あらすじ
プロレス界最大のアンタッチャブル―― 総合格闘技を創ったタイガーマスクの真実! 1980年代前半、全国のちびっ子を魅了し、アントニオ猪木を凌ぐ新日本プロレスのドル箱レスラーとなったタイガーマスクは、なぜ人気絶頂のまま2年4ヵ月で引退したのか? UWFにおける前田日明との“不穏試合”では何が起きていたのか? 自身が創設した総合格闘技「修斗」と訣別した理由は? 現在も「21世紀の精神武道」へのあくなき追求を続ける佐山サトルは、その先進性ゆえに周囲との軋轢を生み、誤解されることも多かった。謎多きその素顔に『真説・長州力』の田崎健太が迫る。佐山サトル本人への長期取材に加え、前田日明、長州力、藤原喜明、中井祐樹、朝日昇ら多数のプロレスラー、格闘家、関係者の証言で綴る超重厚ノンフィクション。“孤高の虎”の真実が今、明かされる!
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Posted by ブクログ
佐山サトルという一人の天才がいて。
その類稀なる運動能力に魅せらた人はプロレスを求め、先見性のある明晰な頭脳に触発された人々は本物の格闘技の創設を望み、礼儀正しく謙虚な人柄に惹かれた人たちがお金を出す。
そうして様々な人が集まり去って行き、多くのものを生み出したはずなのに最後に残ったのは虎の布切れだけだった。
切なすぎる。
Posted by ブクログ
「正当なノンフィクション作品は、取材対象を傷つける可能性を内部に孕んでいる。取材とは心の中へ踏み込んで、触れられたくない記憶を掘り起こす作業でもあるからだ」(プロローグ 佐山サトルへの挑戦状)
昭和の新日本プロレス絶頂時のスーパーヒーロー タイガーマスク。
第1次UWFの象徴 スーパータイガー。
そして、格闘技団体 修斗の創設者・佐山サトル。
プロレスファン、格闘技通の間でその名を知らぬものはいない。
大きな大きな影響を与え、今でも語り草になっている。
だが、その実像、その人物にキッチリと向かい合って記録に残されてきたものは殆どなかった。
都市伝説のような流言飛語。
根拠の曖昧な噂話。
武勇伝から罵詈雑言まで、巷には溢れかえっている。
著者は、真正面から佐山本人に向かい合い、丹念な取材で掴んだ情報、疑問、見解をぶつけていく。
その一つ一つに極めて誠実に答えていく佐山。
事実とは何か。
真実とは何か。
格闘技というジャンルを越えて、歴史の真実を、物事の本質を追求していこうとする姿勢に、真のジャーナリズム、ノンフィクションの在り方を見た。
骨太で読み応えのある好著。
Posted by ブクログ
UWF離脱以降の修斗の話は興味深かったなあ。
新日を辞めた理由がA猪木の借金問題、修斗を辞めることになるのも膨大な負債。
UWFを変えようとして失敗し、打投極の理想はグレーシー登場でやっぱり変化。
結局もてはやされるのはプロレス方向のUWFか立ち技のK-1、極め技のグレーシー。佐山一人が仇花になっていく印象。
uwf時代の前田日明が若手選手・フロント間の関係を上手く築けなかったのと同じく佐山サトルも孤立していくのが興味深い。
佐山サトルが作りたいのが格闘技団体じゃないのは分かるけど、理想の高さと興行を打たないと成り立たない構造が矛盾。
Posted by ブクログ
「最強」というビジョンを誘蛾灯に人を集める職業が「プロレス」なのだとしたら、それは観客だけでなくレスラーになりたい若者の心も吸い寄せることになります。その光が最高のルクスを放っていたのが70年代後半の「新日本プロレス」で、アントニオ猪木というリアルな肉体と挑戦的言語が眩いファンタジーを発散していたのでありました。その「最強」という夢まっしぐらに突っ込んでいったのが佐山聡少年です。大概は「最強」はプロレスというビジネスのための営業ツールだ、と知ることがレスラーとしての「大人の階段」なのですが佐山はその階段を拒否、ずっと少年としての人生を歩むことになりました。その記録が本書になります。新日の隆盛と崩壊、UWFの隆盛と崩壊をテーマにしたプロレス歴史本はかなりありますが、そのどれもが佐山を“特異点”として取り扱っています。今回はその“特異点”視点で修斗の章が新鮮でした。しかし、少年が自分を語る言葉をあまり持たないように還暦の少年佐山聡も言葉は細切れで、著者が「佐山さんと四つに組む」と宣言していたようにはなっていないような気もしました。しかし逆に前著「真説・長州力」の長州の饒舌っぷりに違和感を感じたようにはならず、佐山、変わんないな…と思いました。タイガーマスクという本来の自分の目指すところで充分過ぎるスポットライトを浴びたことで、自分を慕ってくる若者には無名性を強調するというジレンマが彼の複雑さのひとつであることが強く感じられました。誰も見たことの無い風景を見た者だけの孤独、それは製圏道を進める現在も続いているのでしょう。
Posted by ブクログ
初代タイガーマスクとして日本全体を熱狂の渦に巻き込んだ佐山サトルさんが、人生を通じて何をしたかったのか、を膨大なインタビューを元にひもといたドキュメンタリー本。読み終わって「なるほど、佐山サトルは求道者であったのか」と悟ったと同時に、「何でも簡単にできてしまう天才は、どこに行っても異端者になるんだよな」と非常に切ない気持ちになった。ある意味、吉田松陰と似たような純粋さと狂気を感じたし、こういう人だからこそ時代を切り開く事が出来たんだな、とある意味納得出来た。
佐山さん以外の部分では、アントンハイセルに端を発した新日の混乱の件が割と詳しく書いてあり、そちらも興味深く読めた。正直、読後感はあまり良くないのだけど、古くからのプロレスファンとしては読んで良かったな、と思ったりした。
Posted by ブクログ
初代タイガーマスクとして一世を風靡した
佐山サトルの評伝。著者の田崎健太とは、あの「真説・長
州力」を書いたノンフィクション作家。あの本の好き・嫌
いはともかく、取材力に関しては確実に信用出来る仕事人
であることは間違い無い。
・・・いやぁ、凄かった。
まずハードカバーの単行本で500ページを超える物量だけ
でも凄い。これに加え、佐山本人や周辺の人々に丁寧に取
材がなされており、いい加減な記述・断定的な記述の類い
が一切無い。内容に関しては、これまでいろいろなところ
で書かれてきた初代タイガーや佐山のエピソードとほぼ相
違なく、誤解を恐れずに言うのなら、壮大な「まとめ」を
読んでいる気分。だけど・・・。
もし田崎さんで無い人間が「まとめていた」のであれば、
そんなこととっくに知ってたぜ!的な、妙な否定を伴った
感想しか出てこなかった気がする。キッチリ仕事の出来る
作家さんが書いてくれるからこそ、僕らが特別な感情を持
たざるを得ない「唯一無二の存在」の物語を楽しむことが
出来た、と思う。田崎さん、本当に感謝します。
そして改めて、佐山サトルという男の「天才ぶり」を思い
知った。その上で、佐山サトルというプロレスラー・格闘
家が、今の僕にどれだけの影響を与えてくれたのかも再確
認出来た。
タイガーマスクに熱狂したこと、旧UWFでゾクゾクしたこ
と、シューティングで「恐ろしい競技が始まった」と感じ
たこと等を昨日のことのように思い出す。何より、本人の
意には沿わないのかもしれないが、僕が変わらずに大好き
なプロレスの世界に戻ってきてくれた佐山には、本当に感
謝しか無い。
願わくば、今後の佐山サトルの人生に正当な評価があるこ
とを望む。佐山サトルの存在に人生を変えられた人間は、
本当にたくさん居る筈なのだから。
Posted by ブクログ
佐山はいい人。自説のコア部分は頑固。細かい部分は鷹揚。他人に頼み事できないタイプ。誤解を招く。格闘技への先見性はすごい。
佐山は修斗などではボトムアップ型の普及を目指したが、それでは時間がかかるし、第一世代の選手にはライトが当たらない。その辺で頓挫、追放となった感じ。
UFC、プライドなどはトップダウン型でテレビなどをうまく活用して隆盛になっていったんだと思う。プライドはプロレスを消費し尽くしたら消えた感じだが。総合格闘技としてはUFCなどが根づいた。技術面ではとりあえず総合格闘技は完成されたので、佐山は精神面を重視した格闘技へ向かったということだろうと思う。