あらすじ
あなたのまちには地方創生の具体的な打ち手がありますか?
□ 企業を誘致したが、思ったほど地域が活性化しない…
□ 大型店を誘致したけど、効果は還元されているの…?
□ 公共事業を地元企業に発注したが、資材の調達費が域外に流れてしまう…
□ イベントや観光開発を行ったが、効果がすぐに途絶えてしまう…
上記のような「まちの悩み」を解決すべく
第I弾「まちづくり構造改革~地域経済構造をデザインする~(2014/3)」では、
「地域経済構造分析」をベースにまちづくりの基礎や問題点、分析の仕方、主な事例を紹介しました。
第II弾の本書では、その基礎知識をベースに、
各自治体が持っている地域活性化のタネをどのように活かしていけば良いのかを
具体的事例で解説しています。
【著者紹介】
中村良平(なかむらりょうへい)
1953年 香川県高松市生まれ
1977年 京都大学工学部衛生工学科卒業
1979年 筑波大学大学院環境科学研究科修了
1984年 筑波大学大学院社会工学研究科修了・学術博士
近畿大学助教授、岡山大学助教授、岡山大学大学院教授(社会文化科学研究科)を経て、経済産業研究所ファカルティフェロー、東京大学客員教授、日本経済研究所理事などを務める。
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Posted by ブクログ
読書・旅ログ
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2015-02-26
まちづくり構造改革/中村良平/日本加除出版
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まちづくり構造改革―地域経済構造をデザインする
まちづくり構造改革―地域経済構造をデザインする
作者: 中村良平
出版社/メーカー: 日本加除出版
発売日: 2014/04
メディア: 単行本
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ざっくり概要
地域産業連関表を基に、地域経済の構造(お金の動き)を見える化し、どうすれば地域経済が活性化し、地域にお金が落ち、地域住民が豊かになるかを具体的に分析するための手法が、地域経済構造分析。
プロセスとしてまずは、昼夜間人口比率等から通勤流動を抑え、地域就業圏域を把握し、対象地域を決定する。
次に、各産業ごとに「従業員に占める域内住民の割合」「販売額に占める域外割合」「中間投入額に占める域内割合」「付加価値額(所得額)」「消費額に占める域内割合」等を抑え、産業連関表を作成する。
データを抑えたら、基板産業(域外市場から域内へマネーを獲得してくる産業)を見つける。
基板産業を軸に、域内の資金循環を高める施策や、域外マネーをさらに獲得する施策を検討・実施し、データに基いて効果的に地域経済の活性化を図る。
ざっくり感想
まずは、めちゃくちゃおもしろかった。データを抑えることで、まちの経済構造をこんなにくっきり浮かび上がってくるとは思わなかった。このスキルはぜひ身につけて自分で分析できるようになりたい。
地域経済構造分析を実施したとして、その結果どうなれば地域経済の状況が分かったとして、その際、具体的にどんな打ち手を実施できるのだろうか。わかったけど、実現する手立てがない、そんな状況になるんじゃないかと感じた。
例えば、基板産業である産業Aと、関連する産業Bとのコラボレーションを、この経済構造分析の実施主体(おそらく行政だけど)が主導で実現することは可能なのか。それよりかは、地銀が中心となって分析とコラボレーションの実現を支援して、そこに対して融資するとかのほうが現実的なんじゃないかという気もした。(あんまりわかっていないけど)
とりま、いろいろな地域で分析はされているみたいなので、その報告書や論文を確認して、どれだけ分析結果を実社会に効果的に反映できているのか学んでみたいと思う。その後に、自地域で簡易な分析をやってみれたらなと。
Posted by ブクログ
産業連関表など、地域経済分析を実際に行う上で、先ずは読んでおきたい本。かなり実用的で、勉強になる。
実際のケースを交えながら解説してるのがGood。
Posted by ブクログ
地域振興の専門家が「まちづくり」について、学術的にまとめたもの。地域の振興について、その手順を体系的にまとめている。全体が論理的で、説得力がある。勉強になった。
「持続可能な地域経済とは、基本的に「自立できる経済システムが継続していること」と定義することができる」p6
「誘致企業の取引先は地元企業ではなく、従来からの域外の取引相手であることが多いです。そういった場合、確かに雇用は増えますが、地域に与える経済波及効果は大きく低下することになります。企業誘致の経済効果を紹介するほとんどの記事や雑誌論文は、この点を取り違えています」p23
「地域を思う気持ちは大切ですが、それだけでは駄目で、実際にマネーを生み出し循環させる手立てがないといけません。これは、ミクロな意味での持続可能な地域のための経済発展戦略に他なりません」p28
「地域活性化のバロメータは、なんといっても人口移動で、そのまちへの転入者のほうが転出者よりも多いことです」p32
「(高知県)「地産外商」つまり自地域で取れたものを外に売って資金を獲得している。海士町では、海産物に地元資源を活用した加工食品、畜産品の移出、上勝町では、有名な「葉っぱビジネス」です。そして、西粟倉町では、前村長のリーダーシップの下、豊富な森林資源に着目し、それを活用した基盤産業を創出しています」p33
「(1978年)「地域総合整備事業債」という地方の自治体にとっては、一見、資金調達がとても助かるような国の定める起債制度がありました。これによって美術館や健康増進施設など様々な箱物施設を建設した自治体は、少なくないと思われます。しかし、結果として地方債の残高は膨らみ、また、その後の利用効率の低迷で施設の維持費の負担が残っていることは記憶に新しいことでしょう。また、この制度は、国の地方交付税特別会計の赤字を増やした原因ともされています」p36
「地方から都会に住む子供への仕送り、地方工場から本社への送金などは、地域経済にとっての所得の空間移動という流出ですので、地域内に資金が循環できていないことになります。子供への仕送り金額を年間60万円として、毎年250人が都会の大学に行っているとすれば、4年間で金額は合計6億円になります。大都市の消費が活性化するのもうなずけます」p45
「地域の貯蓄は金融機関において運用されますが、地域に有望な投資先がないと国債などの有価証券の購入に回ることになります。近年、地方の金融機関は国債購入の割合が高まっており、金融緩和策が債券価格を大きく下げることになれば、地方経済は大打撃を被ることになります」p47
「経済が活性化していない地域では、「貯蓄>投資」になります」p49
「(本社機能)東京都の千代田区や港区、大阪市の中央区などは、製造業の本社が多く立地しているところです。こういったところでは地方工場からの所得移転が多く、実際の工場における製造品出荷額に対して、工場のない事業所も入れた総事業所の収入額は、千代田区で約13倍、港区では約16倍、大阪市中央区で9倍近くになっています」p52
「(域外市場産業:まちの外を主たる販売市場とした産業)農林漁業、鉱業、製造業、宿泊業、広域運輸業」p61
「(域内市場産業:地域内で発生する様々な需要に応じて財やサービスを生産する産業)建設業、小売業、サービス業、公務、金融、保険、不動産業」p61
「域外市場産業は、地域経済成長の原動力で所得の源泉となることから、別名、基盤産業とも言われます。この特徴は、次の2点が挙げられます。
① 域内の市場規模からの影響は小さいが、国際経済情勢を始めとする外的な環境変化の影響を直接的に受ける産業が多い
② 外的要因によって域外市場産業が急激に衰退し、域内経済の深刻化の契機となる可能性がある」p62
「域内市場産業は、そこから派生需要で生まれる産業であることから非基盤産業とも言われます。この産業の特徴として、次の点が挙げられます。
① 域内の市場規模が拡大しない限り、産業は拡大しない。
② 域内需要が減少するケースとしては、人口の減少など地域内の要因による場合のほか、地域外との移動時間・コストの低下、域外の魅力的な商業機能の存在によって域外消費が増加する場合もある。
③ 市場規模が変化しない場合、一般に域内市場産業は人口に比例的である」p62
「域内市場産業だけでは「まちの経済」は成り立たない」p62
「外貨を稼ぐ産業:
・ 水産業のまちでは、漁業、水産加工
・ 企業城下町や地場産業のまちでは、製造業、伝統工芸品
・ 観光都市では、観光業(ホテル、飲食、交通、お土産)
・ 県庁所在都市では、県庁、地銀の本店、郵便局の本局
・ 大規模都市では、百貨店、大規模な総合病院、特化型専門店
・ 郊外都市では、中心都市への労働サービスの移出
・ 東京では、地方からの大学生の仕送り、本社機能」p66
「(基盤産業の考え方)まちにある行列のできるラーメン店やまちの外から買いに来るスイーツのお店、評判の道の駅や産直店、カリスマ美容師のいる美容サロンなどはどうでしょうか。
・ 学生を惹きつける専門学校、私立高校・大学
・ 地域外からも患者の来るドクター、依頼のある弁護士
・ 観察者の絶えない先進的なまちづくりの自治体(視察ビジネス)
・ この工務店しかできない建築工法、デザイン
・ 全国ブランドのファッションを発信するアパレルメーカー
・ インターネット販売で収益をあげる個人企業」p67
「まちの発展には、基盤産業の存在と域内循環率の高さが重要」p79
「宿泊業そのものは、域外マネーを獲得する産業ですが、それだけでは地域の所得を創出するには十分ではありません。基盤産業と雇用を創出する産業とをいかに連関させるかが重要な産業振興(まちづくり)の政策課題となってきます」p133
「地元の特産品というのは、当然地元での一次産品ですが、それが加工品の場合、一次・二次を域内で賄えるかどうかで経済波及の幅と大きさが変わってきます。自分の地域の原材料で、自分のまちの工場で生産し、販売できれば、まちの外から入ってきたマネーはまちの中で十分循環することになります。つまり、まちの誰かの所得になるわけです」p158
Posted by ブクログ
タイトル通りの本です。
地域の経済構造をデザインするためには、まずは現状の地域の経済構造を知らなくてはならず、それには、産業連関表の作成が不可欠、ということを丁寧に説明した本です。
産業連関表は、地域内にどのような産業があって、他地域との間でどのようなお金の出入りがあるかを明らかにするものですが、たとえば、工場や大型店舗を誘致する場合、生産高や売上の規模については試算するものの、地域内でのお金の動きや、地域外とのお金のやりとりまでは、なかなか計算できていないようです。
せっかく工場や大型店舗を誘致しても、売上が、別の地域にある本社に流れるようでは、地域内にはお金はとどまらないですし、地域内でのお金の循環も起こらず、誘致した効果は、期待ほど大きくなりません。
地域内の経済を活性化する方法としては、工場や大型店舗を新たに誘致してもいいですし、地域内の既存の産業を強化してもよいのですが、どちらにしても、地域外からのお金を稼ぐことと、地域内でお金が循環するようにすることが大切、ということです。
ちなみに、一般企業に勤める自分には、この本の内容のような視点はありませんでした。
が、自分が住んでいる地域のこれからのことを考えるためにも、この本の内容を知ることができてよかったと思っています。
Posted by ブクログ
まず、まちづくりをするにはその地域の産業構造を分析し、マネーフローを知ることが大切だ、という本。
正直経済の専門書のように複雑な分析法が書いてあったので浅学な身としてはいささかハードルが高かったが、第二章までに中村さんの言いたいことは書いているので、難しい方はそこまで読むのがオススメかもしれない。
域外マネーを獲得し、それを域内で循環させることが大事。というお話。
まちづくりはビジネスであると思う。
いかにマネーを創出し、地域で回すかが今後問われるべき課題であると思う。
熾烈な地域間競争も起こるであろうなと。
ただ、この考え方を地域に降ろすのはハードルが高いかもと。専門家、コンサルが読むべき本ではなかろうか。