あらすじ
翻訳家・岸本佐知子推薦! web連載で話題沸騰の若手女性詩人によるエッセイ、ついに書籍化。
「早熟」「天才」と騒がれた女子高生は、今やどこにもいない。残されたのは、臆病で夢見がちな冴えない女----。
「ないない」尽くしの私は、現実に向き合うことができるのか?
18歳で中原中也賞を受賞した著者が、JK詩人からの脱却を図った体当たりエッセイ集。
連載時、話題を呼んだ「私は詩人じゃなかったら「娼婦」になっていたのか?」を始め、初詣から近所の八百屋、海外からストリップ劇場まで、詩人の気の向くままに「街へ出る」体験記です。web連載に書き下ろしエッセイを2篇追加した決定版になります。
岸本佐知子・推薦の言葉
「これはコントローラーのないRPG。
冒険の最後に詩人が見つける宝石みたいな言葉は、
私たちの胸も明るく照らす。」
●目次
まえがき――憧れと怖れの街へ
JK詩人はもういない
失敗だらけの初詣
お祓いと地獄の新年会
八百屋で試される勇気
ガラスの靴を探して
恋愛音痴の受難〈前篇〉
恋愛音痴の受難〈後篇〉
鏡の向こうにストレートを一発
私は詩人じゃなかったら「娼婦」になっていたのか?
フィンランドで愛のムチ〈前篇〉
フィンランドで愛のムチ〈後篇〉
TSUTAYAと私の「永遠」
私って必要ですか?----『ニッポンのジレンマ』出演のジレンマ〈前篇〉
あなたの言葉に立ち止まる----『ニッポンのジレンマ』出演のジレンマ〈後篇〉
雨宮まみさんの遺したもの〈前篇〉
雨宮まみさんの遺したもの〈後篇〉
秘密のギター教室
ストリップ劇場で見上げた裸の「お姉さん」
臆病な詩人がアイドルオーディションに出てみたら〈前篇〉
臆病な詩人がアイドルオーディションに出てみたら〈後篇〉
テレビに映る残念な私が教えてくれること
恋人と別れたあの日から〈前篇〉
恋人と別れたあの日から〈後篇〉
臆病な詩人、本屋で働く。〈前篇〉
臆病な詩人、本屋で働く。〈後篇〉
あとがき――臆病と勇敢
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
八百屋、初詣などささやかな初体験から少々ぶっ飛んだ初体験まで普通の人と臆病な詩人のどちらの感性も見えるエッセイ。
色んな人に「普通」と言われているようですが、大学教授にとんでもない言葉を言われた事、告白されて寝込んだ事などなんとも言えない体験を言葉で表現できるあたりが「普通」ではありません。どんな感情であれ、言葉で表現する事をためらわない、表現することを諦めない所がよかったです。
Posted by ブクログ
この世界が怖い、
明日が怖い
過去が怖い
未来が怖い
人が怖い
怖いものなんて
いくらでもある
その中で
頑張らなくてはいけないのは自分で
自分のためにしか
頑張れなくて
努力の仕方を教えてもらえない人は
一体どうやって 自分の足跡を残していけばいいのか
傷ついた分だけ 過去という頂は高くそびえる
未来は地平であるはずなのに
その峰が 立ちはだかる
未来へ行くということは
生きるということと同じ
未来が怖いということは
生きることが 怖いということ
臆病なことが だめなのではなくて
自信がないことが だめなのではなくて
狡いことが だめなのではなくて
そういう自分をしめだして
遠くに閉じ込めてしまうことで
自分で自分を 苦しめてしまうことが
結果的に 未来の自分を だめにしていく
言葉は灯だと思う
過去を受け入れつつ 今を受け入れ
未来へと歩んでいくための 導なのだと
弱くても 傷ついても
前に進むことを選んだ人は
大丈夫
あなたは強い人 だと思う
自分を変えたい
そう思ったなら きっと変えられる
過去に蓋をして 遠くの場所に置いてきてしまった自分と
また出会ったら 未来は もっと あなたの味方になる
挑戦は続く
その生き方は とても尊い
文月氏の生き方に 賛辞を贈りたい
Posted by ブクログ
若くして多くの賞を受賞した詩人と言えど20代の若者である。20代の自意識が的確な言葉で率直に綴られていて、自分が20代だった頃の気負いや臆病、止むことのない自己分析・自己言及を思い出させられる。これを本谷有希子がリライトしたら…と、やや意地悪な考えが頭をよぎった。あと、「フィンランドで愛のムチ」はグサっときた。
Posted by ブクログ
とてもいい文章を書くなあと思った。
奇をてらうわけでもなく、平凡なわけでもなく、
当たり前のような書き方の中に個性がじんわりとにじむ。
言葉の選び方、表現の仕方が適度で気持ちよく面白い。
恋愛に関する4つの章は、距離感が良かったなあ。
小説のようでもあり、飾らず淡々と追っていく感じも切なくて。
全編を通じて、自分の臆病さ、弱さ、逃げる態度に気付き、
突き付けられていることにちゃんと向き合っていることも、
やろうと思ってもなかなか難しく、怖い事だと思う。
相手から言葉を「ぶつけ」られることの乱暴さへの抵抗を語った章は力強くて泣けた。
Posted by ブクログ
文月さんの人生観というか、詩人としてじゃなくて1人の人間としての言葉の選択・表現が本当に独特で、こういう表し方もあるのか!と新しい発見もありつつ、自分の経験談と重なったりして安心感も得たり出来た。
何が大切なのか、自分はなんなのか、臆病な自分について向き合いたくはない状態であるとちゃんと分かっている彼女は自分を愛せているんだろうと思った。
自己満でも自己中でもいいから、私はどうしたいのかってちゃんと考えていくこと、あわよくば行動に移していきたいと思った。
Posted by ブクログ
ガラスの針のように繊細な表現の中に、卑屈さや韜晦が入り混じった文章で、そのバランスがすてきだった。タイトルにもあるように、「言葉」や「詩」というジャンルへの強い信頼感を持っているんだろうなあ。
Posted by ブクログ
日本において、承認の基準は〈社会〉にある。〈地位を築くこと〉や〈社会への貢献度合い〉ばかり評価の対象となり、その社会的評価によって自分を位置づけている。だがドバイでは、依存先を社会に限定しない。モスクは社会的地位に関係なく、地域の子どもからお年寄りまで集う。一日五回の礼拝の時間は、太陽の動きと共にある。夕焼けの光に包まれながら、モスクへと吸い込まれていく人々。祈りを捧げる人々を見て、社会から切り離されて、自分自身と向き合う時間があるってなんて幸福なことだと思った。