【感想・ネタバレ】変節と愛国 外交官・牛場信彦の生涯のレビュー

あらすじ

日本人は、牛場信彦という外交官を覚えているだろうか。
戦前は「枢軸派三羽ガラス」の一人として、日独伊三国同盟を強力に推進。日本を戦争に追いやった一人とされた。
戦後は一転して「親米派」となる、経済外交で実績をあげ、外務官僚のトップである事務次官、さらには外交官のトップである駐米大使にもなった。
それだけではない。国際経済に強いところを買われて、福田赳夫内閣の対外経済相にも就任している。
彼のことを「変節漢」と呼ぶ人もいる。

本当にそうなのだろうか。

戦後日本に君臨した吉田茂は、「枢軸派」を激しく憎み、古巣の外務省から徹底的に排除した。「Yパージ」である。
しかし吉田は、いったん辞職した牛場が外務省に復帰するのを妨げなかったばかりか、バックアップした節さえあるのだ。
吉田は牛場の中に何をみていたのだろうか。

昭和という激動の時代を、「気概」をもって駆け抜けた男の生涯から、「国を愛すること」の本当の意味が見えてくる。

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Posted by ブクログ

[三叉路の真中を行く]第二次世界大戦の戦前・戦中はドイツとの連携を説き,戦後は経済外交や対米外交に尽力した牛場信彦。毀誉褒貶に晒されながらも,一筋に国益を追求し続けた大物外交官の歩みをまとめた作品です。著者は,読売新聞東京本社編集局長などを歴任した浅海保。

牛場氏の足跡をたどりながら,責任の取り方とは,国益とは等,シンプルながらも重要な問いについて思いを馳せてしまいました。昭和という時代を股にかけているため,近現代の日本外交の一側面を学習する上でも非常に有益です。

〜「気概」の二文字。ここに牛場の思いのたけの全てが注ぎ込まれている。そう思えてならない。〜

知らないことがたくさんあるなと痛感☆5つ

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2018年05月09日

Posted by ブクログ

岡本行夫さんの自伝に出てきた偉大な外交官として興味を持ち手に取った。第二次大戦の親ドイツから親米に変節したが、なくてはならない外交官として活躍した牛場の生き様、枢軸派と裏で言われながらフェアにやるべきことを貫いた姿勢が人を惹きつけた。

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2025年10月14日

購入済み

1938年中国との講和を潰した廣田弘毅の後任に就いた宇垣一成外相はイギリスを仲介とした講和を模索する。大臣に抵抗しアジアからアングロサクソンの排除を訴え戦争を継続させたのが牛場ら革新官僚。
本書ではこの時の牛場らの行動が日中外交に与えた影響を過小に評価している。
その後、第二次世界大戦下のドイツにあってナチス体制に心酔していた牛場はドイツ敗走間近の情報を本国に送らない、寧ろ妨害する。

こういう「己が信じた道を突き進む猛烈仕事人間」を肯定的に受け止める事ができる読者向け。
自分には無理だった。国益を口実に親米派に鞍替えするならもっと早く変節の人になって欲しかった。

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2018年08月22日

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