あらすじ
みんなは近いうちに逃げ出したくなるような嫌なことってある? あるよね、きっと。明日になっちゃえばいいのにって思うようなそんな時。僕、芦屋優太はそんな時間を早送りできる能力を手に入れたんだ。これでもう勉強や揉め事、全ての嫌な時間から逃げることができる。やったね! そうして早送りしながら日々を過ごしてたら知らないうちに彼女が出来ていた! しかも相手はあのクラスの問題児、柳戸希美だって? 僕は怯えながらも付き合い始めたんだけど、意外にも柳戸はとても優しくて、そしてとても可愛くて……。どうして柳戸はこんな僕のことを好きになってくれたんだ……? え、このラブコメ、僕だけ知らないの? 第13回MF文庫J新人賞最優秀賞受賞作!【電子特別試し読み】MF文庫Jライトノベル新人賞「絶対彼女作らせるガール!」「せんせーのおよめさんになりたいおんなのこはみーんな16さいだよっ?」収録
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Posted by ブクログ
先の読めない展開のなかで、傷つけたり傷ついたりしながら成長する少年のラブコメです。
主人公は過去のつらい経験から、結果が同じなら課程はどうでもいいという、損の少ない合理主義な生き方をしています。ある日、彼は「時間よ進め」と意識すると時間をスキップできる能力を手に入れます。スキップした時間の記憶は残らず「僕の知らない」時間として過ぎ去ります。そうして日々のつらいことをスキップして生活していると、いつの間にか恋人ができていたのです。一般的なラブコメにおける美味しい部分はすべて「僕の知らないラブコメ」に詰まっていますが、主人公はそれを覚えておらず、その間の描写もないという斬新な発想です。
スキップしてしまった間の出来事を友人に聞かされ、彼は自分でも知らないうちに、「課程はどうでもいい」という生き方を変え、彼女と同じ道を歩もうとしていたことに気づきます。「僕の知らないラブコメ」の中で彼は成長し、心境に変化が生まれていました。
最後には、自分の本当の気持ちに気づき、「知らない」間の自分ではなく、今の自分を成長させます。知らない間のことと、覚えていること、そのどちらもで彼が成長したとき、物語はエンディングでした。ページをめくる手が止まらず一気に読み切りました。
○序盤ほど謎の部分が多く、それがとても強い推進力になっていました。キャラクターの設定や、キャラクターどうしの関係性に伏線も張られており、全員がかけがえのない意味を持っていました。「僕の知らない」自分が他人のように主人公自身を悩ませるもどかしい設定も秀逸です。
●「スキップ」について完全な投げっぱなしになっていました。「あれはなんだったのだろう」でも「あれはきっと奇跡だった」でもよいので最後に、主人公がスキップとは自分にとって何だったのかを振り返る場面が欲しかったです。