【感想・ネタバレ】魔法使いの事情(2)のレビュー

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Posted by ブクログ 2015年12月28日

大失態だ、こんなグッと来る、好い漫画を買い損ねてるなんて・・・・・・
しかも、この巻で完結だったもんだから、ショックは更に大きくなった
こんだけ、読み手の心に強い印象を残せるだけの力があるのに、全2巻ってのはもったいない気もするが、ダラダラと連載を続けて、魅力が下降していく危険性があるのであれば、こ...続きを読むこであえてスパッと幕を引かせるのも、ある意味、英断か
実際、この『魔法使いの事情』のストーリーは軽くない
私みたいに、あえて少し重めの話を読んで、漫画読みと感想書きとしてのセンスを磨きたい人間ならいいが、ちょっと時間を潰したい時、気楽に読める作品でもないのは確かだ
前巻と、私が書いた、その感想を読んでくれた人だけではないだろうから、サラッと内容を説明すると、少し不思議な力を持ってしまっている学生らの日常が描かれている
普通のファンタジー×日常系と違うな、と感じさせるのは、魔法の使用に副作用が生じるってトコだろう。基本的な主人公である、一ノ瀬は他人の傷を治せる代わりに自分が傷付いてしまう
この2巻にも、新しい魔法使いが登場し、彼らの能力ゆえの喜びと苦しさが切実に描かれている
魔法が使えるからと言って、万能にはなれない。むしろ、生き辛さも強いられることだってある。それでも、多くの人に支えてもらって、どうにかなってる、そんな感じだ
一人の魔法使いの話だけでなく、悩みが違う多くの魔法使いに焦点を当てているトコが巧いと思う
しかし、やっぱ、読み手に最もインパクトを与える魔法使いは、一ノ瀬なんだろうな
人に無条件で優しく出来るコトが素晴らしいってのは、『町田くんの世界』で安藤ゆき先生が証明してくれている
ただ、優しすぎるってのが考え物だ
自分をもっと大事にしろ、と言いたいのに、その感情を彼にぶつけられない小鳥遊ちゃんの気持ちも分かる
彼の場合、優越感に浸りたい、多くの人に感謝されたい、そんなありきたりな理由で、他人の傷を治すのでなく、自分らしくあるために、自分が出来るコトをしたいからしているだけ。それの性質の悪さと言ったらないだろう。傲慢やら偽善者とも詰れない
本人が確固たる決意を持っているのだから、他人がどうこう指図できる問題じゃない
しかし、一ノ瀬は覚えておくべきだ
自分も傷つけば、自分以上に、その痛みに苦しんでくれる人がいる事を。優しさは、時に大事な人を苦しめてしまう
自分にも優しくできるようになった時、一ノ瀬はもう少し、自分の能力と折り合いを付けられるようになるんだろうが、そう簡単には人間、変われない。だからこそ、弱さと強さをどちらも持つ人間は愛おしい
一ノ瀬と小鳥遊ちゃんが安易なラブコメ関係になっていないトコも、私的には好み
ほろ苦いからこその青春、思い通りにならないからこその思春期だ
巻末やカバー下のオマケ漫画の質がイイ点も高評価に値する
お勧めの話は当然、最終話「君にとって大切なこと」だ。仕方ない、で済ませて、相手と距離を置くのは簡単だ。けど、相手を理解する事、変わってもらう為の努力を諦めれば、後悔をするのは、きっと、自分だ。本気でぶつかってこそ、見えてくる相手の一面、見せられる自分の一面がある
この台詞を引用に選んだのは、この作品の中で、特に心へ刺さったので。上手く素直になれない少年の、気になってしまっている少女への、ぶっきらぼうな物言いだからこそ、本心である事が伝わってくる。いやー、青春してるなぁ

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