【感想・ネタバレ】アイデアの99%――「1%のひらめき」を形にする3つの力のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

何か新しいことを始める、変化を起こす。それを望むのであれば、まずアイディアが必要です。しかしながら、アイディアがあるだけでは不十分。アイディアをただ並べるだけでは、単なる妄想にすぎません。アイディアは形にしてこそ意味があるもの。そのために何が必要か。その実現方法が本書には整理されています。内容としては、ピーター・センゲ氏の「出現する未来」や、オットー・シャーマー氏の「U理論」、野中郁次郎氏の「美徳の経営」、スティーブン・R・コビィーの「7つの習慣」に通じるものがあり、かつ実践的な内容が中心となっているので、企画系の仕事をされている方、リーダーシップをとる立場にある方はぜひ一読すること、オススメです。

以下、要点の解釈の整理です。

アイディアの最大の課題は”実現すること”
アイディアを生み出すためには、対話を繰り返し、多くの知見を受け入れ、自らのこだわりをすてて、“内なる叡智”に耳を傾けることが必要です。こう言ってしまうと小難しい話が必要に見えますが、要するに
 ・“わいわいがやがや”と
 ・“いろいろな視点”を取り入れて
 ・“自由な発想”で”
 ・でてくる”ひらめき”を大事にする
ことでアイディア自体はでてきます。本当に良質のアイディアを生み出すことは容易ではありません。しかしながら、対話を重ねていくことで、必ずたどり着くことができます。また、質にこだわらなければ”アイディアを出す”ことを意識するだけでも、アイディアは出てきます。

しかしながら、なかなかアイディアを実現することができる人は多くありません。多くのケースは、いわゆる企画倒れになってしまいます。机上の空論、仮説といったレベルを越えることはなく、実現とはほど遠い世界で消えていってしまいます。そして“アイディアがよくなかった”と、またアイディア出しを繰り返してしまいます。

しかし、本当にアイディアが良くなかったのでしょうか。100%完璧に実現できる、完全なアイディアなど存在し得ません。試行錯誤しながら、徐々に修練しながら実現するものがアイディアです。つまり、私たちはアイディアが実現できない本当の原因が何かを考えず、”アイディアが良くない”という安易な問題意識に逃げてしまっているケースが多いのです。

では、アイディアが実現できない、本当の原因とは何でしょうか。それは“アイディアが良くない”わけではなく、“アイディアを実現するアプローチがとれていない”ことにあります。私たちはアイディアを実現するための難易度・リスクの大きさが、「発想<実行・実現」であることを認識し、いかに“実行・実現するか”にフォーカスして自らの問題を点検し、修正する必要があります。それがアイディアを企画倒れにさせることなく、形にしていくための最も重要なアプローチになるからです。


アイディアを実現するアプローチ
アイディアを実現するためのアプローチは
 ・整理
 ・仲間
 ・統率
の3つのアプローチに集約されます。

この3つのアプローチは、オットー・シャーマー氏の「U理論」や野中郁次郎氏「知識創造企業」などに通じるものが非常に多くあります。例えば、「U理論」であれば
 ・ひたすらに観察する : 整理
 ・新たな叡智を受け入れる : 仲間
 ・結晶化する : 統率
となりますし、「美徳の経営」であれば
 ・SECIモデル : 整理
 ・場 : 仲間
 ・フロネティック・リーダーシップ : 統率
といった形で対応することができます。そしていずれも何かを”実現すること”を非常に重要視しています。

つまり、私たちがアイディアを形にしたい、と思うのであれば、そのためのリーダーシップを発揮していきたいと思うのであれば、整理・仲間・統率のこの3点を強く意識することが不可欠なのです。逆説的に言えば、整理・仲間・統率を、与えられた役割のうえで惰性的に対応することは決して行ってはいけません。もし、惰性的に対応しているのであれば、今の役割を降りた方がアイディアの実現にはプラスに働くぐらいなのです。


①整理 : 行動を起こす個の力
まず整理は、“行動を起こす個の力”と置き換えることができます。自分自身が置かれている環境、確定要素・不確実性要素など、自分自身を取り巻く周囲の状況を整理・把握し、自ら行動を起こしていく、最も基本的なアプローチです。

ビジネスにおいて、ロジカルシンキングが重要視されるのは、まずこの整理を行うための根本的なスキルとして必要となるからです。しかしながら、ロジカルシンキングだけではすべてを解決することはできません。なぜなら、ロジカルシンキングは情報を扱うだけであり、感情まで扱うことはできないからです。

この感情を扱うためには、“内省”が重要になります。「U理論」や「出現する未来」、「7つの習慣」のセオリーを踏襲することが必要になります。自分自身が何者なのか、何をすべきものなのか、ただそこに立ってみる。そして周囲の環境を踏まえて自らに必要となるアクションを見定める。そのようなアプローチが必要なのです。なぜなら、この整理においては、やるべきことを整理することは当然ですが、その中で優先順位をつけ、実際に実行し続けていかなければ行けません。しかし、そのときに不安要素がすべて排除できるとは限りませんし(むしろ不安要素はついて回ります)、“どうなるかわからない・判断できない”環境に置かれることも非常に多くなります。すべての答えを待っていたのでは、アイディアはいつまでも実現されません。情報だけでなく、感情も含めた整理を行うことが不可欠なのです。


②仲間 : 実現への後押しとなる関係性
次に仲間は、“実現への後押しとなるつながりの力”と置き換えることができます。アイディアを実現していくためには、当然ながら個の力では限界があります。一人でできることは、所詮小さな規模で終わってしまいます。アイディアとして“一人でできれば十分”といったものであれば、仲間は必要ないかもしれません。しかしながら多くのアイディア、とくにビジネスの現場におけるアイディアは一人の世界で終わるようなものではないのです。となれば、仲間の力に頼ることは必然となっていきます。

ただし、このときにただの“仲良しグループ”であっては意味がありません。アイディアをただ賞賛するだけで、一緒にアクションすることはない、想いが共有できていない。そのような関係性では成果は生まれ得ません。

MITのダニエル・キムは組織の成功循環として、
 関係性の質 ⇒ 思考の質 ⇒ 行動の質 ⇒ 結果の質 ⇒ 関係性の質・・・
というものを提唱しています。ここでいう仲間とは、まさにこの関係性の質を表しています。この循環に当てはめたとき、単なる”仲良しグループ”が良質の結果をもたらすでしょうか。

ではどうすべきか。本当に“チーム”と言える関係性=仲間を作っていくことがここでは必要になるのです。率直にフィードバックでき、想いを共有し、支え合い、一緒に汗をかくことが必要です。ここには上司も部下も、組織の壁も関係ありません。自分のポジションにあぐらをかくことなく、周囲の言葉に耳を真摯に傾け、自分のアイディアにも他人のアイディアにも、そのの実現に向けて全力を注ぐことができる関係性を作り上げることが必要なのです。もし、これが面倒だと少しでも思うのであれば、決してリーダーとしてのポジションにはつかないほうがよいでしょう。組織の長としてのポジションに今いるのであれば、その職を降りた方が組織にはプラスに働くかもしれません。


③統率 : ムーブメントを起こす力
最後に統率です。これは“ムーブメントを起こす力”と置き換えられるでしょう。アイディアの実現に向けた、“場の流れ”、”組織の雰囲気”を作り出すアプローチです。このムーブメントが起これば、アイディアは実現に大きく近づきます。それだけでなく、実現した後に持続可能な価値として在り続けることも可能になります。

よくある事例としては、”アイディアを実現するところまではたどり着いたが、ファーストステップを踏んで以降、次に全く進めない”、といったものがあります。また、“担当者が変わった瞬間に、すべてが停止してしまう”ということもよく置きます。いわゆる”次が続かない”状態です。なぜでしょうか。最大の要因は、携わっていた”人”に大きく依存してしまっていたからです。その“人”との関係性ですべてが動いており、“人”が変わった瞬間に、または環境が変わって関係性に変化が起きた瞬間に、活動が停滞してしまっているのです。

では、どうすべきか。その一つの答えが”止められない流れ”を作ることにあります。アイディアの発案者だけでなく、実行に関わった人だけでなく、“場”全体の流れとして、“やっていくことが当たり前”という状態を作ることが必要になります。場に関わる人々と目的を共有し、それぞれが自律的に活動できる環境を用意し、相互に認め合い、成熟へと向かっていく流れを作ることが求められます。組織形成、文化形成のアプローチと言ってもいいかもしれません。当然、非常に難しく、手間のかかるプロセスです。しかし、不可能なプロセスではありません。大事なことは、どのような状況に在ろうとも向かうべき道を指し続けること、その覚悟と信念をもって実行に移すことではないでしょうか。逆に言えば、この覚悟と信念を示せないのであれば、リーダーシップを真に発揮することは難しいでしょう。


まとめ:リーダーシップとはアイディアを実現する力
解釈・要約を整理しているうちに、リーダーシップのあり方と、アイディアを実現するための整理・仲間・統率の3つのアプローチにつながる部分が多く見えてきました。むしろ、リーダーシップの必須条件と言ってよいのでしょう。

世の中にはリーダーというポジションにつき、役割を持っている人たちは多くいます。そしてリーダーによって、成果に大きな差があります。この差の要因はどこに在るか、一つの仮説としてはアイディアの実現力、つまり整理・仲間・統率の質の差にあるのではないでしょうか。

この整理・仲間・統率は知っているだけでは意味がありません。真摯に理解し、実践していくことが必要になります。大きな成果を最初から求める必要はありません。まず今できる整理・仲間・統率から積み上げていけば、いつか大きな力となって、アイディアを実現することが可能になるはずです。

0
2013年04月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

Making Ideas Happen 
Overcoming the Obsatacles Between Vision and Reality

原題が、示すように、アイデアを実現する上での
障害が何か、
それらをどう乗り越えるか、
を記した本。

99%というのは、エジソンの「1%の閃きと99%の汗」からとったものだ。
要するに、努力なくして、閃きを実現することはできないということだが、閃きを受け止める段階とこれを実行しようと決める段階の2つがあり、これが、全く異なる段階だというのは、興味深い。
前者は、連想や啓示といった楽しい時間である一方、後者は、合理性や自制心など努力や意志力が試される時間といってもよい。

特に、後者の時間における、その努力は、どんな障害があると認識するかによって変わってくる。
一番の障害は、アイデア自体が破壊的で、非経済的であることから、取り上げられにくいということ、もう1つは、自分の中だけにとどめることで、他のことに忙殺され、生まれてすぐ死んでしまう運命にあること、自分で勝手に見殺しにしてしまうということだ。

こうした本質的障害に対して、本書は、
アイデア実現力=整理力+仲間力+統率力
と必要なスキルを定義している。英語でいえば、Organization and Execution, The Forces of Community, Leadership Capability が章題になっており、なるほど、アイデアの「実行」というより、「実現」という言い方の方が、適切だとわかる。つまり、アイデアは、どんなによいもであっても決して一人で「実行」するものではないということが、実は最大のメッセージである。

「どのようにプロジェクトをまとめ、優先順位をつけ、エネルギーを配分するかが、実現しようとするアイデアの質よりもある意味で重要」
「仲間の力を活用することで、価値あるフィードバックを得て、アイデアが磨かれ、お互いを助ける関係が育ち、発想を資源や援助に結びつける「組織細胞」ができあがる」特に、「他者に対して責任を負うようになれば、クリエイティブな衝動が目に見えるプロジェクトになる」
「統率力とは、常にアイデアを追求しながら規模を拡大し、最終的に成功に導く能力・・・クリエイティブなプロジェクトを育て維持するには、みんながあなたのアイデアに情熱を持ち続けることが必要」

これらが、キーメッセージだが、実践する上でのノウハウというより、肝は、以下のようなものが挙げられる。

整理力
アイデア実現をプロジェクトとして捉える。プロジェクトは、アクション・ステップ、バックバーナー、レファレンスの3つに分解し、これらを管理する時間をとる。ただし、活力の限界を知って優先順位をつける、確信がなくてもまず行動してボールを前に転がし続ける、「不安が生む作業」を減らし、集中力を持続する。

仲間力
アイデア実現には、関わる人ごとの役割があると認め、夢追い人、片付け魔、両刀使いをそろえ、アイデアを皆で共有し、自分が全力で取り組む。賢い自己宣伝を行い、コミュニティにアイデアを広める、さらにはコミュニティの外にアイデアを広める。

統率力
「働く見返り」を見直し、チームを育てる。一方で、自己統率力を引き上げる。一番難しいだろうことは、アイデアの所有権を誰かに譲ってしまうことだ。「アイデアを本当に部下に分け与えるということは、つまり
信頼できるチームメンバーにプロジェクトの命運を預け、大きな決定を下す権限を与えるーーあなたなら違う決断をするかもしれないと思ってもーーことに他なりません。」

0
2021年07月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

アイデアを形にするために、ひとつひとつを主な要素〔アクション・ステップ(本当にやるべきこと)、レファレンス(参考資料)、バックバナー(後回しにすること)〕に分解する。アクション・ステップがなければ、行動は生まれず、結果も出せません。どんなアイデアも実際に形になるかどうかは、書き留めて実行しり、誰かに依頼したアクション・ステップにかかっている。今すぐ実行できないアイデアを思いついたら、それをバックバナーとして書き留め、後で見直す習慣をつけなければ、必ず忘れてしまう。

0
2013年06月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

アイデアを実現させるための道しるべを示してくれる本。
次々に入ってくる情報・忙しさにかまけて、何が重要で優先度が高いのかぐしゃぐしゃになっていた自分にはもってこいの1冊だった。
特に印象的な章が「整理力」について。
日々の行動を
・アクションステップ、、、具体的な個別作業
・レファレンス、、、後に参考となるかもしれない情報
・バックナンバー、、、今すぐは実現できないが将来行動する可能性があるもの
の3つに分類することで視覚的に一目でわかるようになる。
さらにプロジェクトごとに分類させることでさらに整理されていく。
また日々の情報(メール・ポストイット・ノート・手帳・・・etc)が驚くほど分類でき、ふと思い浮かぶアイデアもバックナンバーで保存。
アイデアを殺さず活かすための手助けとなる。
早速友人に頼み込みアクションメソッドを導入。
デイリーワークとしてを朝行い、業務に入る習慣をつけるのが今後の課題。

よくあるような、こうしろ!というようなものではないため受け入れやすい内容だった。
ただご注意頂きたいのは、発想法のハウツー本ではないということ。

0
2011年12月13日

「ビジネス・経済」ランキング