とくに良かったのは「自分の群像」。会社世界が正確克明に描かれている。頂門の一針というべき至言が多々あった。「責任のない立場で正論を唱えるほど気持ちのいいものはない。」これにはただただ反省しきりであった。

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2012年07月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

語感と勢いというような文章でするする読める。独特。
登場人物はみんなくだらなく、みみっちく、その癖プライドは高そうな感じ(でもいかにもリアルに感じる)なのだが、突拍子もない展開でそいつらが揃いも揃って悲惨な目に遭いまくるというお話が多い。でもそれは懲悪ではなく自虐であって、突き放した白けた感じが漂う
石投げられてどぶに頭から突っ込んで意識を失うとか、突然現れた怪獣にスナックのごとく食べられるとか、頭がぐるぐる回転してちぎれて同僚にゴミ箱に捨てられるとか、ああ、こいつも自分も死なねえかな、今すぐ、みたいな妄想が書き連ねてある印象。どぶさらえは、ちょっと面白かった。

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2020年04月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

≪犬死≫
『夏以来、ひどいことばかりうち続く。例えば以前から知り合いで特にどうということもない関係だった男があたふたと忙しげに近寄って来たかと思うと、到底承知できない条件で仕事を依頼、その場で承諾を迫り、断ると大きな声で「ああそうですか」というと挨拶もそこそこに立ち去った。暫くして会合に出席するとその男が居た。彼は人前で私を意味なく怒鳴りつけ、そして急ににやにや笑うと顔を五センチも近づけて、例の話どうでしょう?と言った。私が返事をしないでいると、男は不意に忙しげに立ち去った。いまではほうぼうで私のことを恩知らずと言いふらして歩いているらしい』
けものがれ~を彷彿とさせる、苦虫を噛み潰したかのような冒頭。男は編集者、豚田笑子から、そんなだったらジョアンナ先生を訪問するとよいと勧められる。初めはプライドもあって行くのをためらっていた男だが、あまりにもひどいことが続くので、迷いつつもジョアンナ先生のもとを訪れることにするが・・・。
絶対に当たるとわかっている予言を聞くことは果たして意味のあることなのだろうか?

≪どぶさらえ≫
『先ほどから「ビバ!カッパ!」という文言が気に入って、家の中をぐるぐる歩き回りながら、「ビバ!カッパ!」「ビバ!カッパ!」と叫んでいる。』
町内会でつまはじきに遭い、誰もやりたがらないどぶさらえの仕事を押し付けられ、唯一、自分に憐みの目を向けてくれている(ような気がする)美しく聡明な富久縞さんの存在だけを希望とし、栄光の汚辱に耐える。

≪あぱぱ踊り≫
『俺は凄い人間なんですよ』
『ああそうなんですか』
<略>
『そうなんですよ。だから俺が凄いっていうことを俺自身がいつもわかれるように、こうして俺のファンの子らがいつも俺の側で踊って俺の精神を盛り上げてくれてるんですよ。』
すごいすごいと言う割には、何がすごいかと問うても教えてくれない男。町田氏の作品の中では、割と理不尽さが少なく、主人公がひどい目に合わずに終わる。

≪本音街≫
皆が本音を素直に口に出すために、一見無秩序に見えるも、意外に効率的に回っている街、本音街。
この街では誰もがしたい恰好をし、踊りたいと思えばいきなり踊ることも可能。

≪ギャオスの話≫
ギャオスという身長六十五メートル、超音波でものを壊しまくり、人間を食らう、とんでもない獣が東京都中野区に現れる。突拍子もない話の、意外にリアルな政府や世間の反応。かと思いきや、カメラを向けられたギャオスがポーズを撮る、など、一体どこまで真面目に読むべきなのかわからない。
『カメラを向けている間はギャオスは攻撃をしてこないと分かるや全国から多くの人がカメラを手に中野区北口に押しかけた。豪胆にもギャオスの足にもたれかかりピースサインをする痴れ者もあった。
 キャスターの田和辺六は「そこまでするのはどうでしょう」と眉をひそめて発言、懸念を表明したが果たして惨事は起きた。』
この辺りや、首相のアメリカへの軍の要請をすべきかの葛藤(どうしようとも結局非難されるというやるせなさ)などは妙にリアル。
≪一言主の神≫
口に出しただけで具現化することのできる(但し、すでにこの世にあるもの以外)力を持った一言主の大神を屋敷に迎え入れた天皇の末路。
≪自分の群像≫
とんでもなくボンクラな同僚のせいで割食ってた会社員、位多子。
最終的に、復讐、になったのか、なんなのか。しかし、彼の作品には珍しい女性の主人公。そして、結末に理不尽さが少ない。ただ、どちらかというと、しょうもないことを言いふらしたり、人の足を引っ張ってばかりの似田に、海苔を食べさせてほしかったような気もする。

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2018年08月05日

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