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Posted by ブクログ
全般的に非常に品質が高く、多様性に富んでいて、とてもよかった。共通して美しい世界観があるのもよい。
作者に女性が多いところがちょっと意外で、日本とは違うところだなと思った。
圧巻だったのはやはり「三体」の劉慈欣。「神様の介護係」がよかった。
あとは馬伯庸と郝景芳の作品をもっと読んでみたい。
## 劉慈欣
### 円
古代中国を舞台にして、兵隊を演算素子としてコンピューターのようなものを作った歴史改変もの。
あれだけの大国の大量の兵をもってすればできなくもなかったかもと思えて面白い。
### 神様の介護係
最高に面白い。
神様は確かに存在したが、それは何億年も前に栄えた文明に生きた人々のこと。その文明は高度に発達していたが、ピークを超えて停滞し、文明自体が老年に差し掛かったため、自分たちの世話をさせるために地球に生命を誕生させたという話。地球人から見れば神の位置付けとしては間違っていないし、それにSF的な設定をうまく融合させている。
## 陳楸帆
### 鼠年
遺伝子操作で製品化された鼠が逃げ出したので、学生までが鼠胎児に駆り出される。
鼠はただの鼠ではなくいろいろな能力を持っているみたいで、最後はよくわからなくなる。
なんとなく椎名誠のSF作品を連想した。
### 麗江の魚
### 沙嘴の花
舞台や装置がサイバーパンク的になっているが、テーマとしてはSFではない。
こっち系の話は苦手というかあまり興味がない。ただ、ノスタルジックな雰囲気はなかなかよかった。
## 夏笳
### 百鬼夜行街
幽霊や妖怪が出てくる話。SFとの境界が曖昧だし、そもそも境界なんて気にしなくてよいという思いがありそう。
### 童童の夏
自らも要介護者の老人がロボットを遠隔で操って、別の老人を介護する。中国も高齢化が深刻なのが分かる。よい。
### 龍馬夜行
龍馬が蜘蛛と一緒にパレードして、ラ・マシンぽいなと思ったらまさにそうだった。人類滅亡後に残された機械の話で、想像が膨らむ。
## 馬伯庸
### 沈黙都市
オーウェルの一九八四をオマージュしたような、検閲が強烈なディストピアの話。もちろん、現在の中国の状況とも重ねているはず。最高。長編でも読みたい。
## 郝景芳
### 見えない惑星
男が女に、今までに訪れた数々の不思議な惑星の話を聞かせる。惑星ごとに文化の発展の仕方に独特のエピソードがあり、文化人類学的に面白い。男が女に話している状況にも何かありそうな不思議な雰囲気がある。よく分からないが、いい感じ。
### 折りたたみ北京
3つのエリアに分けられ、それぞれの割り当て時間が決められて、街が折りたたまれながら入れ替わる。格差と分断を可視化したようなディストピア。この短編ではそこでの1シーンを切り取った感じだったが、是非とも長編で読みたい。
## 糖匪
### コールガール
性的なサービスではなく、夢を見せる娼婦の話。夢の内容が乾というのがよく分からなかった。
## 程婧波
### 蛍火の墓
時間と空間を超越したような不思議な世界の話。創世神話のようでもあるし、超未来のようでもあるし、完全な別世界のようでもある。イメージが飛びすぎていてちょっとついていけなかった。
Posted by ブクログ
個別の感想とは別に、全体的な印象としては、親子や血縁に関する情が表面に現れている作品が多かった気がする。
中国の儒教的な文化が背景にあると言ってしまえばそうかも知れないが、むしろ日本や西洋のSFの側が、その国の現在の平均的な社会の有り様よりも個人主義的姿勢を作品内で強調して描きがちな傾向があるのかもしれないと思った。
中国の神や民話や歴史のムードはとても好みだし、SF的な換骨奪胎にも向いている気がする。
深センを舞台にした「沙嘴の花」がとても良かったので、香港や北京や上海などフィクション全般に使われがちな土地以外の現代中国を舞台にした作品も読んでみたくなった。