あらすじ
武士はいつ、どこで、生まれたのか? 七世紀ものあいだ日本を統治してきた彼らのはじまりについては、実ははっきりとした答えが出ていない。かつて教科書で教えられた「地方の富裕な農民が成長し、土地を自衛するために一族で武装し、武士となった」という説はでたらめで、都の武官から生まれたという説は確証がなく、学界は「諸説ある」とお茶を濁す。この日本史における長年の疑問を解消するために、古代と中世をまたにかけ、血統・都鄙・思想に着目し、武士の誕生の秘密を明らかにする。
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Posted by ブクログ
近年では最高の歴史本、ついに「武士」がいつ、どこで、どうして生まれたのかが判明したのです
武士は889年「物部氏永の乱」勃発を契機に、天皇が我が身の危険に対応する目的で、宇多天皇が890年に「滝口武士」として設置した「朝廷組織外で官職を持たない」弓馬の達者な「武士」と儒学の発想と元正天皇の詔の先例から名付けられた
奈良時代より弓馬の道(日々鍛錬を要する非生産部門)を義務付けられていたが、平安時代より富の集中と格差がもたらす「群盗」の存在が、武勇に堪能する人材を地方に、地方の調停者として「王臣子孫」という存在を核に化学反応により生まれた「武士」、平将門の乱により段違いの武勇を得た兵士は、藤原純友の乱という働き場所をえて「滝口」という場所を得て京都で生まれた
Posted by ブクログ
日本固有の武士の成立過程をわかりやすく描いている。日本には武士が力を持っていた故に、元寇、大航海時代、幕末と、海外から征服される可能性があった危機を乗り越えることができた。その武士は、本書にあるように、王臣子孫と地方の郡司豪族層の統合から生まれた。必然ではなく、様々な条件がもたらした結果であった。では、インカ帝国のような南米になくて、日本にあったものは何か。武士を生み出した源たるそれは、地方に軍団が割拠できるほどの生産性の高い豊かな土壌と、中国由来の思想や弓射術なのかもしれない。
Posted by ブクログ
<目次>
序章 武士の素性がわからない
第1章 武士成立論の手詰まり
第2章 武士と古代日本の弓馬の使い手
第3章 墾田永年私財法と地方の収奪競争
第4章 王臣家の爆発的増加と収奪競争の加速
第5章 群盗問題と天皇権威の転落
第6章 国司と郡司の下剋上
第7章 極大点を迎える地方社会の無政府状態~宇多・醍醐朝
第8章 王臣家子孫を武士化する古代地方豪族~婚姻関係の底力と桎梏
第9章 王臣子孫を武士化する武人輩出氏族~「将種」への品種改良
第10章 武士は統合する権力、仲裁する権力
第11章 武士の誕生と滝口武士~群盗問題が促した「武士」概念の創出
<内容>
かなり挑戦的な本である。武士の活躍は日本史に書かれるが、肝心の武士の起こりがあいまいなままごまかされていると。本書は、平安初期の王臣家の暴走とそこの治安を守り、国司の簒奪を避けたい郡司層、そこで地方で行きたい王臣家の子孫、国司の横暴を避けたい郡司層のつながりを呼び、武士のが生まれたとする。
大筋は従来の説と変わらないが、しっかりと証拠を上げて論破している点が素晴らしい。