あらすじ
ノンキャリの元刑務看守が矯正局長に就任するのは法務省始まって以来のこと。しかも父親も刑務官だったという西田博氏は、親子2代の刑務所勤めだ。刑務所における自らの若かりし日々を振り返りつつ、現場で受刑者や死刑囚らと向き合う刑務官の苦闘ぶりと、そして全国300カ所の行刑施設の頂点に立つ矯正局長としていま刑務所をどのように変えようとしているのかを記す。
≪本書の内容≫
・北海道「囚人道路」
・謎につつまれた刑務所文化
・刑務所の俗語/隠語
・最後の殉職事故
・死刑執行という究極の職務
・新しい企画には面白い名前を!
・堀の中の中学校
・工夫を凝らす刑務所メシ
・「PFI刑務所を作ろう!」
・組織改編で「裏切り者」の私
・職員を救え!
・「矯正陸援隊」
・治安の最後の砦
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
私は矯正職員だが、刑務官からは遠い位置にいる。だからこそ言えるのだが、刑務官で採用された人は、中等科試験を受けてほしい。そして、『二部』と呼んで揶揄する、法務教官を経験した方がいい。理由は明白だ。受刑者を懲らしめることが目的であった近年までの刑務官像は、すでに崩壊したからだ。
この著者は、未来を案じたと思う。いずれ、立ち直り指導が強化され、刑務官たる者であっても、彼らを威圧して我慢を強いる収容の仕方が潰えていくのを。
法務教官は少年院や鑑別所で、主に未成年の犯罪者を指導する教官である。役目は多岐に渡り、担任の少年の就労や修学などの進路、帰住の調整までしなくてはならない。心理的アプローチも行うため、在院在所者の心情把握は必須スキルとさえ言える。
しかも、法務教官のパフォーマンスは職業指導に顕著に現れる。農作、園芸、溶接等の機械操作、建物の修繕や、施設の景観保護まで、すべて在院者を指導して実施する。これはひとえに、法務教官に求められるスペックがシンプルに高いからと言える。
刑務官、特に看守は、これまでは保安を強化した職員であったが、拘禁刑の導入により、発達障害や知的障害、老齢によって刑務作業が困難な者たちへのアプローチをし、立ち直り指導が必須となったことから、人員把握、視線内戒護だけの存在ではなくなった。犯罪者という括りから「社会内処遇が困難な者」という認識に移行しつつある訳だ。
この本は2014年に発行され、ほとんど世に出回っていないと思われるが、かなり先見の明が光った作品と言える。
刑務官だけでなく、若い法務教官にも呼んでほしい本だった。
Posted by ブクログ
ノンキャリアの刑務官出身で初めて法務省矯正局長に就任した著者の西田博氏が、これまでの自らの経歴を振り返りながら、刑務所のこと、そこで勤務する刑務官のことを紹介している。
刑務官出身といっても、現場勤務は最初の2年程度で、あとは法務省本省勤務や管理職という立場であったとのことだが、だからこそちょっと現場からは引いた管理する側の視線からの刑務所及び刑務官の世界を知ることができ、とても興味深かった。地域活性化のツールの一つとしての刑務所という視点は、新鮮だった。