あらすじ
福岡大学ワンダーフォーゲル部のヒグマ襲撃事故の検証を筆頭に、最近のクマとの遭遇被害の事例を追い、専門家による生態解説など含め、クマ遭遇被害の実態を詳細に明かす。
1970年7月、日高のカムイエクウチカウシ山で登山をしていた福岡大学ワンダーフォーゲル部5人は、九ノ沢カールで幕営中、突然、ヒグマに襲われた。
近くにいた他大学の山岳部員に救助を求めるが、クマの執拗な攻撃に遭い、結局3名が亡くなった。
ザックを取りに戻らない、背中を見せて逃げてはいけない、等、幾つかの教訓を残し、当時大きな話題になった。
本事故に関する報告書は残っているが、書籍化されないまま、50年近くもの間に事件そのものが風化してしまった。
最近クマの出没が各地で相次ぎ、クマの襲撃による被害も頻発しているので、
悲惨な本事故をしっかり検証しつつ、最近の事例、専門家による生態解説など、
クマの脅威と遭遇被害の実態に迫った。
<内容紹介>
1章
1970年7月日高・カムエク事故に関する詳しい検証。
報告書を元に、1部員の遺書も掲載、この事故は何が原因なのか検証。
2章
登山者がクマと遭遇して起きた最近の事故を検証。
2009年 北アルプス・乗鞍岳
2014年 奥多摩・川苔山
2015年 滋賀・高島トレイル
2016年 鹿角市・山菜採り事故
等、主に7件の登山者による遭遇事例を取り上げ、検証。
3章
専門家によるクマの生態について
東京農業大学 山崎晃司氏が、最近のクマ遭遇事故の特徴、クマの生息域の拡大と事故とのつながり、ヒグマとツキノワグマの生態の違い、地球環境の変化とクマの生活圏の変容などについて解説。
※ツキノワグマの写真家 澤井俊彦氏によるクマの活写。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ヒグマよりツキノワグマのほうがずっと人を襲っているという事実に驚いた
アメリカクロクマより日本のツキノワグマのほうが攻撃性が高いのではという仮説もあるらしくこれからの研究に期待
Posted by ブクログ
読み終わってホッとしたのは、クマを恐れる必要はない、ということ。
語弊があるかもしれない。クマに遭遇してしまったら、こうすれば助かる!というセオリーはありません。しかし、クマの生息域に入り込んでいく場合は、いつでもクマに出逢う危険があることは認識しなければならない。だから、クマのいそうなところに行かなければクマに襲われる危険はない!ということです。
「人間の生活が、動物の環境も変えてきた」。
クマを目の敵にする前に、この言葉の重みをニンゲンは考えなくちゃいけないのかもしれない。
Posted by ブクログ
たまたま現在、中国原産の熊の赤ちゃんが生まれ、日本のマスコミは大はしゃぎで報道に熱を入れているが、日本にも野生の熊がいる。
そして、その熊はちょこんと座って、笹を食べたりでんぐり返しをしているような熊とは違い、自然の中で生きて、時として人を襲う。
本書は、日本で実際に発生した熊による人間の被害について、その状況を詳しく解説し、併せて熊の生態、攻撃などについても、詳しく、正確に、かつ分かりやすく解説してくれる。
北海道では、ヒグマ。本州以南にはツキノワグマが生息しているが、熊は深山を分け入った山の奥深くに生息している幻ではない。
人里のすぐそばに住んでいる。そして、自然の食物が足りない事態になれば、容易に人里に降りてきて餌を漁る。
特に昨今、自然災害や異常気象が多発しており、冬眠前の熊が十分な食料を採れないことも多いと思う。
上野動物園でパンダを見るだけでなく、初心者コースの山登りやトレイルラン、山菜採りなどで山に入る可能性があるひとは、一度は読んでおいた方がよい本だと思う。
Posted by ブクログ
クマやそれに関する事故についてしりたくて読んだ。
事故、本当にその言葉が当てはまるように思える。
クマにとっても、人間にとっても、遭遇は事故だ。
山に入る際は、なるべく回避できるよう、注意を払いたいと思う。
【memo】
・ツキノワグマは、1.5歳で独り立ち。
・着床遅延。初夏に受精した卵が着床するのは、秋にしっかりと栄養を摂れた後。
十分に体脂肪を蓄積できた雌だけが12月になってはじめて受精卵を着床させる。
(実際の妊娠期間は約2ヶ月で、体重約400gと小さく生まれるらしい)
Posted by ブクログ
少し前の本なので、昨今の現状を率直に反映しているわけではないけれど、得るものがすごい。
丁寧に事件が起こるまでの説明がある。それはまたこの先に何が起こるのか、スリリングさに押しつぶされそうなたまらない心を、静かに抑えてくれる。
と、一気に。1行でクマにやられる描写。
事実は小説よりも奇なり
Posted by ブクログ
登山やトレッキング、ハイキング、山菜採りに出かけられる方は一読を。
どこでも、誰でも熊に出会う可能性があるということが分かる。今まで大丈夫だったからと言ってこれからも大丈夫な保障はどこにも無いのだと思い知らされる。
クマの恐ろしさが半端ではないことがうかがえる。
体験談や事例報告は、戦慄が走るほど生々しく、実際に想像すると、体験された方々もそうだが「もう駄目だ」「これで死ぬんだな」と恐怖と絶望が入り混じることだろう。
特に、第1章の日高のカムイエクウチカウシ山のヒグマ襲撃事件が凄まじかった。(この事件について知りたくてこの本を手に取ったのだ)ヒグマの執着心が凄まじかった。そして事件の被害者の残されたメモが余計にリアルさを物語る。
昨今、クマの生息地が、開発や人間の都合による植栽で食べ物が失われており、餌を求めて行動範囲が今までとは違ったものになっている。そして、クマの駆除もハンターが少なくなったり、また、簡単に駆除することはできなくなってきているため、個体数が増えているという。
これを読んでしまうと、もう登山やハイキングは怖くて行けないかも。
もし、運悪く遭遇し、攻撃され、防御するときは、顔や頸を攻撃してくるそうなので、首の後ろを手で組んで肘を顔の横につけて首と頭をしっかり守り、うつ伏せになる姿勢が良いらしい。
でも、出来れば出会いたくない。
自分の比較的近所の散策できる森でも、数年前から、ポツポツとクマの目撃情報が相次いでおり、もう散策する勇気がない。散策にとても良い森なのだが。
Posted by ブクログ
文章が云々、というより、事例が怖い。クマが怖い。
登山などの際には、まさかと思っても、熊にあうかもしれないという自覚が必要だという警告の書。最悪、襲われたら頭と首だけ守ろう・・・。クマに反撃して「ある程度反撃には効果がある」とか言える人たちは、本当にすごいと思う。そして襲われたにもかかわらず「クマの住処に入り込んだのは我々だから」と言える謙虚さもすごい。
熊が食害目的で人を襲う習性を身につけたら恐ろしいな。。。
Posted by ブクログ
三毛別羆事件など、クマ被害(熊害)に関するルポは読み応えがあり、原始的な恐怖を呼び起こしてくれる。
また、登山を愛するものとして、常に熊の恐怖を刻み込んでおかなければと思い、この本を手に取った。
ニュースなどではぼかして表現されている被害(特に食害)が詳細に明らかにされていて、クマの威力、強さに衝撃を受けると共に大変勉強になった。ややグロ耐性は必要かもしれないが…。
現在に至るまで、クマ被害は絶えず起こっていること、どんどん人間のテリトリーに踏みいってきていることがよく分かった。
というより、人間がクマのテリトリーを冒しているのだ。
クマ被害から命からがら生還した人々が一様に「自然の領域に踏み込んだ人間の自業自得だ」と諦観しているのが印象に残った。
クマの恐ろしさをつまびらかにしながらも、かの森の主への畏敬の念が随所に溢れていた。ヤマケイらしい良書である。