あらすじ
▼このままでは地方経済は衰退してしまう
地方では働く場所が限られるため、若者は首都圏の大学に進学、そこで就職、結婚してしまい、故郷に戻ることは少ない。これが首都圏で生きる地方出身者に見られる顕著な例だ。
これでは地方には高齢者しか残らないことになり、このままでは地方が衰退していくのは必至だ。故郷が北海道・夕張市のように財政破綻し、「財政再建団体」に指定される日がくるかもしれない。
いま多くの地方から人口が流出しており、経済が停滞している。第二、第三の夕張市がいつ出てきてもおかしくはないだろう。
▼地方の企業を支援する仕組みが必要だ
だからこそ、地方経済を盛り上げるための施策に一刻も早く取り組まなければならない。ではどうすればよいのか。その方法を提案するのが本書である。
地方経済を活性化するためには、働く場所をつくり、首都圏に流出した人を呼び戻すことが不可欠だ。
そのためには地元で起業する人々が増え、雇用を増やさなければならない。創業資金などを支援するファンドを立ち上げることも必要だ。そして、地域の金融機関とベンチャーキャピタルが協力し、地元発のベンチャー企業を育てるべく、資金面と経営面の両面から支援していかなければならない。
本書では、宮城、秋田、大阪など日本全国10カ所で展開される実例を元に、地方創生のためのファンドのあり方と運用の仕組みを分かりやすく解説する。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
地域金融復権のカギ「地方創生ファンド」: 共感・感動のスモールビジネスを育て、日本を変える
著:松本 直人
地方創生ファンドは、投資した資金を回収できればよいというものではない。資金回収を目的にするならば、新しい産業が集積する東京地域にある上場を目指す企業に資金を投じ、10社中9社が成功しなかったとしても、残りの1社で高いリターンを実現させ、ファンドの利回りを向上させるという手法の方が、高いパフォーマンスを期待できる。
しかし、地方創生ファンドの最大の狙いは、地域での起業を活性化させることで、地域経済を支え、地方からの人口流出、東京への一極集中によって生じる諸問題を解決することにある。
それを実現するためには、地域金融機関が地元企業を金融面で支え、ひいては地域のコミュニティを豊かなものにしていくためのエコ・システムを、再構築しなければならない。
本書の構成は以下の7章から成る。
①地域金融機関と協力して
②地方経済を活性化させるために
③地方創生ファンドの流れと仕組み
④地方には面白い企業がたくさん
⑤地方創生ファンドの実例紹介
⑥共感社会における金融機関のあり方について
⑦未来の金融機関に向けて
地方創生ファンドは、感情や共感を重視している。本書において多く登場する「共感」というワード。
経営者に「共感」できるか、ビジネスモデルに「共感」できるか。色々な「共感」は感情の集積であり、共感が集まるところに「ヒト」が集まる。感情でつながった「ヒト」は強固な基盤となり、サステナブルにつながり広がり、強くなっていく。
地方においては、そういう意味で「共感」が大切だと考える。
本書は、取り扱っている業界自体は難しいものの、VC向けに書かれたものではなく、「地域」を思い、盛り上げていきたいという同志に向けて書かれている。そんな人たちとの「共感」をつくるための「心」がたくさん詰まっている。
エコシステムは多くの利害関係者やプレイヤーにより構成されている。根本においては「感情」で繋がっていく中で誰もが幸せになることを願いたい。
地域創生の基本と志を学べる良書である。