【感想・ネタバレ】「母親に、死んで欲しい」―介護殺人・当事者たちの告白―のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

読み終わっても、あれこれと考えさせられ続けています。
それは「介護には”死ぬ”以外に明確なゴールがない」ことと同じでもあり「何をするのが正解なのかわからない」こととも通じるのかと思います。

傍からは介護者と被介護者を引き離すのが最善と思われるケースでも、当事者たちが「家族だから離れるなんて考えられない」と言って拒否。
そして最悪の結果を生んでしまった…とするとこの当事者たちにとって”最善なこと”とは一体何だったのか。
行政のヘルプに量質ともに限界がある中、極論、もしかしたら”殺める”という手段をとったとはいえ最期まで一緒にいられたことが当事者たちにとって最善だったのかもしれない。
そんなことをぐるぐると考えてしまいます。


殺人に至った様々なケースの後、現在進行形で介護に携わる方のインタビューが紹介されていました。
「介護を始めた頃は以前の生活を取り戻したいとあがき、疲弊していた。
もう戻れないと悟った今は、感情を押し殺し、何も考えないようにしている。
『自分は介護ロボットになった』
そう思えば、今の生活を受け入れられる」

当初は介護殺人に至る人とそうでない人を隔てる境界線が必ずあると思っていた取材班。
しかし、取材をすすめるうちにその境界線がわからなくなったといいます。
そして「明確な境界線はなく、事件の当事者も越えてみて初めて自分がそこまで追いつめられていたことに気づくのだと実感した」と結論づけています。

”介護ロボット”とまではいかなくても、感情を押し殺し、ジリジリと追い詰められていたならば、ふとした瞬間にこの境界線は無自覚に越えてしまってもおかしくないと思いました。
それぞれのケースを自分に置き換えてみて「思いとどまれるか」と自問してみて「100%で『思いとどまれる』と言えないかも」と感じた瞬間の怖さは、忘れられそうにありません。

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2018年04月20日

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