あらすじ
敏腕新聞記者と愛嬌たっぷりの“相棒”が、幕末から明治にまたがる謎を追う!
『明治乙女物語』で松本清張賞を受賞した著者の受賞第一作
明治維新前夜――。
妻、幼子とともに馬車に乗っていた一人の英国商人が、横浜で三人の侍に斬殺される事件が起きた。
三人は「攘夷なり!」と叫ぶや逃走し、その行方は杳として知れなかった。
17年後、銀座で一人の馭者が、何者かに狙撃され死亡した。
彼はこときれる前、「青い眼の幼子……」とのみ言葉を発したという。その意味するところは何か?
開化日報記者の片桐は14歳の探訪員見習い“直太郎”とともに、幕末から明治にまたがる謎を追う。
やがて明らかとなる驚くべき事実とは!?
松本清張賞受賞第一作の本格歴史ミステリー
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
それほど期待せずに読んだが、意外と面白かった。
幕末の横浜、期せずして異国の商人を斬ってしまった浪人三人組。事件は未解決のまま明治16年の本編へ突入。
鉄道馬車の馭者が何者かに撃たれ殺される事件が発生。新聞記者の片桐と情報屋見習いの直、そして後の大山捨松が事件の真相に挑む。
分かりやすい構図かと思っていたら、終盤になるにつれミステリアスな方向へ。
社会が激変した時代だけに登場人物たちの前身や人生ドラマも興味深く、こうした事件やドラマもたくさんあったのだろうなと思えた。
直が健気で素直で愛らしく、幸せになって欲しいと思いながら読んだ。
Posted by ブクログ
大政奉還前年、開港地横浜の夜道で外国人居留地に住む英国商人が3人連れの武士に殺害された。犯人は闇に紛れ、ついに捕らわれることがなかった。
17年後、明治16年の初夏、銀座煉瓦街で鉄道馬車の馭者が狙撃され、「青い目の子・・・」という言葉を残して逝った。
開化日報社の敏腕記者・片桐と記者志望の幼い相棒・直が、事件の真相を探るべく動き出すとき、歴史の渦に沈んだ17年前の事件が再び世間の耳目を集めることとなる・・・
面白かった~!
人力車と馬車、長屋と煉瓦の家、着物と洋服など、この時代の混沌や、維新を経験した大人たちがそれぞれに抱えた鬱屈、そして新しい時代への期待感、そんな時代背景が軽妙なやり取りの中にうまく盛り込まれながら、ミステリー要素も失われない。読み進めるのが楽しくて仕方がなかった。
岩倉具視使節団として津田梅子らと共に米国留学したという実在の女性・山川捨松が片桐たちと共に真相究明に奔走するという、フィクションとノンフィクションが入り混じった設定もなかなか面白い。
会津藩士としてつらい過去を抱えながらも相棒の直に優しい目を向ける片桐、家庭の貧困から小学校にも行けず記者見習いとして働く直、日本語より英語が得意で変な日本語を話す捨松、イケメン人力車夫・久蔵、アウトロー的な警部補・藤原・・・登場人物が皆魅力的なのもいい。
狙撃事件の真相が少しづつ明らかになるにつれて、17年前の事件の影が濃くなっていく。
軽妙なタッチで描きながらも、時代を背景にした重い内容も盛り込まれ、終章での片桐の戊辰戦争への慟哭は胸を衝く。
個人的にこの時代背景が好きということを差し引いても、全体としてとてもバランスのいい作品でした。