あらすじ
東雲剣一郎は目覚めると病院のベッドにいた。事故に遭い頭を強打し記憶を失っていたのだ。家の前に倒れていた剣一郎を助けてくれたという優しげな青年・三島良は剣一郎を引き取り、回復するまで面倒をみると申し出る。初めて会ったはずの良に、懐かしさと異常なほどの執着を覚える剣一郎。記憶のない剣一郎は他に頼るあてもなく、良と共に暮らしはじめるが、何をしてもいつまでたってもその記憶は戻らない。良との生活は穏やかで心地いい。けれど一方で、不自然なくらいに彼に惹かれてしまう自分に、剣一郎は困惑し……。(「あの日の君を教えて1」はウェブ・マガジン小説花丸 Vol.35に収録されています。重複購入にご注意ください)
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丁寧な描写が◎
攻め視点で描かれいるのが個人的によかった。
突然、記憶喪失になり気づけば病院のベッド。手には何か特別なものが握られていたと思うのに、それが何だか思い出せない。目の前には、病院まで自分を運んでくれたという医師と、なぜか記憶が戻るまで世話をすると言いだす男(受)がいる。
良との穏やかな生活、でも色々な場面で既視感を覚えたり、良への強い執着心に戸惑い始める。
なかなか記憶を取り戻せない歯がゆさや焦り、苛立ち、良への芽生えた恩人以上の気持ち。
記憶を取り戻すまでがなんと終盤まで続きますが、この思い出すまでの過程がすごくいい。
案外早く思い出しちゃってハッピーエンドって展開が多いなか、攻めの剣一郎の葛藤を切ないほど丁寧に描いてくれています。
完全に記憶が蘇る前の敏感な時期に、迷いながらも求める感情のまま肌を合わせる展開も良し。
ランドセルを背負った良、ひまわり畑の良、少しずつ思い出してきた部分もあるのに肝心なところがどうしても思い出せなくて苦しむ攻と、思い出して欲しいけど思い出して欲しくない、本当の気持ちを隠したままの受。
終盤からラストまでが本当に切なくて悶える。
最後呼称が「剣一郎さん」から「ケンちゃん」に戻った時思わず涙が…。