【感想・ネタバレ】中央銀行―セントラルバンカーの経験した39年のレビュー

あらすじ

1972年に日本銀行入行後、セントラルバンカーとして過ごした39年を振り返りつつ、日本銀行のみならず中央銀行という存在自体の意義や役割を論じる書。

著者が総裁の任にあった5年間(2008-2013年)は内外で大きな出来事が頻発した時期だった。
世界的には、就任直後に発生したリーマンショックに端を発したグローバル金融危機、その後の欧州債務危機があり、国内では、長期にわたって与党の座にあった自民党から民主党への政権交代、短期間での自民党の与党復帰、その間発生した東日本大震災、消費税率の引き上げ論議など、まさに「激動の5年間」と言えるだろう。
それらの局面で著者がどのように考え、何を重視してきたか、判断の根拠となった事柄が理論的な分析とともに語られる。

本書は3部構成となっており、第1部は日本銀行入行後から総裁就任前まで、著者のセントラルバンカーとしてのバックボーンを形成した時期を扱う。バブル経済とその崩壊、日本銀行法の改正など、政策決定の中核とは距離のある立場で当時どのように感じていたか、そして現在はどう分析するかを述べる。
第2部は総裁時代を扱う。経済・金融面で発生したことを各章に分けて、行った決定とその背後にあった判断を振り返り、何が真の論点であったか、著者自身の思いはどのようなものだったかを論じる。
第3部は、第2部までの分析を踏まえて、中央銀行のあり方を中心に望ましい通貨管理制度をいくつかの側面から考察する。第2部までが著者の日本銀行での39年を追う形で進行してきたのに対して、3部はよりグローバルな視点で中央銀行の使命を論じる。

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Posted by ブクログ

普段知ることのできない日本銀行の一端を垣間見る想い。
丁寧な文体は、著者の人柄を体現しているのだと思う。
なぜ量的緩和に慎重姿勢だったのかを理解した。

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2024年07月10日

Posted by ブクログ

金融政策の理論や、総裁等の経験を踏まえた実際や葛藤、各種の課題などが詳細に記載されている。金融政策を決定した当時の政権や社会情勢との関係などは大変興味深い。

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2023年11月12日

Posted by ブクログ

筆者が一般市民はもとより、エコノミスト、マクロ経済学者、政策担当者を読者として念頭に置いてると書いてあるが、まさにそれらの人にとって必読書であると思う。筆者についてはいわゆる「リフレ派」との論争が記憶にあるが、浅学菲才ながら、自分としては筆者の主張の方が論理的で納得感のあるものであった。また、安倍政権のもとで発表された政府・日本銀行の共同声明について、後の日銀の金融政策に関する制約にならないよう苦心された様子が書かれていたが、その苦労が現総裁によって水泡に帰したと感じているが、筆者は現在の金融政策をどう思っているか知りたい。

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2021年01月16日

Posted by ブクログ

著書の総裁時代の国会答弁が論理的で端正だったことに感銘を受けていたので、その考え方や行動原理を知りたくて購読した。目的は十分に達せられた。

各論については種々の立場や意見について網羅的な解説があり、その中で自分の取る立場や思いが明瞭に記されている。特に、それが誰の意見であるかを明示するところが著者らしい誠実な態度だ。

何が正しいのかなどわからない、という懐疑主義がこの本の全体を貫いている。読者の中には正解を明示してくれない態度に業を煮やす向きもあるかもしれないが、私にはそれが著者の謙虚さに感じられた。学者の話が好きな人にはお勧めできると思う。

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2020年07月04日

Posted by ブクログ

ちょうど経済学を専攻して一番中央銀行にも関心が向いていた時期の総裁の著した大著で、学生時代を懐かしく思い出した。
著者が日本銀行に入ってからのキャリアの一部、総裁となってから取り組んだ数々の課題についての二部、中央銀行の使命についての三部からなる。
デフレという立場によって意味が変わったりフレーミング効果のあるキーワードを使わないようにしていたが、このワードが国民にもたらした影響により日銀への信頼が薄くなると金融政策の土台が揺らぐために言及せざるを得なくなったりといった、中央銀行の発信が持つ大きな意義。他にもナラティブとして、失われた20年がある。人口動態の変化が存在する中で成長パフォーマンスはむしろ健闘した方だが、この言葉により根拠のない悲観論が生まれてしまう。人口動態の変化は中長期的には一人当たりGDPの成長に対して中立だが、短期的には様々な調整がスムーズにいかないことによるマイナスの影響がある。
東日本大震災時の迅速な対応はどんな組織においても不測事態への対処法として勉強になる。日本国民の円高の忌避。高橋財政が現代には参考にならない理由。公共財ではなく非排除的かつ競合的なコモンズ的財の金融システムの安定。金融政策は本質的には時間を買う政策であり、その間に社会として取り組むべきことに取り組む必要性がある。
10年を経て変わったこともあるが、変わらずに抱え続けている問題もある。今後も日本銀行には淡々と使命を果たしていってほしい。

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2020年05月10日

Posted by ブクログ

白川元日銀総裁の超大作。実際に750ページ以上あって本が安定して「立つ」。今年の年末年始はほぼこいつに費やしてしまいましたが、いい時間でした。

さて、副題に「セントラルバンカーの経験した39年」とあるとおり、本書は白川氏が日銀に入行してから総裁時代までを、当時の状況に立ち返って書かれた本です。総裁時代には、リーマンショック/欧州通貨危機/東日本大震災と激動の時代を経て、アベノミクスに突入します。積極的な金融政策を政治・社会から求められ、日銀が批判にさらされた時代でもあります。

リーマンショックの際、日本の銀行はサブプライムローンをはじめとする、いわば「怪しげな証券」をあまり保有していなかったこともあり、金融システムへの影響は限定的でした。しかし、実体経済の回復は遅く、回復に時間を要することになります。そして低成長、低インフレの時代が続き、「デフレ議論」が活発になっていきます。

「…日本のデフレ議論は、日本経済にとって不幸なことであったと思う。その最大の理由は、日本経済の直面する問題の原因が物価の下落にあると断じたことである。」(p320)しかも、「デフレは貨幣的現象」とされたので、中央銀行が正しく金融政策を行えば万事解決するという考え方から、日銀に対して積極的な金融政策をするよう大きな圧力がかかります。安倍自民党の選挙では、それが大々的に選挙公約とされてしまう。構造改革や財政再建が本当は必要なのに、それには痛みが伴うので、中央銀行が選挙の道具にうまく使われて、先延ばしにされてしまったのかもしれません。

このような状況のなか、中央銀行総裁には判断が求められます。本書では、当時の状況を振り返りながら、どういう決断をしていったのか、あるいは本当はこうしたかったのにという思いが語られます。人によっては(特にリフレ派の人にとっては)、言い訳ばかり書いてる本、と捉えるかもしれませんが、今後の金融政策を理解していくうえで、大きな示唆を与えてくれる本であることに変わりはありません。

中央銀行のやっていることはなかなか市民に理解してもらえません。非伝統的金融政策なんてほんと分かりにくい。だからこそ政治の道具になったりもします。だけど、この本を通じて少しでも、中央銀行の賢明な理解が広まることを期待します。

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2019年01月06日

Posted by ブクログ

自分が金融取引に真面目に取り組む前の総裁だったので地味なイメージしかなかったが、本当に深い洞察、信念が垣間見え、大変素晴らしい書籍だった。政治との関係など、普段われわれに見えない点がかかれていて大変興味深かった。後付け説明的なところもあるだろうけど、強い責任感は本物であったと感じさせる。

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2019年10月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

あとがきのページの最後までで738ページと、ここ最近で一番長い本だった。しかし実際、著者が日本銀行に勤めたのは39年であることを考えると、一冊の本に書ききれることも限られては来るのだろうと思う。
金融についてはとても疎いため、正直内容の半分も理解できていなかったと思うけれど、実体験に基づく金融を語っているので面白いなと思う部分も多々あった。金融の世界の構図や流れのようなものも知ることができ、同時に一人のキャリアの中でこれだけのことを経験し考え、伝えることができるのか、と個人的に感銘を受けた。
中央銀行と金融政策、そして財政がどれだけ私たちの経済に重要な役割を担っていて、私たちの暮らしに影響を与えるのもであるかが分かったので、もっときちんと勉強して、もう少し理論的な部分についても理解できるようになりたいと思った。

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2019年05月04日

Posted by ブクログ

日本人100人のうち99人が興味のない内容だと思うが、この15年、円債投資、ALMとして金融政策に翻弄され続けている自分にとっては、本当に身近に感じる、貴重な本であった。
今の黒田緩和に対する意見は一切書かれていないが、読めば読むほど、出口のない現在の政策は間違っていると認識させられる。

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2019年03月21日

購入済み

中央銀行-セントラルバンカー

経済に疎い私でも混迷する経済を運営当事者の生の声にふれることが、
出来とても興味深く読んでおります。

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2019年01月26日

Posted by ブクログ

総裁就任後に直面する、リーマンショック、欧州通貨危機、加えて、東日本大震災等。改めて知る、激動の時代における中央銀行における種々の決断の重さであります。ポールソン回顧録等と合わせて読むことをおすすめします。いわゆる、リフレ派、に対する懐疑的な見方にも、なるほど、なるほど、であります。現在の日本経済が抱える、少子化、高齢化、持続可能な財政等、という厳しい現実についても、理解を深めることが出来る良書であります。星4つです。

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2019年01月02日

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