【感想・ネタバレ】核に縛られる日本のレビュー

あらすじ

2017年7月、「核兵器禁止条約」が国連で賛成多数で採択された。1945年の広島、長崎への原爆投下後、核兵器を違法とする条約が国連で採択されるのは初めてである。この採択で、核時代の転換点が訪れたが、日本は唯一の被爆国でありながら不参加を表明した。〈核の傘〉に居続けるとはいえ、なぜ独自の立場を貫くことができないのか。「風下の視点」から最前線で取材してきた著者が、新聞には書けなかった核をめぐる日米外交の舞台裏・秘話に触れながら、核兵器廃絶に向けて、日本がとるべき道を問いかける。

序 章 核兵器禁止条約交渉 日本不参加の真相
第1章 原爆は日本人に使おう ルーズベルト
第2章 原爆使用に悔いなし? トルーマン
第3章 それでも原爆に救われた 核の神話
第4章 オバマが広島にやってきた 和解を演出する日米
第5章 勝利の兵器と風下の人々
第6章 核の桃源郷と負の遺産
終 章 核時代を終わらせるために 日本がとるべき道

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Posted by ブクログ

「『核の傘』の下にいない多くの国々は、『どうしてあなたたちの安全のためだけに核兵器が必要で、私たちには必要ないのか』と問うているのです」

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2022年11月27日

Posted by ブクログ

2017年7月7日、国連本部で核兵器禁止条約(核禁条約)が採択された。賛成は122カ国で、当時の国連加盟国193カ国の6割以上にあたる国が賛同した。これは、それ以前に禁止されているクラスター爆弾や生物化学兵器、対人地雷と同様、核兵器を非人道的な兵器として扱い、人類が戦争で利用することを禁止する内容である。日本は唯一の被爆国であり、多数の民間人が亡くなり、更にはその後何十年も核の齎す病に苦しめられた過去を持つ。当然のことながら、この条約に賛成の立場をとる事が普通なのだが核を保有する国々と肩を並べ、条約に賛成しなかった。
本書はそうした立場を維持する日本の核に対する在り方や、日本だけでなく格を保有しない国々、そしてアメリカやフランス、中国などの核保有国の立場なども含め、核に対する各国の考え方の背景を探る内容となっている。中でも最も理解に苦しむのは、言わずもがな世界で唯一の被爆国である日本が賛成しなかったという事実だ。今年2025年ノーベル平和賞を日本被団協が授与された様に、民間レベルでは核の脅威を世に伝え、核兵器の存在を否定する団体はいくらでもある。だが国家としては非核三原則がありながらも、その存在(日本以外の国が保有する事)を否定できない日本。確かに近隣中国や、あからさまな敵対心を表明する北朝鮮など、核の脅威をちらつかせて脅しをする様な国の存在を無視できない。それらに対するアメリカが持つ核の抑止力までも否定できないという立場は、一見正常な様にも見える。更には核の平和利用として天然資源を持たない日本が持ちうるエネルギー確保の手段には核が有効である事は誰でも理解できる。だが東日本震災によって核の平和利用に対する安全神話は見事に打ち崩された。国民は核による利益よりも、それが無いことに対する「安全」や「平和」の益の方が遥かに大きいことを理解した。それでも国家として許容できないのは、正にアメリカに守られている立場におかれた現在の日米安保体制が大きな理由である事は疑いようがない。本書はそうした安全保障面だけではなく、各国との経済的な繋がりなど、あらゆる方面から日本の立場を分析する。
そして最後に核兵器禁止条約の全文を掲載する。読者はさまざな背景を理解したのち、最後に自身の判断を委ねられる形式となっている。核は兵器として絶対悪であると考えながらも、日本単独で考える事が困難な関係性、そして最終的にそれら運命が全て自分自身に帰結する事を想像しながら読み進めると良いだろう。
本書には日本に対して核兵器を利用した、太平洋戦争時のアメリカ大統領であるトルーマン自身の考えも記載する。そしてその後広島長崎の民間人を大量かつ一瞬で消し去ってしまった原爆に対するアメリカ人の意識も伝える。結局あの時アメリカは、世界は、日本はどうするべきだったのか。その後の世界をどこまで想像出来たのかなど、色々な想いや感情が入り乱れる。そして再び現代に戻り、自分自身が過去の歴史や関係者の考え方を知り、最後にどの様な考え方を持つかを問いかける。戦争からも核からも遠い場所にいる私たちに自分事として問いかけている。

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2025年07月29日

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