【感想・ネタバレ】オリンピックの身代金(上)のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

『オリンピックの身代金』上・下巻


先日読んだ『罪の轍』にも登場していた
警視庁捜査一課5係の面々

数年前に読んだ
『オリンピックの身代金』にも登場してたということなんだけど
もの凄く面白かったという以外
殆ど記憶に無かったので、意を決して再読


本書も、文庫で上下巻
新刊に至っては、2段組みの分厚いハードカバーだったなぁーと


長い道のりに、少し腰が引けたけど…
結果、再読して正解!


えぇー!こんな結末だったっけー⁈

私の記憶とは、こんなモンです…笑



昭和39年10月10日に
アジア初のオリンピック開催を控えた日本

敗戦から約20年が経ち
先進国の仲間入りが果たせると
日本中が湧き上がる


主人公である、島崎国雄は
東京大学で、マルクス経済学を学ぶ大学院生

ある日、秋田の貧村から
東京に出稼ぎに来ていた兄の死の知らせを受け、両親に代わって身柄を引き取に行く


別人のように変わり果てた姿の兄と対面し

ただ勉強ができると言うだけで
違う生き方をさせてもらっていたという現実に絶望を感じる


地方から、出稼ぎをせざるを得ない
プロレタリア層の実態を、体験すべく
工事現場での過酷な肉体労働を始める


全国から集められた、出稼ぎ労働者の中でも
ヒエラルキーがあり
賭博やヒロポンの売買が横行している

最下層の労働者内ですら
搾取が行われている現実を目の当たりにした国雄は

「東京だけが、富を享受するなんて、断じて許せない」と
オリンピック開催を阻むべく、一人テロ活動へと突き進む



当時、鳴りを潜めていた爆弾魔「草加次郎」の名前を使い
都内各所で、爆弾を仕掛けるも
全く記事にも話題にもならず

諸外国や、オリンピックムードに沸き立つ国内に対して
報道規制が掛かってるコトに、更なる苛立ちを覚える

公安、警視庁、全学連、やくざなど、全てを敵に回し
運を味方につけて、緻密な計画を
着々と実行していく国雄


そんな中
とても印象的だった、国雄の独白



「いったいオリンピックの開催が決まってから、東京でどれだけの人夫が死んだのか
ビルの建設現場で、橋や道路の工事で、次々と犠牲者を出していった
新幹線の工事を入れれば、数百人に上回るだろう
それは、東京を近代都市として取り繕うための、地方が差し出した生贄だ」



なんともやり切れない気持ちにさせる



オリンピック開会式当日
2回目の身代金受け渡しから
最後の爆弾を仕掛ける場面では
手に汗握る、刑事との攻防戦


勧善懲悪を嫌い、作品内では
決して人を裁かないコトをポリシーとしてる著者らしい展開で

登場人物全ての事情を、余すコトなく丁寧に描いている


本書は、もちろん犯罪小説ではあるものの、細かい時代描写も秀逸


刑事と公安の確執
とか
当時のBG(ビジネスガール)の生態
とか
地方と東京の激しい格差社会
とか
若い夫婦の文化的生活
とか


当時のカルチャーも、ふんだんに散りばめられているので
どのシーンをとっても、充分に楽しめる



2020年
56年振りに、日本で開催される東京オリンピック

個人的には、全く思い入れはありませんが
開催直前に、本書を再読できたコトに関しては
なかなか感慨深いモノがあるなーと




#オリンピックの身代金
#奥田英朗
#読書好き

0
2020年08月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

複数の視点から時間が前後して進行していく構成が面白いし、作者の巧さだと思う。
ラストは、島崎と村田のその後まで書いてほしかった。

0
2016年04月12日

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