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Posted by ブクログ
家族をカルトに誘拐された男が、かつてそのカルトから逃げた元信者と協力して娘の行方を追う、ただそれだけの話。
しかし、なんと濃厚な作品だろう。どこまでも人間の善と悪の本質に切り込み切り刻んでいく。
比喩や暗喩だらけの文章は、まるで文芸作品のように噛みごたえがある一方で、残酷なまでにリアルな暴力描写がいたるところに散りばめられ、主人公とヒロインの地獄めぐりが描かれる。
どこにも善良な人間はおらず、通常は善である主人公ですら境界を踏み越えていく辺りの描写は迫力がありリアル。
ハードボイルトというよりバイオレンスに近いかもしれないが、家族や仲間に対する思いがあるゆえに共感することが出来る。
さらに強力なのがヒロインのキャラ。まるで「ミレニアム」のリズベットの原型の様だし、モラルを踏み越えていく主人公の姿はグレッグ・ルッカのキーパーシリーズを彷彿とさせる。色々な作者に影響を与えるような作品だが、この世界は唯一無二かもしれない。