【感想・ネタバレ】さみしさのレシピのレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

家族に恵まれず、満たされない欠落を抱えた二人が互いの孤独に寄り添ってくれた故人を媒介に運命の巡り合わせのように出会い、ゆっくりと穏やかに心を重ね合わせていく物語。
特に何か劇的な展開があるわけでもないのですが、しっとりと霧雨が雨が降り続けるようなけぶった世界観の中で二人のさみしさがゆっくりゆっくり重なり合い、やがてあたたたかな想いとなって形を変えていくのがとても心地よかったです。
いまにしてみると、どしゃぶりの原型的な世界観のようにも思えます。

デリケートで繊細で他人に心を閉ざし、虚勢を張っていた慈雨が剥き出しの孤独をそっと包んで寄り添ってくれた亡き妻への想いを綴った裸の想いが描かれたエッセイの文章の美しさと深い愛情に、慈雨という人の心の深く柔らかな部分にそっと触れたような優しさとぬくもりを感じられて涙が止まらなかった。
(発音出来ないヴの点々、と孤独感を吐露するシーンの、知明にだから打ち明けたのであろう深層心理をあまりにも慈雨らしい言葉と態度で示すシーンがとても好きです)

異性愛者である知明から寄せられた想いを慈雨が気の迷いだと跳ね除けるのは当然で、一度はあしらったあと、実果子を裏切ることは出来ないと本音を曝け出す慈雨の姿が痛ましくも切なくて、胸に迫りました。
その後の知明の決意の篭った告白と共に、ずっと孤独だった二人が共に生きることを選ぶ姿はただ眩しくて愛おしくてたまらなかった。
皐月、実果子、咲彦、慈雨の四人の関係と数奇な運命にはえーっとなりましたが(青を抱くの宗清と泉のお母さんたち……と)、女性の身勝手さやずるさ、残酷さを描くのも一穂さんらしいなぁと。綺麗事ではない現実の生き辛さ、それでもお互いに心を寄せ合おうとする強さ、優しさはとても胸に突き刺さりました。

愛おしくて優しい二人の重ね合った想いに包み込まれるようでした。

0
2017年06月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この本を読んで一穂ミチさんが好きになりました。

こういう行き当たりばったりで、だけどバランスのとれた同居生活ってすごくいいと思う。BL小説でなかなかお気に入りってみつからないんだけど、この本は本当に会えてよかったなと思うくらい好き。知明をちあきって呼ぶところも好き。

このくらい複雑で、なにかあるぞって感じなのに、さらさら進んでいく作品は珍しい。
あと言葉についてもさりげなく深いことが書いてあって、それをうまく例えにしてしまっているところがすごいなぁと心から。

0
2013年03月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ちょっと腹黒くてさみしがりやの年上受をしっかりと支える、地に足の着いた年下攻です。まっすぐで、時たまガキっぽくて、きちんと嫉妬もして、でもちゃんと大人。さみしがりやでダメな人間のそばにはこういうちゃんとした人がいなきゃダメだよね~・・・としみじみ思いました。
慈雨さんのちょっと性格に難ありだけど、さみしがりやで放っておけないところ、ゲイなのに結婚して妻とフィジカル抜きの愛情で深くつながっているところなんかを読んで、『OFF YOU GO』の密を思い出した。こっちのお話の方が先なのにね。これが書けたから、『OFF YOU GO』みたいな話が書けたんだろうなとちょっと思った。わたしが今まで読んだ一穂さん作品の中で、この作品は大好きな方には入らないんだけど、会話の空気感とか、独特の心理描写や情景描写はやっぱり好きだな~と思う。

0
2012年06月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

フードスタイリストの卵・日高知明×翻訳家雨宮慈雨

叔母実華子の死を慈雨からの電話で知った知明は、居心地の悪い実家を出て、慈雨のところで居候をはじめる。

知明の家も慈雨の家も、理解のない情の薄い家族であるような印象を持ってしまうが、多分ごく一般的な人達が営む家庭なんだと思う。我が子のすべてを許容するってよく言われるけれど、世間の目を良く知る大人がそれらから、当人、自分、周囲の人を守りたいのは当たり前。
知明が母親からの愛情を感じられなかったと思うなら、自分の欲しがったものと与えられたものが違ったんだろうな、それはそれで母子の悲劇ではあるんだけど。そこがかみ合ってる母子ばかりじゃ無いと思う。
こういった部分を「さみしさ」と形容するなら、かなりの人が心のどこかに持つ負の部分をそっと取り出してドラマにした感じ。「さみしさ」がうめられる安心を与えられたラストにホッとする。

「かわいい甥っ子」として「ちあき」のはなしを実華子から聞いていただろう慈雨が、知明を嫌うはずがない。
年齢がいってる分、いろいろあった分、慈雨の「さみしさ」の大きさが素直でない言動になっているのだろうけれど、その「さみしさ」を感じ取れる知明も「さみしさ」を知っているってこと。そういうのが文脈から感じれるのが好き。
家の周辺とかフランスとかの情景が好き。
本筋に邪魔にならないのに、きちんと仕事について描かれてるこのバランスが好き。

0
2012年01月09日

「BL小説」ランキング