あらすじ
折壁嵩男は卓越した手術の腕をもつ大学病院の外科医だった。だが親友の医師が不審死を遂げ、上司の圧力で偽りの診断書を書かされたことで、病院を追われる。絶望した嵩男は、弁護士・横倉の仲介で医師殺しを請け負うことに。金儲け優先の手術ミスで平然と患者を殺し、癌患者に望まぬ手術を施し自殺に追い込む―そんな悪徳医師殺害の依頼には、人間の心のより深い闇が隠されていた。心揺さぶる濃密な医療サスペンス連作。
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Posted by ブクログ
仕事や手先は器用なのに生き様が不器用な元脳外科医の殺し屋。有能な医者だった彼が活躍するミステリー仕立ての社会派小説。
どんな業界にも歪んだ事情や黒い話はあるでしょうし、そういった暗部に紛れて美味しい思いをする連中はいるのだと思います。そして、それら煽りを食うのはいつだって業界で一番弱い存在になりますよね。医療の世界では、その弱い存在は取りも直さず「患者」に相当するわけで、この小説ではそういった患者たちの無念を晴らす話もそれなりに出てきます。そういう話だけでないのは読者を飽きさせない工夫だと思ってたんですが、今から振り返ると伏線といっても良かったのでしょうね。
悪役として出てくる医者みたいなのはゴロゴロいると文庫版巻末のあとがきに書かれてあったのは、意外でした。