あらすじ
英国から中国への返還が実現して20年。東洋の真珠とも呼ばれる世界的なフリーポートは、返還後も中国本土へのゲートウェイとして優位性を誇示してきた。
しかし、経済は中国本土に圧倒され、返還時に約束された「一国二制度」は「一国一制度」へと収斂しつつある。習近平政権は香港の自由を実力で奪い、各方面で対立が表面化。一部の若者からは「独立」の声もあがる。
上海、北京、広州など中国本土が急成長するなか、香港の相対的な地位低下が続いている。中国の国内総生産に占める香港の割合は3パーセントを割った。製造業は、コスト競争力はもとより、研究開発でも本土の後塵を拝す。国際金融センターとしての相対的地位は健在だが、行政の介入がマイナスに作用。傘下の本社登記地をケイマン諸島に移した李嘉誠など、大富豪たちの動静にもこれまでとは違う変化の兆しが見られる。英国流の教育制度は排除され、英語を話せる香港人も減少の一途をたどるなど、香港の優位性を支える基盤にも軋みが見られる。数多くの興味深いエピソード、背後にある文化や制度の変容から、混沌とも雑然とも形容される香港の実像を浮き彫りにする。
香港返還から今日に至る政治、経済、社会の深層に迫り、あらためて返還の意義を考えるとともに、今後の中国に対する視座を与える一冊。
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Posted by ブクログ
香港返還から20年。その歴史とどう変わっていったか、生活、政治、インフラ面から読み解いていく。中国との「1国2制度」はもはや形骸化して、「香港」という国自体を根強く存在感を見せつける時が来ている。
Posted by ブクログ
中韓露あたりの本はしばしば目にするけど、香港は読んだことはないという状態から読む。分かりやすくまとまっているし、香港というテーマも面白い。中国の強い影響下に置かれたらこうなるのかもしれない。
研究者の本の割には価値判断に関わる部分も踏み込んでいる印象だがバランスは良く、理解しやすい。
Posted by ブクログ
[憂鬱な蜃気楼]1997年に中国に返還され,早くも20年が経過した香港。「東洋の真珠」とも評された都市がくぐり抜けてきたその年月と,それに伴う変化を丹念に追った作品です。著者は,在香港日本国総領事館での勤務経験を有する遊川和郎。
政治や経済に関するケーススタディとしての香港の魅力が存分に堪能できる一冊。中央政府が加速度的に影響力を強めていく中で,それが逆説的かつ必然的に引き起こしてしまう中央・香港間の緊張の様子がよくわかります。20年の節目を迎えて出版された非常にタイムリーな作品でした。
〜香港は国際公共財として存在することこそが重要なのであり,中国のための私有物にしてしまってはその価値は激減する。それを中国が再認識すべきである。〜
どこかのタイミングで行ってみたいんですが☆5つ