【感想・ネタバレ】2020年からの大学入試 「これからの学力」は親にしか伸ばせないのレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2017年08月22日

今日は「「これからの学力」は親にしか伸ばせない」清水克彦著・副題として「家庭でできるアクティブ・ラーニング」とあります。

「アクティブラーニングってナニ?」って言う人多いでしょう。日本では。アクティブラーニングというのはアクティブ(能動的・主体的)に勉強するという意味です。

つまり、前文科相・下...続きを読む村博文さんが提唱した、日本の受験制度の変更に端を発する、小学校から高校までの大学入試に向けての学習方法の変節を意味します。

では、早速例の如く本書の第1章とほんの少しの後の方をコピペブログります。
まずアクティブラーニングの具体例としてマークシート方式のセンター試験が無くなり、知識の量や解答のテクニックが重視される一点刻みの入試から多面的な評価の入試方法へ変換するということです。

例えば、現行では「日本国憲法が施行されたのはいつですか」という問いに「1947年」と答えるようなパターンから、これから「日本国憲法が制定されて何が変わりましたか」と答えざるをえないようになったとのことです。

これだけは大きな変化とは言えません。問題は国公立大学の二次試験や大学入試のような個別入試です。個別入試では、受験生の部活動や就業体験といった活動実績に加え、小論文や面接、ディスカッションやプレゼンテーションが急増すると考えられる、とのことです。

特に個別試験では、一つしかない正解を導くような形ではなく、複数の教科学習で得た知識をいかしながら、自分なりの『解』を導き出すような形に変わっていくそう。

例えば次のような問題です。
「シカゴにピアノの調律師は何人いるでしょう?」といったものです。
何もシカゴ出なくとも大阪や、東京であってもいいそうで、何のデータもヒントも与えられてないままで、どのように解を導いていくかを見るというのです。

解の導き方はこうです。
シカゴの人口は300万人。一世帯平均3人が住んでいるとすれば、100万世帯があるということが推測できます。

次にアメリカでピアノが買える所得層を推定します。これは大体所得上位10%だな、と。それなら、10万世帯がピアノを持っている。

次に一人のピアノの調律師が一日当たりピアノを調律できるのは3度ほど。休日を除いて調律師の年間就業日数が250日。すなわち、250×3=750回年間調律できる。

あとは、10万世帯を750で割れば、130人程度がピアノの調律師として食っていけると計算が立ちます。

他の例を挙げると、「東京にマンホールはいくつかあるか」とか「鳥取砂丘に砂粒はいくらあるか」といった問題が想定されるとのことです。

こうした「問い」に共通することは、正解が一つではないことです。その一方で受験者の論理的思考力、「考えるスキル」はしっかり問われるとのことです。

このような大学入試制度に変えるのを著者が、下村博文・前文科相に尋ねたところ、下村さんは「これが”世界のスタンダードだから”」という返答が返ってきたそうです。

例えば、アメリカのハーバード大学などの難関私立大学はこのような入学試験をおこなっているとのことです。

アメリカ人の受験生は、高校の様々な実績に加え、、SATなどの全米共通テストの点数、ならびに推薦状と小論文の提出が求められています。

難関大学ですから、2400点満点のSATでは2000点以上の取得が求められていますが、半分程度の得点で入学するケースもあるそうです(例えばフェイスブックのサンドバーグCOOもペーパーテストの得点は高くなかったそう)。

これはまさに、ハーバード大学などのトップ校が、高校時代の活動や小論文等、別の物差しで「総合的な人間力」を審査しているからに他なりません。

つまり、高校時代の活動で目を見張るものがあったり、小論文で採点者の心を揺さぶる文章が書けたら合格する可能性があるということです。

ハーバード大学の場合、AOの専門家たちが選考に当たり、自分たちが入学を決めた学生に責任を持つというシステムが出来上がっているそうです。

つまり2020年以降の大学入試は「基礎的・基本的な知識や技能」に加えて「思考力・判断力・表現力」それに「主体性・多様性・協働性」という、いわゆる「学力の三要素」を図る試験になります。

それに合わせて、中学・高校入試で問われていく内容も上記で求められるように変わっていくと思われます。

ここで、お父さん・お母さんが勘違いしてはいけないことは、「知識や技能」が含まれている以上、これまで同様、読み書き・計算能力も問われるということです。

つまり、テストの点数や偏差値を求めらる一方、「目に見えない力」を身に付けさせておく必要があるということです。

皆さんはAO入試と聞いて、日本の大学でまず耳にするのが慶應義塾大学だと思います。
それは日本で始めて、同大学湘南藤沢キャンパス(通称「SFC」)でAO入試を取り入れたからです。

同校の募集要項を見てみると「『SFCであなたは何を学びたいか』が出発点」
「より高いレベルで自己実現を図ろうとする情熱と明確な志望を持った人達の積極的な出願を期待する」等、SFCでは、受験者の知識の量や技能の巧拙でだけではなく、まさに「総合的な人間力」の高さを見極めようとしていることが分かります

もう一方の私学の雄、早稲田大学ではどうでしょうか?
鎌田学長は2015年12月「一般入試とAO・推薦入試の入学比率を逆転させる」と仰っているそうです。

現在、その割合は6対4。
その手始めが同大学人間科学部で行われた、公募制学校推薦入試制度(FACT選抜)です。
FACTとはFundamental Academic Competency Testすなわち基礎的な学力を計る試験です。

早稲田大学では現代の諸問題を解決するために、必要な5つの力を、出願書類、論述試験、面接試験を通じて総合的に評価するというものです。

同大学では2016年度入試から、政治経済学部で実施してきたAO入試を「グローバル入試」と改称したり、2017年度入試から文学部と文化構想学部で、英語の4技能(読む、聞く、書く、話す)を試す入試を導入したり、基礎理工学部で地域限定入試を始めるといった新たな入試制度を打ち出しています。

これらは
「一般入試では計ることができない資質や個性、経験や熱意などを総合的に評価する」
「早稲田大学で学ぶ志のある高校生を全国から多数集め、多様性を取り戻したい」
という大学側の意欲の表れです。

著者が二大学の入試制度に言及したのは、「私学のツートップ」と言われる早稲田大学と慶応義塾大学で入試制度が変われば、その影響が他の私立大学はもとより国公立大学にも及ぶと考えたからだそうです。

以上このブログでは本書のほんのさわりを紹介してきたが、第一章の本の数分の一である。2020年以降大学受験を目指す方やその親御さん、教育関係者はぜひチェックしてもらいたい一冊である。

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