【感想・ネタバレ】黒博物館 ゴーストアンドレディ(下)のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

藤田先生の「うしおととら」が今まで読んだ漫画の中で1番大好きで、もう、崇拝しております、そんな人間の感想なので、贔屓目でお目汚しください汗

クリミア戦争とフローレンス・ナイチンゲールの活躍という史実に基づくフィクション、先生お得意の冒険奇譚となっております
ナイチンゲールはもちろん名前は知ってても、看護師さん?くらいな浅はかな知識しかなく、クリミア戦争とか、もう…(遠い目)、もちろん全てこの物語通りではないことは承知の上で、本当に勉強になりました

壮絶な現場の悲痛な声と、それが全く届かず、机上の理論で現場を苦しめる上層部

という構図はいつの時代も全く変わらないのだ、と愕然とするばかりですが、もちろんそんなことで先生もフローも諦めません(フローにももちろん諦めていることもあるのですが…)

今年、劇団四季でとうとうミュージカルが上演となります、本当にこんな相性のいい、ふさわしい作品があるのか、目の付け所が違う方にただただ感謝です
というのは、このお話のもう1人の主人公、劇場に長く取り憑く幽霊、グレイが様々な有名なミュージカル(シェイクスピア)の珠玉の台詞を物語の中に効果的に挟み込み、フローたちは舞台の演者なのだ、高じて私たち全てが「現実」という舞台に立つ演者なんだよ、というメッセージを実際に舞台で表現するというまるで入れ子構造という企みがこの上ない相乗効果をもたらすと思うのです(からくりサーカスも「出し物」という性質を効果的に配していたけど、こちらはもう「演劇」そのものが物語のエッセンスとなっています)

やはり、この時代にこの作品のことを語るのに、「戦争」について記すのは避けて通れません
藤田先生なりの「戦争の恐怖」が提示されます
もちろん、このストーリーありきなので、それが先生の全ての意見ではもちろんありませんが、やはり畏れを伴う作業だったと想像し、心から敬服するばかりです

ただ、ぼくが最も心震わすのは、先生が登場人物を通して示す熱い人生譚です

選びきれないのですが、今ぼくに1番響いた文章を引用させてください

「偽善」でしか成し遂げられない「善」があるのです

例えば、ぼくの近くに、苦しんでいる人がいたとします
何かできることないかな、ってその人の苦しみに思いを馳せます
でも、何もできることなくて、落ち込みます
自分の中の誰かが呟きます
え、結局何もせんの?じゃあ苦しむだけ無駄じゃん、なに安全地帯から偉げに宣ってんの、偽善者ぶんないでよ、逆に迷惑なんだけど(く、暗すぎる、我ながら…)

でも、また違う誰かが呟きます
その人助けたいって思ったんだよね、何もできなかったら、その気持ちは無駄なん?人のこと慮ることが本当に無駄って思ってる?

偽善だって笑いたい奴にはまた、あんたの気持ち、話してみたらいいじゃん

そんなせめぎ合いがしばしば繰り返され、それに対して先生が励ましをくださった、と勝手に嬉しかったです

そして、本当はもう1つ引用したい文章があるのですが、この駄文を読んでくださり、漫画読んでみようという奇特な方のために、書きません、だって漫画で知る方が何万倍も強く響くから

今、この漫画を読むことができて、本当によかったです、もうみんなに読んでもらいたい(だって上下、2巻なんですよ!すぐ読めます)、でも、絵が苦手って人も一定数いらっしゃる…(この絵だからこそ伝わってくるのに!…贔屓しすぎ汗)

も、もう、ミュージカルが楽しみすぎます、それを待つのも幸せすぎる…

また、大切な漫画が1つ増えました!
そして、先生の深い造詣は、どれだけの時間と努力と忍耐が必要だったかとただただ感服し、でもお茶目な先生のことだから、え、全然楽しかったんですよ、ハアハア、とかどこ吹く風って感じですよね、絶対に!

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2024年04月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

伝記であり伝奇でありラブストーリー。共に天国へは行けない哀しいナイトのグレイ、にも関わらずその彼がフローの罪を止める。作者に珍しい悲恋の形だが死と共に訪れる永遠の愛でもあり、互いに後悔のない爽やかな結末だった。

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2015年09月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ぐぅ…切ない…切ないよ、これは。

史実を下敷きとし、実在の人物をモデルとしている以上、この脚色は否定意見が出てくるかと思いますが…それでもこんな事実があったとしてもいいじゃないか、と。フローが一人の女性としての幸せを得ていてもいいんじゃないか、と思うのです。
そして、グレイがどうしようもなく、哀しい。救われていたのに、一緒に行く事が叶わないという事実。
彼はそれが分かっていても、どうしてもフローに会わなければならなかった。会いたかった。
きっと、今も国立劇場で「見たい芝居を見ている」のかと思うと…涙せずにはいられません。


ともあれ。
フローの成し遂げた事は改めてすごいと言わざるをえません。特に上巻ではひたすらに忍耐を強いられていましたから、ここで一気に彼女の願いと行動が結実する状況には強力なカタルシスを感じます。
切ったはったのアクションでも策略をめぐらす頭脳戦でもありませんが、確かに大逆転と言える戦いがありました。

それにしてもラグラン卿かっこいいなぁ…!
登場するシーンはほんの数ページしかないというのに、この存在感。一つにはホール博士を完膚なきまでに叩いてくれるという点で物凄い爽快感を与えてくれるというのがあるのですが、何せビジュアルが凄まじい。ラスボスでもおかしくない風体ですw
なのに、フローにただ礼をしたいという理由だけで馬を走らせる。そんな男気、気配りが超萌えます。ホォォォォル。

それにソワイエもレフロイ軍曹も非常にいいキャラクター。
フローに惹かれつつ、プロフェッショナルとしてかっこよさを見せてくれてます。少しずつ少しずつフローの味方が増えていく感じがなんともいえない救い。

クライマックスのスタン…もとい、生霊も大迫力で素晴らしかった…。やはりこういう展開じゃないとね、折角だし!


そんなこんなで、これぞ藤田漫画とばかりに楽しませていただきました。
黒博物館シリーズの新作をお待ちしてます!!



それにしても…あどけないフロー、たまらなく可愛いなぁ! あと色々エロい!!!

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2015年08月10日

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