あらすじ
バイアスという名の病と、うまく付き合っていくために。
医学はそもそも科学だろうか?――かつて若き研修医だった著者はその後の医師人生を変える1冊に出会い、普遍的な「医学の法則」を探し始める。
事前の推論がなければ検査結果を評価できない。特異な事例からこそ治療が前進する。どんな医療にも必ず人間のバイアスは忍び込む。
共通するのは、いかに「不確かなもの」を確かにコントロールしつつ判断するかという問題。
がん研究の歴史を描いてピュリツァー賞も受賞した医師が、「もっとも未熟な科学」の具体的症例をもとに、どんな学問にも必要な情報との向き合い方を発見する。
Small books, big ideas. 未来のビジョンを語る。
人気のTEDトークをもとにした「TEDブックス」シリーズ日本版、第10弾。
「私は、医学がこんなにも法則のない、不確かな世界だとは思ってもみませんでした。
小帯、耳炎、糖分解などと、まるで取りつかれたように身体部位や病気や化学反応に名前を付けていったのは、
自分たちの知識の大部分は本当は知りえないものなのだという事実から身を守るために、医者が生み出した仕組みなのではないかと勘ぐるほどです。
こうしたおびただしい数の情報によって、より本質的な問題が隠れてしまっています。それは、情報知と臨床知との融合です。
この2つの領域にある知を融合するための道具立てを見つけられないか――そうした模索が本書のきっかけです。
この本の中で『医学の法則』と呼んでいるものは、実際には不確かさ、不正確さ、不十分さにまつわる法則です。
このような『不』の力が働く知の分野なら、何にでも当てはまります。それは不完全性の法則なのです」(本書より)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
『病の皇帝「がん」に挑む』(文庫版は『がんー4000年の歴史』)や『遺伝子 ‐ 親密なる人類史‐』の著者シッダールタ・ムカジーが医学の歴史について書いた本。TEDブックスという形式で、本としては短い。特に彼の他の二冊の本と比べると驚くほど短い。それはたぶんよいことだ。
本書は他の科学と比べて不確かな部分がまだまだ多い医学について「医学の法則」を探って、紹介するもの。その法則とは、
1. 鋭い直感は信頼性の低い検査にまさる
2. 正常値からは規則がわかり、異常値からは法則がわかる
3. どんなに完全な医療検査にも人間のバイアスはついてまわる
まとめると「事前知識、特異な症例、バイアス。この3つの医学の法則がどれも人間の知識の限界や制約に関わっていることは示唆的」だということ。お医者さんであれば、実感を持ってその通りというのかな。医学もますます統計学が重要な分野になっているということだろうか。Evidence Based Medicineというものと現場の医療との関係にまつわるお話でもあるかもしれない。
医学における判断材料
一部、ご紹介します。
・検査の弱点を克服するには、しっかりとした「事前知識」(直観)が必要だ。
・基準値(大多数がおさまる一般的な範囲)からは、規則性がわかる。
異常値からは、より深い法則を掴むためのきっかけが得られる。
・あらゆる理論は、それが誤りだと証明される可能性を持っている。予測や観測によって誤りだと証明されることが、担保されている理論や命題のみが、「科学的」だと判断される。そのような「反証可能」な推論ができない場合は、科学的な理論とは看做されない。
・あらゆる科学は、人間のバイアスの影響を受けずにはいられない。たとえ、大容量の機械にデータを収集・貯蔵させ、自ら操作するよう学習させたとしても、最後にそのデータを観察し、解釈し、その使い道を決めるのは人間だ。
Posted by ブクログ
医療従事者が読むべき哲学書 科学的とはそもそもなにか。
科学において医療科学は最も進歩が遅れた科学。
人間は何にでも型にあてはめて考えたがる。
そして型にはまらないものは、異常値だとして無視する。
科学的であることを正義とする主張は苦手だから
とっても共感できた。
Posted by ブクログ
がんの歴史に関する本でピュ-リッツァーを受賞した著者が、医学の不確定性について考察したエッセイ。医学には法則と呼べるものは無いが、著者は3つの経験則があると考えている。
1.鋭い直感は、信頼性の低い検査にまさる。
2.正常値からは規則がわかり、異常値からは法則がわかる。
3.どんなに完全な医療検査にも、人間のバイアスはついてまわる。
この3つのルールは医学に関するものだが、経験則という観点では、いつも理論通りにはいかない競馬にも応用できそうだ。それはともかく、内容はとても面白かった。