あらすじ
戦時中に出征し戦死した画学生たちの作品を収集展示する美術館──「無言館」。設立のきっかけや日本中の遺族を訪ね歩き、思い出話を聞きながら遺作を預かる巡礼の旅を描く。解説=池上彰。
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Posted by ブクログ
無言館、知らなかった。なんだろうもと思って手にした本。読んで良かった。これを読むと改めて、戦争末期の日本がいかに残酷なことをしてきたか、死なずに済んだ若者たちの命をどれほど奪ったのかと悔しい気持ちが湧き起こる。そして、その無念さを戦後抱えて生きてきた遺族たちの気持ちを思うと軽々しく言葉にできない想いが湧いてくる。
また、並行して著書の生い立ちや養父母に対する悔恨も描かれている。戦争を体験しておらず、さらに複雑な生い立ちでもなく、戦中生まれでもない私には想像することも難しい。ただ、養父母にそうせざるを得なかったのだろう、と思う。それは著者にしか分からぬ気持ちであるし、そんな想いがあるからこそ、無言館を作ることができたのだろう。
それなのに、星3つなのは、時折読むリズムを中断させる文章だったから。たぶん、?とか自虐的なカッコ書きが引っかかったのだと思う。
ただ、私のつまらぬ評価と著書の根気強く遺作を訪ね歩いた情熱、使命感は全く別。無言館、一度は行かなくてはならない場所になった。
Posted by ブクログ
ところどころで著者の生い立ちが語られているが、その部分ははっきり言って余計だった。
というより、それは半ば懺悔のようで公にすることではないと感じた。
その著者が「無言館」を創設するまでの話が書かれている。
無言館に展示するための絵画を、遺族から引き取りに行く場面が多く、その時の遺族との遣り取り、戦没画家たちがどのような人物でどのように絵をかき、どのように死んでいったかということが語られている。
何人かの遺族の言葉に、「多くの人に絵を見てもらいたい」というのがあり、印象的だった。
若くして非業の死を遂げた彼ら画家本人にしても、思いは同じではないだろうか。
むしろ、本人たちの意を汲んで遺族の想いや言葉があるのかもしれない。
まだ画学生だった彼らの絵は、発展途上であるかもしれないが、その後の彼らの運命を考えると画面が違って見えてくるかもしれない。
もっとたくさん絵を描きたかったであろう彼らの気持ちを思うと切ない。