【感想・ネタバレ】雑学3分間ビジュアル図解シリーズ 日本人が知らない! ユダヤの秘密のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年02月09日

佐藤唯行
獨協大学外国語学部教授。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得。専門は米英の人種関係史、ユダヤ人史。

JCCと 縁 の深い日本人には、昭和天皇の弟君、三笠宮崇仁 殿下がおられます。古代オリエント学者でもある殿下は、ユダヤ教にもご関心がおありで、度々JCCを訪問され、日猶友好親善に尽く...続きを読むされています。

今日の日本で活躍しているユダヤ系文化人の筆頭といえば、数学者にして大道芸人のピーター・フランクルでしょう。彼は 18 歳で数学オリンピックの金メダルを獲得した俊才です。数学や理論物理学は、紙と鉛筆さえあれば、いつでもどこでも1人で研究することができるため、流転の民・ユダヤ人にはかっこうの学問なのです。アインシュタインやフォン・ノイマンを始め、この学問で世に知られた学者の多くがユダヤ人です。フランクルはハンガリーの圧制と反ユダヤ主義を逃れ世界を放浪した後、1982年に日本に辿りつきました。

ユダヤ人の物語には、学ぶべき教訓がたくさんあります。しかし、我々日本人が、グローバルなビジネス競争の場で、これだけはユダヤ人にも決して負けないと誇れる能力を紹介しましょう。  第1は、「調和する能力」です。聖徳太子の昔から、日本人は外来の文物を積極的に取り入れ、巧みに我がものとしてしまう能力を磨いてきました。卑近な例を1つあげるとしたら、あんパンです。日本の食材であるあんこと、西洋の食材であるパンを巧みに組み合わせ、あんパンというこれまでになかった独自のおいしい食べ物を作り出したのです。

 第2は、「象徴する能力」です。これは多くを語らず、物事の本質を一言で言い表してしまう能力で、茶・華道や能、鎌倉時代以後に栄えた禅宗文化によって培われたものです。例えば、 瑣末 な枝葉を全て捨て去り、1点に集中して表現する華道の美意識、森羅万象をたったひとつのしぐさで表現してしまう能の世界がこれに該当します。とりわけ空間デザインは、龍安寺、大徳寺の石庭に始まり、500年にわたって、日本人が能力を鍛え続けた分野でしょう。

ハワード・シュルツの成功の秘訣も同じです。彼は1980年代初めのシアトルで、イタリアのカフェラッタ方式のコーヒー店を始めます。これはとても勇気のいる決断でした。伝統的にコーヒーに対する味覚が優れているヨーロッパでは、当時から質の高いエスプレッソをすばやく出す店はたくさんありましたが、アメリカ地方都市では皆無に近く、業界人の常識は「アメリカ人にはイタリア人のように洗練されたコーヒー文化を楽しむことはできない」というものでした。しかし、彼はこの市場がアメリカでも相当大きいはずだと確信していました。そして誰も見向きもしなかったこの大きな隙間市場を見つけたことで、彼は業界世界最大手のスターバックス社の社主となったのです。

次に「学者が尊敬される社会だった」という説もあります。ユダヤ人社会では、財産を持つ無学な者よりも貧しい学者のほうが、結婚相手獲得をめぐる競争で勝利を収めたという主張です。こうしてユダヤ教学者が子孫を増やせたのに対し、カトリック社会では最も賢い子は司祭となり生涯を独身で過ごし、子孫を残さなかったというのです。この説も 信憑性 に乏しいものです。現実には、富裕なユダヤ商人が一文なしの学者を自分の娘婿にする事例は少なかったからです。

これらに代わって近年有力視されてきた言説が、職業選択説です。9~ 10 世紀、ユダヤ人が西欧、中欧へ続々と定住し始めてから後、彼らの就ける仕事は、金融業・商業に法的に限定されていきました。この限定の中で知力が磨かれたというのです。

一方、古代に遡って説明するのが「学習中心の宗教への変容説」です。全ユダヤ人の 80 ~ 90%が農民だった1世紀、それまで神殿での祭儀中心の宗教だったユダヤ教が、教典(タルムード)学習中心の宗教へ変容したことが、ユダヤ人の知力底上げの契機となったというのです。 64 年、パレスチナのユダヤ教指導者ジョシュア・ベン = ガマラは、全てのユダヤ人男子は、6歳になったらユダヤ人学校で学ばなければならないという布告を全ユダヤ人に通達しました。この布告は遵守され、2世紀を経ずしてユダヤ人男子は世界の諸民族の中で、例外的ともいえる識字・計算能力をほぼ100%の割合で身につけたのでした。

 この布告の追い風となったのが 70 年、ローマ軍によるエルサレムの神殿破壊です。神殿での祭儀が不可能となったことで、「学びの家」シナゴーグでの教典学習中心主義が、ユダヤ教の主流になったからです。教典学習も、中・上級のタルムードへ進むとかなりの知力が要求されます。そのためユダヤ人の中でも知力の乏しい者は、学習が苦痛となり次々と脱落し、ユダヤ教徒であることをやめてしまったのです。  こうして、ローマ帝政初期に帝国総人口の7~8%(800万人)もいたユダヤ人口は、1~6世紀の間に次々とその姿を消し、多くはキリスト教徒農民になったのです。都市での職業選択が始まるずっと以前に、学習不適格者を抱え込まなくなったユダヤ人社会では、知力の底上げが完成していたというのです。

ユダヤ人の容姿を特徴づける最も有名なものに、「大きな鼻」があげられます。多感な青春時代、自分の「大きな鼻」に引け目を感じていた有名人にまつわるエピソードは、枚挙にいとまがありません。かのスティーブン・スピルバーグ監督も、自分の鼻を何とか小さくしようとセロテープで押さえつけた、ほろ苦い青春の想い出を語っています。

ユダヤ人という言葉をどのように定義したらよいのでしょうか。一言でいうと、古い時代には「ユダヤ教徒=ユダヤ人」という単純明快な図式が成り立ちました。宗教に絶対的な力があった頃、人はいずれかの宗教集団に所属しなければならなかったからです。ところが、近現代になり宗教の拘束力が弱まると、「ユダヤ教離れのユダヤ人」という人々が多数出現します。今日のユダヤ教指導者はこの人々を「ユダヤ人に生まれたのにユダヤ教を信じない人も、やはりユダヤ人である。他の宗教に改宗しない限りは……」と判定を下しています。

今や世界第4位のユダヤ人口を抱えるカナダ。2000年にはカナダトップ 50 人の大富豪のうち 10 人、 04 年には司法界の頂点である連邦最高裁判事9人のうち2人をユダヤ人が占めています。市場規模ではアメリカを大きく下回るカナダを、なぜあえて安住の地に選んだのでしょうか。それは、この国の多文化主義がアメリカと比べても成功しているため、ユダヤ人にとって大変居心地がよいからです。カナダは昔から英国系とフランス系が国の中で共存し、両者の妥協で歴史が築かれてきました。フランス系カトリックの存在を常に認めざるをえなかったことが、 20 世紀後半に民族の多様性を受け容れる素地となったのです。黒人奴隷制に基づく大農園制がなく、黒人をことさら劣等視するような社会風土がなかった点も重要でしょう。

第2は、医者と学校の先生の仕事に、ユダヤ人が人口比を大きく上回る割合で進出しているからでしょう。医療、教育は政府支出に大きく依存する産業です。ユダヤ人は、福祉サービスを受給する貧しい人々の中には少なく、彼らにサービスを提供することで給与を得る専門職従事者には多いのです。つまり、ユダヤ人は私利私欲のためにも福祉国家を支持しているというわけです。以上の図式は、在米ユダヤ人が「弱者の党」民主党を支持する理由にもあてはまります。

 ここでいうJAPとは、日本人の蔑称ではありません。Jewish American Princessの頭文字をとって作られた新造語で、裕福な在米ユダヤ人家庭で大切に育てられた我がままお嬢さまという意味です。ユダヤ人が支配層の仲間入りをした1970年代以降のアメリカで、半ばやっかみと 揶揄 を込めたこの言葉が流行し、映画も作られたほどです。

ユダヤ教を母体として生まれたキリスト教とイスラム教は、今や、世界の宗教人口の約 54%を占めています。一方、ユダヤ教はわずか0.2%です。ユダヤ教はなぜ多くの信徒を獲得できなかったのでしょうか。  理由の第1は、異教徒に向かって積極的に布教し、信徒獲得をめざす伝道宗教ではなかった点です。第2は、西洋キリスト教世界における900年近い反ユダヤ主義の歴史です。ユダヤ教徒であることが圧倒的に不利な社会では、あえて他の宗教からユダヤ教へ入信する者は極めて少なかったのです。第3は、1世紀頃、ユダヤ教が教典学習中心の宗教へ変容した点でしょう。キリスト教徒やイスラム教徒は、ただひたすら祈れば神に近づけましたが、ユダヤ教徒の場合、同じ目標追求のために、難しい教典を日々学習しなければなりません。ゆえに、知力に恵まれない学習不適格者には向かない宗教だったのです。

ユダヤ教には、4つの分派があります。戒律のゆるい順に、改革派、保守派、正統派、超正統派です。各派はそれぞれ独自のユダヤ教解釈を行い、儀式・習俗も異なります。しかし、正統派以外の分派があるのはアシュケナジだけです。ミズラヒとセファルディは、出身地によって宗教上の慣習が少しずつ違いますが、分派にわかれているわけではありません。つまり、あるのは昔から存在する正統派だけということになります。

 超正統派の女性は、子育てと仕事の両立でへとへとです。多産を神の 御旨 として一切の避妊を行わない彼女らは、平均7人以上の子供を産むからです。一方、夫たちは経典研究に没頭し、働くとしてもせいぜい片手間のパートタイム労働です。イスラエルでは、同派の成人男性の、実に7割がフルタイムの神学生として研究に専念しています。彼女らはそうした夫を支えることを、至上の名誉だと考えているのです。とはいえ、政府の手厚い援助が頼りなのです。所得はずば抜けて低く、「貧しいユダヤ人」とは彼らのことを意味します。

ユダヤ教の教えによれば、独身生活は不幸であり、子供のいない結婚生活は悲劇なのです。タルムードの中に「妻なき男は生の喜びなく、平安なく、心の支えなく……」という一節があります。また、「創世記」の一句「産めよ、増えよ」は、神が人に下した命令ですが、ユダヤ教の根幹部分なのです。ユダヤ人の結婚式で興味深いのは、式の前に結婚契約書(ケトウバ)がラビによって作成される点でしょう。そこには、離婚した場合に妻が受け取る慰謝料の額まで、具体的な数字で記されています。その内容は、式の最中、列席者に向かって読みあげられるのです。ユダヤ教では結婚はまさに契約なのです。

同化が進む欧米先進国のユダヤ人たち。その口火を切るのは公立学校に通い始め、キリスト教徒の友人ができた子供たちです。  商店街にサンタクロースが出現し、街がクリスマス一色に染まる 12 月になると、プレゼントがもらえ、ご馳走が食べられる友人たちがうらやましくてたまりません。そこで「うちでもクリスマスを祝おうよ」と親に泣きつきます。

強さの秘訣の第2は、国民皆兵です。国民は 18 歳で徴兵され、男性は3年、女性でも最低2年の兵役が課せられます。イスラエルは世界で唯一、女性に兵役がある国なのです。彼女らの大半は、後方支援任務に就きますが、望めば実戦任務にも就けます。この召集兵 11 万人と職業軍人6万人を合わせた 17 万人が正規兵です。

そして本当の強みは、 45 歳まで年間4~6週間出動を義務づけられている 40 万人超の予備役兵の存在です。彼らのおかげで、有事には正規兵と併せて 60 万人近い兵力が確保できるわけです。彼らは普段は普通の職業人です。ところが一たび出動命令が下ると、数学教師のような公務員でも八百屋でも、仕事と家庭を放り出し、マイカーで戦場に馳せ参じます。小さな国なので、家から前線まで2時間あれば到着できます。職場の上司が軍では自分の部下だったりすることも珍しくありません。彼ら予備役兵は、平時には再訓練を繰り返し、練度を保ち有事に備えるのです。結果的に国民男性の大半は、2回以上の戦争経験者で占められています。「イスラエル国民とは、 11 か月の休暇を過ごす軍人のことだ」というジョークがあるほどです。

さらに就任3日目のオバマ新大統領も「イスラエルの自衛権を常に支持する」と演説し、ハマスを非難したのです。中東和平の中立的仲介役をオバマに期待していた人々を裏切る内容でした。オバマほど絶大な国民的支持のもとに当選した大統領でさえ、イスラエルに圧力をかけることは政治生命を危うくするタブーなのです。

同性愛者に比較的寛容なユダヤ人。同性愛者が妻を持ち、子を持ってきた歴史の中で、その遺伝子が広まったともいわれています。

イスラエルは人口724万人の小さな国ですが、その3.5%に相当する 25 万人の同性愛者が暮らしています。一番の有名人が、豊かな黒髪とセクシーな脚線美を誇るトランスセクシュアル(性転換手術の経験者)の「歌姫」ダナ・インターナショナルで、国際的な歌謡コンクールで優勝経験もあるダナは、この国の同性愛者のヒロインです。イスラエルは同性愛者の人権をリードする国際的先進国としても知られ、同性カップルでも配偶者手当や遺族手当を受けられると、最高裁判所が司法判断を下しています。また米軍とは対照的に、イスラエル軍の中には、ゲイであることを自ら公言する高級将校もたくさんいます。

それでは、ユダヤ人社会の同性愛者について考えてみましょう。  キリスト教徒の場合、同性愛者は、昔から聖職にかっこうの逃げ場を見出してきた点は忘れてはなりません。キリスト教の神父や修道士には、妻帯が厳しく禁止されていたからです。  これに対して、ユダヤ人社会には、そうした逃げ場は全くありませんでした。聖職者に妻帯を禁じる掟がなかったどころか、妻帯は奨励されていたからです。結局、ユダヤ人社会の中の同性愛者たちは、古来より「結婚して子を産み増やせ」という社会的圧力から逃れられずに、仕方なく結婚し、子をつくったのでした。こうしてユダヤ人社会の中には、同性愛者の遺伝子が広まっていったともいわれています。

イスラエル国籍を持ちながらアメリカで暮らす者は、実に 50 万人。なぜこれほど多くのイスラエル人が暮らしているのでしょうか。  その最大の理由は、重い税負担を逃れるためです。イスラエルでは日本円で月収 20 万円ほどの普通のサラリーマンでも、 50%近くを税金で取られます。イスラエルは税率世界一の国なのです。その理由は強力な軍備負担がイスラエル経済の肩にずっしりと食い込んでいるからで、アメリカでさえ軍事費はGNPの3%強ですが、イスラエルは9%に達しています。ピーク時には何と 25%に達した時もありました。イスラエルの人口は724万人で、日本の愛知県並みの人口です。この少ない人口の国が中東最大規模の軍事力を保持しているのです。これではいくら税を取り立てても足りるわけがありません。

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Posted by ブクログ 2011年08月05日

「ハンナのかばん」という本を読んで、もっとホロコーストについて知りたいと思い、この本を読んでみました。
この本のページ左側が文章、右側が絵で説明されているので、とても読みやすくわかりやすかったです。
読み始めてぎっちり2時間半も集中して読みきってしまいました。
ユダヤの人はとても頭がいいのですね。
...続きを読むなんていうんだろ?
人を納得させるのが上手いというか、先のことまでちゃんと考えてるというか。
私もそんなふうになりたいですね。
ホロコースト関係の本をもっと読んで、詳しく知りたいと思いました。

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Posted by ブクログ 2023年08月20日

いわゆるユダヤの人の歴史を見開き1ページの「図解雑学」レイアウトで説明していった本。

2009年発行なので2023年現在ではちょっと古いが充分な情報がある。
ユダヤの歴史、今の現状。アメリカでの立場、文化、イスラエル建国が語られ
なぜ、ユダヤは○○なのか? という問いへの回答が申し分ない。
反ユダ...続きを読むヤは古代はなかったのだが、中世ヨーロッパで始まったこと
ユダヤがキリスト教と仏教と違い営利欲求を認めていること
アメリカでのユダヤが大きな力をもつが万能ではないこと、
ユダヤの教育文化、
興味深く、駆け足で読むことができた。

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Posted by ブクログ 2016年03月25日

ユダヤに対して基本的な知識をつけるのに役立った。とはいえ、詳しいわけではないので、入門書の入門書のレベルだと思う。

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Posted by ブクログ 2011年10月08日

ユダヤ人について知りたいという思い。パレスチナ問題に端を発し、私の知の渇望は「ユダヤ」の領域に広がっていった。

本書ではユダヤ人のありとあらゆるQ&Aを学ぶことができ、いかに我々日本人と異なる部分を持ち合わせているかを伺い知ることに繋がる。
ユダヤ人と言うと、ナチスドイツによるホロコースト...続きを読むでの大量惨殺が真っ先に頭に浮かぶ。ホロコースト以前から常にユダヤ人は絶対的弱者の集合体として存在し、特定の国家を持たずにユダヤ血統を綱ぐ業に苦心してきた。

1948年にイスラエルが建国されるまでは、ユダヤ人は正真正銘の「弱者」だった。哀れで、細々と生きる人々のイメージが世界にはあったはず。だが、今現在イスラエルへの不信感は世界で広がる。虐げられ続けるパレスチナ側への同情により、イスラム諸国は、イスラムvsユダヤ、キリストの大きな、柔軟性の欠如した対立の根無し草をエルサレムの地に突き刺した。

「強者」と「弱者」がいとも簡単に逆転してしまう世の中で、イスラエル・パレスチナ問題はその象徴として捉えられてきた。
どこの国家からも疎んじられるであろうイスラエル人が唯一心置きなく、何のしがらみを感じずに生活できる場所は、我が国日本くらいなものかもしれない。と、歴史を知れば知るほど思うようになってきたんだ。

国民の大部分が確固たる信仰心を持たない日本人。稀にみる無宗教国家だからこそ、イスラエル・パレスチナ問題をはじめとした宗教争いに提言すべきことがある気がする。

分かってる。無宗教のジャパニーズが宗教問題を論じるなんて筋違いだと言うことは。だけど、何かあると思う。

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