【感想・ネタバレ】アレグリアとは仕事はできないのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

仕事ができて、他の人の仕事の仕方についてもしっかり見極めて評価していそうな職場の同僚が貸してくれて読みました。
「仕事というもの」「仕事への向き合い方」を考えさせられる物語です。”アレグリア”は事務職に就く主人公の女性(ミノベ)の職場にある複合機。ただのコピー機ではなく、データを受信してかなり大きなサイズの紙で出力する機械のようだ。それがすぐに調子が悪くなる。ミノベはその機械”アレグリア”に対して、かなり感情的になりながら対応する。それに対して、いつもクールで仕事ができる先輩は、「相手は機械なんだからそんなに感情的にならなくても・・・。」と、ドライな対応。アレグリアの不調に悩まされているのは同じなのに態度が全然ちがう。
どちらが仕事人として、正しい態度なのだろう?ミノベの目線で書かれているので、読者はミノベに感情移入し、ミノベの気持ちを理解しない他の男性社員や、先輩に対してちょっと腹が立ってくる。
終盤、アレグリアの不調に耐えきれなくなったミノベと先輩が行動を起こす。ミノベは本当にアレグリアをぶっ壊すつもりだったが、より究極的に、破壊的な行動をしたのは意外にもそれまでクールだった先輩のほうだった。アレグリアのせいで、これまでちゃんとこなしていたことができず、しかもそれを男性社員にネチネチと叱責されたためだった。
私は仕事で、あまり頑張りすぎないことを心がけている。いや、いつも頑張ってはいるが、「持続可能な程度に頑張る」ことを心がけている。仕事の手加減、どれくらい頑張るか、というのは、一つの仕事を長く続けていくにはとても大切なことなのだ。
ミノベとアレグリアとの攻防を描いた物語、ただそれだけでも十分面白く読み応えがあったが、意外な展開で「仕事に対する姿勢」というものを考えさせられる内容だった。
併せて収録されている「地下鉄の叙事詩」は、都心の満員電車内での複数人の心模様を描いている。
私は地方に住んでいて車で通勤しているが、満員電車というものがいかに恐ろしい空間なのか、ドキドキしながら読んだ。3人目までは、満員電車で心の中で悪態をついている人々それぞれの物語だが、4人目からそれがつながり、最後には一番若い女の子に感情移入して泣きそうになる。まじで痴漢死ねばいいと思う。
2020年、コロナで時差出勤や在宅勤務が取り入れられるようになり、人との距離を取ることが提唱されるようになった。今、通勤通学ラッシュというものはどうなっているのだろう?こんな殺人的な、非人道的なものは、もう二度となくなっていればいいな、と自分には関係ないのに心から思った。

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2021年02月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

表題作は1ページ目から面白かった。アレグリアを罵倒する言葉のバリエーションの豊かさに笑ってしまった。
まともにコピーもできないなんて、文句の一つも言いたくなるのは分かる。分かるけど、あまりに細かいのでそうイライラせかせかするなよと言いたくなってくる。そこへ来て先輩の冷ややかな一言で凍えそうになった!
たった二年とはいえ一緒に仕事をしてきた二人の仲が、こんな機械ひとつで亀裂が入るのは悲しかった。仲直りできて良かったけれどもう一緒に仕事をすることはないのが切ない。
ただの複合機の話なのになんでこんなに面白いんだろうと不思議だった。

二作目は電車の痴漢の話で気持ちが沈んだ。
人は見たいものしか見ないのかもしれない。男の目に映っているものと、女の目に映っているものが違うかもしれないと思った。
特に大学生のイチカワ視点だと、隣の人が痴漢に遭っていても気づきもしないのが現実、と思うと悲しくなる。
同じ場にいた四人それぞれの視点に切り替わっていくのが良かった。

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2023年08月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトルの意味をはかりかねていたが、それは読み始めてすぐに氷解。複合コピー機に付けられた愛称だった。その一方、主人公で物語の語り手でもあるミノベを、暫くの間は男性社員だとばかり思って読み進めていた。なにしろ、ミノベの最初のセリフが「おまえなあ、いいかげんにしろよ!」だったものだから。それとも、女性社員も独白する時にはこんな口調が普通なのだろうか。さて、小説はアレグリアを基軸にしながら、ミノベや先輩のトチノさん、その他の登場人物たちを翻弄してゆく。たかが1台の機械でも、その後の人生だって左右しかねないのだ。

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2014年03月05日

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