あらすじ
東京都藍出市で、幼稚園児の遺体が発見された。被害者は死後に性的暴行を加えられていた。事件のニュースを見た主婦・保奈美は、大切なひとり娘も狙われるのでは、と恐怖を覚える。警察は懸命に捜査を続けるが、犯人は一向に捕まらない。娘を守るため、母がとった行動とは。結末を知った時、世界は一変する。驚愕の長編サスペンス・ミステリー!
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Posted by ブクログ
「我が子にとって生きやすい世界となるように、全ての贖罪を引き受ける母たち」
幼児連続殺人犯から娘を守るために、証拠の無い段階で人を殺める母。
娘を自分と同じ目に合わせないために、性加害者と似た性質を持つ男児を殺める母。
娘の幼児殺人を知り、更には庇うために死体損壊を行いながらも、娘に悟られないように何食わぬ顔で生活を続ける母。
このように作中では、母親たちの行き過ぎた我が子への献身ともいえる行為が描かれています。
しかしそんな母親たちが、ただのサイコパスのように映らないように、それぞれの母たちの背景を丁寧に描いているのが、本作品の素晴らしいところだと思いました。
■作品としての面白さ:作品の終盤で、主人公の一人である真琴の性別が、男ではなく女だったことが明らかになるところ
作中で起きた出来事などの意味がガラリと変わってしまう、これまで捉えていた主人公の像がまるっきり形を変えてしまう、そんな衝撃を受けました。
真琴は、剣道部の副主将であり、粗雑な言葉遣いを用い、男児からもかっこいい・憧れと称されていました。
他校の女子生徒から告白された時も「これだから女は面倒くさい」と独り言ちており、私は作品終盤まで真琴は「男」だと考えていました。(なので、剣道部主将が真琴に告白した時に、この人はホモセクシャルなんだなぁ、とすら思っていました)
しかし、実は真琴は女で、過去に性暴力を受け尊厳を踏みにじられたことから、男のようにふるまっていることが終盤で明らかになります。
これによりこれまで謎だった、
①真琴が男児を殺害してから性器を切り落としていたこと、
②粗雑な男児を殺害した後に真琴が「安心できる」という旨の発言をしていたこと、
③女刑事が男児殺害の犯行現場から母性を感じるため、犯人は蓼科秀樹ではなく真琴だと考えていたこと、が全てつながります。
この、点と点がつながっていく感覚が爽快で、読んでいる際に抱いていた霧が晴れていくような気がしました。
こういうのをアハ体験というのでしょうか?私はこういったアハ体験のようなものをミステリ作品に求めている節があるので、とても面白かったです。
■考えさせられたこと:女性は女性でしかなく、男性も男性でしかない。
昨今、ジェンダー平等が謳われ、ジェンダーレスやジェンダーフリーなどと言った用語もよく耳にします。男性だからこうあるべき、女性だからこうあるべき、と枠を押し付けてはいけないという風潮があります。その甲斐あってか、肉体労働がメインである仕事(例:自衛官)に女性が就いたり、子供や家事など「家庭的」と言われる仕事(例:保育士や専業主夫)に就く男性も多くみられるようになってきています。
つまりは、男性と女性の間に、肉体的あるいは精神的な差がないことを前提にして、社会が成り立つようになりました。
私はこれまで、それをとても素晴らしい事だと感じてきました。しかし、それは必ずしもいい面だけではないんだと、この作品を読んで思い知らされました。
作中で、靖彦は保奈美の理解のある旦那として描かれています。
例として、保奈美は靖彦を次のように評価しています。
・「夫は家事も手伝ってくれる。~中略~理解のある家族を持ったと感謝する。」(9ページ)
・本当は少しも悪くないのに、靖彦は謝ってくれた。(89ページ)
しかし、「妻に対して理解のある旦那」として描かれている靖彦でさえ、妊活に関しての当事者意識は皆無でした。
・「え、俺も(妊活のための)検査すんの?なんで?俺の血なんて、関係ある?」(47ページ)
・子供が欲しいといいながらも、この人にとっては、不妊治療は他人事なのだ——。(53ページ)
このように、母になるためには腹に子供を10カ月宿す必要のある女と、吐精すれば父となれる男では、妊娠や出産に対する、強いては我が子に対する捉え方がまるで違ってしまうのだな、と感じました。(全ての男性・女性が層という訳では無いと思いますが)
本当は、作品のメインテーマでありタイトルでもある「聖母」(子に対する母の愛)がどのように作中で表現されているか、について考察したかったのですが、私の語彙力と体力ではうまく表現できませんでした。
いつかちゃんと考察し終えたら、再度感想を書きたいと思います。
Posted by ブクログ
【Audible】まずマコトが女だったのかよって所に騙され、更にクレーマー母ちゃんがマコトの母親だったのかよってところで衝撃。死体の後処理をしてるのはマコトの母なんだろうなとは思っていたけど、そこが重なってるとは思わなかったな。かなり面白かったので文庫本買おうか迷い中。
Posted by ブクログ
まじでやられた。間違いなく名作。
帯にどんでん返しって書いてたら可能な限り伏線に気を使って読むことになり、本書もそのとおりに読んでたけど気づけなかった。悔しい。
今年読んだ本の中で今のところダントツでおもしろい
Posted by ブクログ
口コミで見かけ、気になっていた一冊。
ネタバレなしで感想言うの難しいから、ぜひ読んでほしい。トリックの一部は分かったけど、それ以上だった。母の狂気って…すごいな、と思うなど(私も母ですが…)。
1回目に読んだ時は、「保奈美…狂ってんなー」って目で見ていたけど、結末を分かった上で再読すると「分かる」って思ったわ。もちろんよくないことだけど、母として分かる部分はある。
Posted by ブクログ
とても面白かった。
小説でしか出せない読み手が思い込んだ人物像を使った見事などんでん返しで、本のタイトルにあるように母の愛が強く強く描かれていた。
男と思っていた犯人は女性でしかも母親だった。その母親が不妊治療で授かった子どもに対する異常な愛を描いているが実は時系列が違うという見事な伏線回収だった。
Posted by ブクログ
再読本。9年前くらいに読んだけど全く覚えてなかった><
最近の著書と比べると、技巧が凝ってて実にイヤミスらしい闇深さ、業の深さを感じました。ラストの章でうわっ!となり、読み返してトリックを確認したい衝動に駆られました。。
Posted by ブクログ
猟奇的で叙述トリックやどんでん返しもあり、最後の終わり方に余韻を残す。
ミステリ好きが求めているものを全部詰め込んだような作品。
とにかく読み進めるのが楽しみですぐに読み終わってしまった。
予想しながら読んだが、ことごとく予想を裏切られ、
作者の手腕に驚愕。
真琴のために綿貫が動いていると思ったなぁ。
真琴は男だと思ってたから、綿貫が同性愛者で、
真琴を助けるために幼児を死姦したもんだと…
タイトルの回収も素晴らしく、記憶に残る作品。
Posted by ブクログ
犯人は序盤からわかっているのに、まさかの真相に、そういうことなん?!となりました。
保奈美が神経質でヤバくなってるけど大丈夫?!って所に気を取られすぎて!
でもそこが面白かった。
不妊治療のところは読んでいて辛くなったけど、知れて良かったです。不妊治療中から「母親」になっていたという保奈美の言葉が胸に刺さりました。旦那さんのデリカシーのない言動にイライラしたけど、そこも含めて、私が娘を守る!になったんかぁと思いました。
とにかく続きが気になって一気に読めました。
真琴は今後、再犯はしないよな?とか、保奈美は完全犯罪できたのか?とか気になったけど、テーマでもあり、タイトルでもある「聖母」の真相が分かって終わるところが潔くて良かったです。
でもやっぱり、産みたくないと言った真琴を説得して子どもを産ませるところはちょっと気になりました、、
あと、欲望のままに女性に暴行をする強姦魔、悪意なくデリカシーのない言動をする夫が出てくるけど、真琴の事を好きな男友達は、相手への配慮もあって、そういう事を考えられる男性もちゃんと出してくれたのも良かったです。
Posted by ブクログ
手が滑ってネタバレ感想を読んでしまったので、真琴が女であることを知ってしまった、からのスタート。
それでもどんでん返しくらえた!
全てを知った上で最初からさらーっと読んでみたら、ああっこの時のこれはそうだったのか!が、たくさんあった。
薫がいなくなって保奈美が交番に行った時、「娘がいなくなって」ではなく「3歳の女の子がいなくなって」という言い方をしてたとか、
「この子を、娘を、守る」というのも、この子=娘ではなく、薫を、真琴を守る、っていうのを表してたり、
薫が「ママとお風呂入る。昨日約束したもん!」からの保奈美の回答「ママはお仕事なのよ」で、保奈美の在宅ワークを指しているかと思いきや、真琴のバイトのことだったり、自然にだまされてたわ〜
唯一不自然な点といえば
真琴が家に帰れば薫の存在は出ない。
保奈美が家に帰れば真琴の存在は出ない。かな。
それでも
保奈美・夫・真琴でご飯食べてる時、
「テレビの音うるさいよ」と薫を気遣うシーンがあったり、
保奈美が「娘(真琴)が寝ていることを確認し」たシーンもあったから真琴は家に存在してた。
保奈美、大暴走!かと思うシーンもすべて繋がっていて全て腑に落ちで読み終わった、というかんじ。
Posted by ブクログ
とても面白かったです!
2回始めから読み直しました。
楽しかったなあ!
しかしながら、取り扱う犯罪内容が繊細、且つグロテスクな描写がある為他人には薦めにくいです。
Posted by ブクログ
巧妙なミスリードにまんまと引っ掛かった。
遺体の一部を切り取る異常な行為。
なぜ?と引き込まれ、ラストなるほど!の伏線回収オンパレード。
最後の最後、チャイムがなったのは⋯
やはり警察でしょうか?
生まれる前は神の領域、生まれてからは母の領域。
我が子のためなら鬼になる。
母の底しれぬ歪んだ愛情。
いやーお見事!!
騙し
すごく綺麗に騙されたのでびっくり。自宅で死体処理ってバレないのかな?と思っていたがそこも織り込み済みでしたので、すごい。
Posted by ブクログ
自分を強姦した男と同じようなタイプの男児を憎くて殺害するのはわかるし、子どもがやった犯罪を親が隠滅したり被ったりするのもわかるけど、子どもが強姦されて妊娠した子どもを産めと言う母親のことが理解できない。
いくら自分が不妊だったとしても、そんな風に思うかな。そこが保奈美の異常さなの?誰か教えて欲しいです。
そこに引っ張られて最後までモヤモヤが残りました。
でも真琴が女性だというよくあるトリックにまんまと引っかかりました。
文章も読みやすくもう一回読んでみたくなりました。
Posted by ブクログ
「生まれるまでが神の領域なのであれば、生まれてからは母の領域なのだ。無事に我が子を抱くことができたら、全身全霊をかけて愛し、守る。たとえどんなことがあっても、自分の命を削ってでも、守り抜くーー」
この作品で一番印象に残った言葉だ。母になる女性の覚悟が込められていると感じた。
母親にとって子供は、お腹を痛めて産んだ、自分自身の分身のような存在であり、我が子のために力になりたい、守ってあげたいと思うのは当然なのだろう。まして不妊治療の苦労の末に授かった子供なら、その思いはなおさら強くなるのかもしれない。
この作品の怖さは、シリアルキラーや異常性愛者のような「理解できない狂気」ではなく、誰もが理解できる母親の愛情が暴走してしまうところにあると思う。
子供の味方であり、理解者でありたい。子供を守りたい。その気持ちがいつの間にか犯罪への加担に変わってしまう。こうした母性の暴走にはゾクッとした。
ただ、読んでいてそこまで強烈な狂気や恐怖を感じなかった。これまでに読んできたシリアルキラーのような、常人には理解できない得体の知れない狂気とは違うからだろうか。
むしろ、我が子のためなら人の道を外れてでも守ろうとする姿は、この母親だけの特殊な感情ではないのかもしれないと思った。ここまで極端でなくても、子供が苦しまないように手助けすることを「守ること」と取り違えてしまうような愛情は、現実にもありそうな気がした。
叙述トリックは見事で、保奈美と真琴と薫の関係には驚かされた。ただ、途中から何となく母親が関わっているのではないかと感じていたこともあり、個人的にはトリックそのものよりも、母親の愛情がここまで歪んでしまうことのほうが印象に残った。
母性愛に溢れ、慈愛の心を持つはずの「聖母」。その言葉を、こんな歪んだ愛情を描いた作品のタイトルにすることに、皮肉を感じた。