あらすじ
不義密通は、死罪の時代――真面目一本槍に生きてきた髪結い(=床屋)の久蔵は、ある時、魔が差して幼なじみの与三次の女房・おえんと不義密通(=浮気)。そして彼女の"ある望み"を叶えてしまったために、生き地獄を彷徨うことに。「劇画」を標榜する時代劇の実力派が、江戸の町の暗さや生き辛さを容赦なくリアルに描き出す、衝撃のノワール時代劇!
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Posted by ブクログ
感情表現が素晴らしい。
読み始めは人物の個性的な造作に戸惑ったが、10ページも読むとそんな印象は消し飛んで深く作品世界に没頭することができた。
ただし、最後のシーン。
好みが大きく分かれるところだろうが、自分は苦手かな。
少なくとも自分には、それまでの魅力的な物語をさらに輝かせるような意味を読み取れなかった。
過去と現代は切っても切れないということか?
人格が同じでも出会い方や社会のあり方が違えばあのような事件は起こり得なかったということか?
ただの子孫か?
しっくりこない。
読みが足りないのかもしれないが、最後のシーンは大きな蛇足のように思えた。
Posted by ブクログ
江戸時代。殺人罪で遠島になっていた髪結いの与三次が長屋に戻ってくる。与三次の同業者であり旧友である久蔵は彼の面倒をみることになるが、実は与三次の妻と密通してこれを絞殺してしまっていた。罪の意識にとらわれた久蔵の地獄巡りを描く時代劇。著者は辰巳ヨシヒロに影響を受けて劇画的な表現を目指したという。画は美しく、「ガロ」的なダークな表現も上手いが、昭和40年代の劇画に感じられる閉塞感は薄く、それらのシミュレーションであるような現代性を感じる。ラスト、一転して宇宙、そして現代に視点が飛ぶが、こういった視野の透過性も、インターネットやグローバリゼーションを通過した現代ならではの表現ではなかろうか。著者は「人情幕の内」が文化庁メディア芸術祭でノミネートされたのを観たことがあり、作品クオリティは高いが、単行本の刊行が途絶えるなど、十分に評価されていない。