あらすじ
人が愛するのは肉体なのか。それとも、魂、心、精神なのか。
魂のみが死滅してしまう奇病、「ルドング病」が流行する2110年の日本。その唯一の治療法は、過去に死んだ人間の精神を代わりに肉体に入れるというものだった。2014年、28歳の若さでこの世を去った井上綾乃(いのうえあやの)は、30歳の「小笠原霧恵」という女性の肉体に精神を宿し、2110年の日本で再び目覚める。しかし綾乃は、既に自分が愛した夫と娘がいない世界のなかで、見ず知らずの「霧恵」の旦那である秀(しゅう)と、娘の梢(こずえ)と共に家族として生きていくことを迫られる・・・・・・。
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Posted by ブクログ
100年くらい未来の日本。魂が死滅する「ルドング病」から、その人を救うためにできることは、過去に死んでしまった人の魂をその人の体に入れてしまうことだった。
2017年に東京で起きた震災で、2か月の娘と夫を残して死んでしまった彩乃は、ひ孫である霧惠の体に魂が移されてしまう。目の前には霧惠の夫である秀の姿。
なかなかにエグい設定のSF小説だなぁと思います。
愛する人の体は残っているのに、その中にいるのは他の人の魂という秀の立場と、望んでいる訳でもなく他人の体に入ってしまっている彩乃の立場が、それぞれに痛々しく、人を愛することということを読者に問いかけている気がします。